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4章 5 消えたビリーを捜しに

「わ、分かった。そこまで言うなら……連れて行くよ。皆もいいよな?」


カールさんが村人たちに尋ねると、全員が頷いた。


「ありがとうございます。すぐに出掛ける準備をしてくるので外でお待ちいただけますか?」


「ああ、待ってるよ」


村人たちは頷いた。森へ入る準備をしに部屋へ戻るとビルが追いかけてきた。


「リア、待ってくれ。本当にビリーを捜しに森へ行くつもりなのか?」


「当然でしょう? ビリーは私の大切な弟なの。森で行方不明になったなら捜しに行くのは当然よ」


気付けば私もビリーも対等な口の利き方をしていた。


「だけど……もうすぐ暗くなる。森の中は暗闇になるんだ。森に入ると枝や常緑樹の葉で月明かりも届かない。足元がおぼつかなくなる。そんな闇に女性のリアが行くなんて危険だよ」


私は無言で上着を羽織るとマフラーを巻き、帽子を被った。


「リア、 聞いているのか?」


「聞こえているわよ!」


気付けば大きな声を上げていた。


「リア……」


私の声に驚いたのか、ビルは目を見開いている。


「分かっているわ。森の中が夜になるとどれ程暗くなるか位。だからこそ、捜しに行くのよ! あの子はまだ、たった10歳なのよ!? どこか怪我をして歩けなくなってしまっているかもしれないじゃない! 助けを呼んで泣いているかもしれないじゃない! 私が捜しに行かないでどうするの!」


気付けば涙声になっていた。


「ごめんリア。ただ、どうしても俺は森に行って欲しくなくて……リアのことが心配だったから……」


「私の方こそごめんなさい。つ、つい大きな声を上げてしまって。貴方が心配してくれるのは嬉しいけれど、私どうしもビリーを捜しに行きたいのよ」


するとビルが悲し気に言った。


「分かったよ。もう止めない。その代わり俺もついて行く。一緒に行かせてくれ」


「ありがとう、ビル」


最後にカンテラを持つと、ビルと一緒にカールさん達の元へ戻った。


「それじゃ、森へ出発するけど大丈夫かい?」


カールさんが問いかけてきた。


「はい、大丈夫です。行きます!」


もうすでに辺りは薄暗くなっていた。恐らく森へ着く頃には完全に夜になってしまうだろう。


「ビリー……お願い、どうか無事でいて……」


森に向かって歩きながら呟くと、隣を歩くビルに聞こえたのだろう。彼が無言で私の肩に軽く触れてきた。


「ビル……」


彼の顔を見上げるも、既に周囲は暗くなっていた為に良く表情が見えなかった。

けれど、どこか思いつめているように感じたのは、私の気のせいだろうか…?



****


 ビリーが消えた森に着いた頃には、すっかり夜になっていた。

夜の森はとても冷える。見上げる星空は凍り付いた雪の粒に感じられるほど寒い。


「よし、皆。もう辺りは真っ暗だ。なるべくはぐれない様に探そう」


カールさんの言葉に全員が頷く。

男性達は全員、松明に火を灯して森の中へ入っていく。


「リア、一緒に行こう」


ビルが手を差し出してきた。


「……ええ」


その手を繋ぐと、力強く握りしめられる。


私はカンテラを掲げると、ビルと一緒に森の中へ足を踏み入れた――

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