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5章 9 ビルの告白 1

「そ、そんな……!」


まさかとは思っていたが、本当にビリーだったなんて。


「今迄、ずっと苦しかった。俺が居なくなったことで、こんなにリアを苦しめることになるなんて思わなかったんだ。本当に悪かったと思っている。俺がビリーだって何度リアに告げたかったことか……。だけど俺は本来ここにいてはいけない存在だから。もし自分から告げれば、この世界から消されてしまう。法則を破ることが出来なかったんだ。だからどうしてもリアに気付いてもらう必要があったんだよ」


そしてビリーは私の両手を握りしめてきた。

だけど、私にはビリーが何を言っているのか少しも理解することが出来なかった。

何が何だか分からず、頭は混乱している。


「ビル……」


するとビルは首を振る。


「リア……俺はビリーだ。その名前で呼んでくれないか?」


「ビ、ビリー……」


震える声で名を呼ぶと、ビリーはまるで泣き笑いのような表情を浮かべる。

その顔は、やはり少年時代のビリーの面影が色濃く残っていた。


「リア、本当にありがとう。俺に気付いてくれて……この日が来るのをどんなに待ちわびていたか計り知れないよ」


じっと見つめてくるビリー。

彼が私の大切な弟、ビリーが成長した姿だったなんて……。未だにその事実が私には信じられなかった。


「ビル……いえ、ビリー。私には今の状況が、全く分からないの……どういうことなのか、説明してくれる……?」


「勿論だよ。リアには当然知る権利があるからね。でもその前に一つだけ、聞かせて欲しい。リアは何処まで覚えているんだ?」


「え? 何処までって……?」


ビリーの言葉にドキリとする。


「覚えているんだろう? 前回の記憶を。リアに気付いて貰えるように、今回はあえて記憶を引き継げるように細工したから」


「な、何を言ってるの……?」


ビリーが何を言っているのか、さっぱり分からないのに頭の何処かでは彼の言葉を理解している自分がいる。


「なら、これに見覚えはあるか?」


ビルは懐に手を入れると何か取り出し、テーブルの上に置いた。


「あ……!」


テーブルに置かれたのは、あの時の懐中時計だった。


「! こ、これは……あのときの懐中時計……!」


私は懐中時計とビリーの顔を交互に見つめる。

あ……そうだ。この懐中時計を家に置いて帰ったのは……彼、ビリーだ。


「ど、どういう……ことなの……?」


多分私の顔は真っ青になっていただろう。ビリーが心配そうに声をかけてきた。


「大丈夫か? リア。何なら話をするのは後に……」


「いいえ! お願い……今、ここで何もかも話して」


「……分かったよ、リア。驚くかもしれないが、聞いてくれ。俺達は……もう何度も2人で一緒に時を巻き戻っているんだよ。少しずつ違う状況でね。俺は魔塔でその力を身につけた。そしてこの世界が俺の始まりだったんだよ。もっとも、リアにとっては、恐らく何度目かの世界なのだろうけどね」


「え……?」


「全ては…‥俺があの森で、魔塔に引き寄せられたのが始まりだった……」


そしてビリーは語り始めた――




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