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時が巻き戻った悪役令嬢は、追放先で今度こそ幸せに暮らしたい  作者: 結城芙由奈@コミカライズ連載中


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3章10 不思議な青年

「こんにちは」


赤毛の青年に挨拶を返すと、彼は近付いてきた。


「女性が1人で畑仕事をするのは大変でしょう? 手伝ってあげますよ」


青年はニコリと笑みを浮かべる。

この時期、『ルーズ』の人々は冬支度でとても忙しい。食材の備蓄や大量の薪割り……誰かを手伝ってあげる余裕などないはずだ。


「気にかけて下さり、ありがとうございます。でも大丈夫ですよ。私には弟がいるので後で一緒に畑仕事をすることになっているので」


やんわり断りを入れる。


「そうですか……弟さん……。彼は今どこにいるのですか?」


「え? 2階の家の掃除をしていますけど……?」


何故そんなことを聞いてくるのだろう?

すると青年は満足そうに頷いた。


「なら大丈夫でしょう。いいから手伝わせて下さいよ」


青年は地面に落ちていた鍬を拾い上げてしまった。


「あ、あの!」


「僕が畑を耕している間に、種を運んできてください」


「え!? だ、だっていくら何でも耕すだけで種まきしている時間なんかありませんよ? もうすぐ夕方になるし」


一体彼は何を言ってるのだろう?


「大丈夫、俺に任せて下さいよ。か弱い女性を助けるのは男の仕事ですから」


「仕事って……」


口にしかけて、ふと思った。

そうだ。この村でずっと暮らすと決めたのだから、あまり遠慮するのも良くないかもしれない。


「すみません。ではお願い出来ますか?」


「ええ。任せてください」


笑顔で返事をする青年に会釈すると、種を取りに倉庫へ向かった――



「え~と、ニンジンにカブ、ソラマメとインゲン……こんなものかしら?」


さすがに日が落ちるまでに畑が耕せるとは思えないが、撒こうと思っていた種を麻袋に入れて畑へ戻り……思わず目を見張ってしまった。



「え……? こ、これは……?」


驚いたことに、青年の元へ戻ると綺麗に畑が耕されていたのだ。

唖然としている私に青年が気付き、声をかけてきた。


「あ、種を持ってきてくれたんですね? では早速まきましょうか? 種を貸して貰えますか?」


「は、はい……。あの……本当にお1人で、耕したんですよね?」


信じられない気持ちのまま、種を渡した。


「ええ、そうですよ」


青年が種を撒き始めたので、慌てて彼を手伝うことにした。


「そう言えば、自己紹介がまだでしたね。私はオフィーリアといいます。昨日、弟と2人で『ルーズ』に引っ越してきました。貴方のお名前も教えていただけますか?」


種を撒きながら、青年に自己紹介した。


「俺の名前ですか?」


すると何故か青年は一瞬考え込む素振りを見せる。


「……ビルですよ。ビルといいます」


「ビルさんですか? 弟と頭文字が一緒なんですね」


ビリーと同じ髪色ということもあり、親しみが湧いてきた。


「弟さんの名前を伺ってもいいですか?」


「弟はビリーっていいます。私にとって、かけがえのない大切な家族なんです」


「家族……それは素敵ですね。そんな風に思ってくれるお姉さんがいて彼は幸せですね」


ビルの口元に嬉しそうな笑みが浮かぶ。


「あ、なんでしたら弟を呼んできましょうか? 挨拶をさせますよ?」


「いや、いいですよ。弟さんは掃除中なんですよね? 中断させたら気の毒だ」


「そうですか……?」


けれど言われてみればそうかもしれない。


「……あの、オフィーリアさん」


「はい、何ですか?」


種まきしながら返事をする。


「リアさんて、呼んでもいいですか?」


「ええ。いいですよ」


「会えて嬉しいです。……ずっと待っていましたから」


ビルが真剣な目で私を見つめてくる。


「え? あ、あの……?」


一体どういう意味なのだろう?

戸惑っていると、突然彼は笑い出した。


「あははは。すみません。この村には新しく引っ越ししてくる者が少ないので、リアさん達が越してきたことが嬉しくて妙な言い方をしてしまいました」


「あ……そういうことだったんですね?」


彼の目が余りに真剣に見えたから、深読みしてしまった。


「さて。種まきも終わった事だし、俺はもう帰りますよ」


「本当にありがとうございます。まさかこんなに早く終わるとは思いませんでした」


ビルさんが帰り支度を始めたので、改めて礼を述べる。


「いいんですよ。これくらい、又いつでも手伝いに来ますから」


笑顔のビルに、どうしても尋ねたくなってしまった。


「あの、ビルさん……本当に、どうやってこの畑を耕したんですか……?」


「……魔法ですよ」


「え!? ま、魔法!?」


余りにも突拍子も無い言葉に一瞬思考が止まってしまった。


「俺、実は魔法使いなんです。このことは誰にも秘密ですよ?」


「あ……そ、そうですか……」


もう、何と返事をすればよいか分からない。


「それじゃ、帰りますね」


帰ろうとするビルの背中に慌てて声をかけた。


「ありがとうございます、ビルさん!」


すると彼は振り向いて手を振ると、夕暮れの中を去って行った――






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