4章 4 行方不明
「はい、今開けます」
ビルが扉を開けると男性達の顔に怪訝な表情が浮かび、口々にビルに尋ねてきた。
「え? あなたは誰です?」
「見たこと無い顔だな」
「オフィーリアさんはどうしたんだ?」
やっぱり、この村の人々は誰もビルのことを知らなかったのだ。
「俺はリアの幼馴染のビルと言います。彼女は今、勝手仕事をしていて手が離せません。代わりに俺が話を聞きましょう」
ビルの言葉に男性達は互いに顔を見合わせる。
「どうする?」
「だけど、手が離せないんじゃ……」
「それに直接話すよりも彼に言った方が良いかもな……」
男性達の話に何やら胸騒ぎを感じ始めていた。そう言えば、ビリーはどうしたのだろう……?
するとカールさんが言った。
「実は……一緒に森へ入ったビリーが狩の最中に突然居なくなってしまったんだよ。それで今も森に残った仲間達があの子を捜しているんだが……オフィーリアさんに伝えておかなければと思って……」
え!? ビリーが……居なくなった!?
その話を聞いた私は居ても立っても居られなくなった。
「ビリーが居なくなったって、本当ですか!?」
階段の奥から飛び出すと、ビルたちの元へ駆け寄った。
「オフィーリアさん!? 話を聞いていたのかい!?」
「リアさん! 何故出てきたんだ!?」
ビルの言葉を聞き流し、カールさんに詰め寄った。
「カールさん! 一体どういうことなんですか!? 教えてください!」
「……」
しかし、カールさんは中々話をしようとしない。
「お願いです! カールさん!」
するとカールさんは重々しく口を開いた。
「俺たちはビリーを連れて森の中へ入って早速狩を始めたんだ。順調に獲物を仕留めていく中、あの子だけはまだ獲物を仕留められなくて、かなり焦っていたんだ。俺たちは獲物は分けてあげるから大丈夫だと話したんだが納得しなくて……そのときだよ。森の奥を見つめていたビリーが叫んだんだ。『ウサギを見つけた。あれなら仕留められそうだ』と言って、駆けだして行ったんだ」
すると別の男性が言った。
「だけど、あの子はまだ子供だ。1人にするわけにはいかないから、慌てて俺とカールで追いかけたんだ。けれど……、既にビリーの姿は何処にも無かったんだ……」
「そ、そん……な……」
あまりにも衝撃な話に、身体がグラリと傾く。
「リアさんっ!」
すぐ傍にいたビルが支えてくれた。
「そ、それでビリーはまだ見つからないのですか……?」
尋ねる声が震えてしまう。
「そうなんだ……それで……」
カールさんの話も終わらないうちに私は叫んだ。
「お願いです! ビリーが居なくなった森へ案内してください!」
「何だって!? オフィーリアさんが!?」
「もうすぐ日が暮れる。仲間達に任せよう」
「女性が森へ入るのは無謀だ」
「そうだよ、リアさん。この人たちの言う通りだ、俺も捜しに行くからリアさんはこの家にいた方がいい」
ビルが私に言う。
だけど……ビリーは私の大切な家族。
今頃怯えながら森の中を彷徨っているかもしれないのに? ここで1人待っているなんて真似、絶対私には出来ない。
「皆さんが連れて行ってくれないと言うのなら、私1人でだってビリーを捜しに行きます!」
私は大きな声で叫んだ――




