2章7 家族ごっこ
宿屋の食堂で私とビリーは朝食をとっていた。
「ビリー、スコーンとっても美味しいわね」
ジャムを乗せたスコーンを食べながら、正面に座るビリーに話しかけた。
「う、うん。そうだ……ね。お、お姉……ちゃん」
真っ赤になって「お姉ちゃん」と言うビリー。
「あら、あら。ビリー、口元にクリームが付いているわよ。仕方ない子ねぇ」
ペーパーナプキンで口元を拭ってあげた。
「え!? あ、あの!」
増々まっかになるビリーに小声で言った。
「ほらほら。私たちは姉と弟。他のお客さん達が変な風に見ているわよ?」
「あ……う、うん」
コクリと頷くビリーの前に、パンが乗った自分の皿を置いた。
「ほら、これも食べなさい。育ち盛りなんだから沢山食べなくちゃね」
「は、はい……お姉ちゃん」
ビリーは赤くなりながらも、食事を美味しそうに食べていた。
今のビリーは、とても痩せこけている。……可愛そうに、余程栄養状態が悪かったのだろう。
後数年後には、この国を大飢饉が襲う。
私は絶対にビリーを……そして『ルーズ』の村人たちを飢え死になんてさせない。
その為には今から念入りに準備をしておかないと……。
私は心に決めた——
****
食事を終えた私とビリーは買い物に来ていた。
「お……姉ちゃん。町で一体何を買うの?」
隣りを歩くビリーが尋ねてきた。
「ねぇ、ビリー。あなたは文字が読める?」
「え、えぇと……簡単な文字位……なら」
「あら? そうだったの?」
まさか文字が読めるとは意外だった。
「どうして文字が読めるの? もしかして学校にでも通っていた?」
「学校は通っていませんでした。お父さんが教えてくれたんです」
「そう、お父さんが……」
ビリーの父親は教養がある人物だったのだろうか? 学校には平民でもお金持ちの子しか通えなかったのに。
『ルーズ』にだって、文字を読める人達はほとんどいなかった。文字が読めれば国王からの強引な書簡に拇印して搾取されることも無かったのに……。
「オフィーリア様、どうかしましたか?」
ビリーが声をかけてきたので、私は軽く彼の額を指で突いた。
「こら、違うでしょ? オフィーリア様じゃなくて、お姉ちゃん。それに敬語も駄目って言ったでしょう?」
「あ、ごめんなさい! つ、つい……」
申し訳なさそうに俯くビリー。
「『ルーズ』に着く間での間に、その口癖は直しておくのよ? それじゃ行くわよ」
私はビリーの小さな手を繋いだ。
「何処へ行くんですか?」
「本屋さんよ。ちょっと色々調べたり、買いたい本があるから。ついでにビリーでも読めそうな本を何冊か買いましょう」
「え!? ぼ、僕の本を!?」
「そうよ。沢山本を読めるとね、知識も広がっていくわ。ビリーには立派な大人になって欲しいのよ」
「立派な大人‥‥…」
口の中で小さく復唱するビリー。
「それじゃ、本屋さんに向かって出発!」
本屋の場所だって、把握済みだ。
その時――
「そこのお2人。ちょっとお待ちよ」
突然背後で声をかけられた——




