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転輪御伽草子モモタロウ ~ぶっちぎりの最強vs.最強!!! 異世界転生者と輪廻転生者が地球の命運を懸けて正面対決する!!!!!~  作者: ナイカナ・S・ガシャンナ
第9章 温泉まったり小休止

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第52転 秩父温泉

「いやあ、ようやくゆっくり休めたぜ」


 異世界転生軍による結党宣言から七日目の午後。俺達は温泉の露天風呂に浸かってまったりしていた。

 ここは秩父地方にある温泉旅館の一つ、『まつだいら荘』だ。隣県の草津温泉ほど有名ではないが、ここ埼玉県にも温泉はある。秩父地方に湧く温泉はナトリウムと塩化物を含み、アルカリ性が高く、湯のまろやかさが美肌効果と健康効果を期待できるとされている。


「しかし、あの石神社からまさか秩父山地まで走ってきていたとは思わなかったぜ」

「冥府と現世の距離概念は必ずしも一致していないからな」


 冥府――根の国から脱出した洞窟は秩父山地が霊峰――両神山(りょうかみさん)にあった。山は常世の一種である事が多い。山の奥や海の底といった人間が足を踏み入れない地帯は神聖な領域となり、死後の世界へと繋がるのだ。修験者が山に登り、修行するのはその神聖さ故にだ。

 両神山も例に漏れず、その一つだ。一説によれば、両神の山名はあの冥府往還をやってのけた造物主イザナギとその妻神イザナミの二柱に由来するとされている。霊峰と呼ばれるのも納得のルーツだ。


 洞窟の出入り口で出迎えてくれた哪吒と共に、用意されたバスに乗ってこの旅館に来た。ひとまず軽い食事をして、今は温泉で身を清めている。この後、しばらくしたら早めの本格的な夕食だ。実際問題、根の国では飲まず食わずだったから、この応対は非常に助かった。


「一発芸、SADA(サダ)子」

「ぶっふぉっ! 黒髪ロングの伝統芸、よもや竹殿がやってくれるとは!」

「あっはっは! 結構エンタメ精神があるんだねえ、竹クンって」


 男湯にいるのは俺、ネロ、波旬、オルフェウスだ。板壁の向こうは女湯であり、今は竹とカルル、哪吒が入浴している。俺達以外には利用客はいない。貸し切りだ。異世界転生軍に人類滅亡寸前まで追い込まれた今、誰も観光する気になれないせいである。

 こういう温泉イベントでは、一昔前だったら女湯を覗きに行くしょーもない奴が出てくるものなんが。


「……ウチのパーティーにはいないな、そういう事する奴」


 波旬はいい大人で落ち着いているし、ネロはまだ幼いし、オルフェウスは何かそういう欲があるようには見えない。どうにも健全なパーティーだ。

 というか、ネロもオルフェウスも女性に見えるほどの美形なので、こうして裸の付き合いをしているとドギマギしてしまう。


「キャー、何ジッと見ているのサ、エッチー☆」

「やっかましいわ」


 からかわれてイラっとした。何だコイツ。やっぱり全然ドギマギしないわ。


「騒がないで、温泉は目を閉じて、自然と一体化して浸かるのが通だよ」

「あ、すみません……」


 温泉に対してはそういう感じなんだ、オルフェウスって。

 さすがギリシアきって詩人、情緒に敏感だ。


「そう言うな。青い連中にジッとしていろっていうのは酷だろうよ。是非もなし」


 一方の波旬は寛大で、俺達を許してくれた。煩悩を司る神としては若者の騒々しさも寿ぐべき事なのかもしれない。


「それにしても、あの哪吒が女だったとはねえ」


 なんて馬鹿をやっていたら、また竹達の会話が聞こえてきた。


「そうですぞ。哪吒は美少年だという噂が一部ではあったのですが、ちと残念でしたな。いや王子様系お姉様もそれはそれで味があるのでつが」

「ううん、正確にはボクは無性だよ」

「無性?」


 どういう事だ。性別がないという事か?


「最初に人の子として生まれた時は男性で、次に蓮の化身として生まれた時は無性だったんだ。それで、その蓮の化身がデフォルトになっているから、ボクは無性という訳」


 成程、性別がないのはそういう経緯だったか。


 哪吒。

 中国三大宗教の一つ、道教で崇められる道士。『封神演義』や『西遊記』を主として活躍する英傑。インド神話の財宝神の息子(ナラクーバラ)を前身とする。

 将軍の三男として誕生したが、手の付けられない暴れん坊であり、龍王の子を殺害するなど狼藉を働いた為、責を負われて自害した。その後、仙人の力で蓮の花を肉体として再誕した。いわば転生したのだ。

 蓮製の機械人形(アンドロイド)という表現が一番近い存在、それが哪吒だ。そう考えると性別自体がないのも不思議ではない。


「そうだったの。それは複雑というか、かえってシンプルな話ねえ」

「まあ、当世の肉体は女性だから、女性扱いで構わないのだけどね」

「結局、女なのですかな」


 結局、女らしかった。まあ本人がそう言うのであれば、今後もそのように扱うとしよう。


「だからこそボクはこう称されているのさ。『第六天魔王波旬が輪廻転生者最強の男なら、輪廻転生者最強の女は哪吒だ』ってね」

「ほう? であるか」


 壁越しに聞こえた言葉に波旬がニヤリと笑う。最強の男と呼ばれる身として今の発言には負けん気が刺激されたようだ。

 哪吒にしても今のは波旬に聞こえるように言ったのだろう。自分の実力をあえて誇示した訳だ。かなりの自信家で挑発的である。


「長湯してしまったね。そろそろ上がろうか」


 哪吒達は風呂を出るようだ。水を掻き分けて動く音が聞こえる。

 俺達ものぼせる前にそろそろ風呂から出るとしよう。

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