5章 5 オーロラの下で 1
ビルとカールさんが掘った温泉は近隣住民たちに評判だった。
住民たちは雪の中を犬ぞりで訪ねて来たり、中には片道30分くらいかけて訪れてくる人々もいた。
そこで私とビルは村の人達が訪ねてきやすいように、雪かきをして道を作った。
家の中は常に温泉待ちの人々で溢れるようになった。そこで私とビルは客人たちをもてなすためにお茶を出したり、ちょっとした軽食を出してあげるようにした。
すると村人たちは私とビルに感謝の意を込めて野菜や卵、肉チーズといった冬を越すのに貴重な食材を持ってきてくれるようになった。
いつしか、私の家は湯治場のような役割を果たすようになっていた。
近隣住民との繋がりが深まり、時が巻き戻る前とは違って孤独ではなくなっていた。
それでもビリーがいなくなってしまった心の隙間は今も埋めることが出来ずにいた——
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時は流れ、3月のある夜のこと——
この日は珍しく雪が降らない夜だった。
最後の温泉客がいなくなり、台所で部屋の片づけをしているとビルに呼ばれた。
「リア、今夜は数カ月ぶりに雪が降らない夜だ。もしかしたらオーロラが見えるかもしれない。外に出てみないか?」
「え……? オーロラが?」
「あぁ、条件的にも整っている。一緒に見に行こう」
「ええ、そうね」
私はビルの提案に頷いた——
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帽子にマフラー。手袋に防寒マントを羽織った私とビルは家の外に出てみた。
真夜中の外は凍てつくような寒さだったけれども、今夜は雪が降っていない為に輝くような美しい星々が夜空にきらめいている。
「ここは林に囲まれているから、見通しの良い場所まで行ってみよう」
「分かったわ」
ビルに促され、私たちは雪を踏み固めた道を進んだ。
5分程歩いて林を抜けると、空が突然緑色に光り輝き始めた。
「あ……」
「オーロラだ」
私とビルは、手近な岩に座ると美しいオーロラショーを見つめていた。
夜空に降り注ぐ光のカーテンはとても美しく、私は思わず呟いていた。
「懐かしい。こんな風にまたオーロラを見ることが出来るなんて……」
すると隣にいるビルが尋ねてきた。
「数年ぶりかい? それとも、もっと昔に遡る?」
「え……?」
思わず、ビルの顔を見つめ……。
「クシャンッ!」
寒さの為、くしゃみが出てしまった。
「大丈夫か? 寒いんじゃないのか? 今、温めてやるよ」
ビルは空中に両腕を上げて一度手を組み、その手を徐々に放していく。
すると驚いたことに、空中に炎が揺らめいて浮かんでいた。
「え……? 炎……?」
「この炎があれば、多少寒さは和らげることが出来るんじゃないか? 俺の得意な魔法は炎の魔法だから」
「炎の魔法……」
そう言えばビリーも手をかざしただけで、暖炉の火を点けることが出来たっけ……。
「俺が魔法を使えるのを見ても、リアは驚かないんだな」
ビルが尋ねてきた。
「それは……ビルは以前から言ってたでしょう? 魔法が使えるって。だから……」
だけど、目の前で魔法を使えるのを見るのは今が初めてだ。
「でも良かった。リアとこうして一緒にオーロラを見ることが出来て。ずっとこの日を夢見ていたから……」
私は黙ってビルの話を一語一句聞き逃さないように聞いていた。
何故か分からないけど、そうしなければならないような気がしたから——




