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転輪御伽草子モモタロウ ~ぶっちぎりの最強vs.最強!!! 異世界転生者と輪廻転生者が地球の命運を懸けて正面対決する!!!!!~  作者: ナイカナ・S・ガシャンナ
第8章 冥府魔道

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幕間13 ネロと波旬/闇の正体/後

「神々は冥府に呪いを捨てる事にした。二〇〇〇年ほど前のある取り決めでな、世界各地の冥府は一部を除いて死後の世界ではなくなった。死者の逝く先じゃなくなっちまったんだ。その代わりに冥府に与えられた役割こそが呪いの廃棄処理だ」


 人が死ぬと出る呪いを集めて、保管し、無害化する。そうやって今を生きる人間共を庇護する。それが今の冥府の役割だった。


奈落(タルタロス)北欧の冥府(ヘルヘイム)不帰の国(クル・ヌ・ギ・ア)地下の九層目(ミクトラン)地底宮廷(シバルバー)黄泉(よみ)、根の国、ニライカナイ。今や殆どの冥府がそうだ」

「殆ど……じゃあ、死んだ人の魂はどこに行くのサ?」

「それはお前もよく知っている事だろ、十字を嘲笑う獣がよ。一部を除いてと言ったのは俺やお前の宗教(ところ)での話だ。言わせるな」

「…………」


 だが、七〇〇年ほど経ったある日、神々でさえも思いも寄らぬ事が起きた。人類の呪いで冥府がパンクしそうになったのだ。


「人類の呪いは神々が想像していた以上に莫大でしつこかった。冥府では空間に制限はないが、空間を広げるにはそれなりの時間が掛かる。その拡張を呪いの増大と蔓延は待てなかった」


 冥府がパンクすれば、呪いが地上に溢れ出る。そうなれば元も子もない。地上は祟りに蝕まれ、人類は死滅する。神々にとっても信心が減少する由々しき事態だ。


「となりゃあ、新たな捨て場所が必要になるよな。是非もなし。その場所として選ばれたのが……」

「……異世界カールフターランドって事?」

「であるな」

「はァ~……だから『()()()()()を我らに押し付けるな』か。成程ネ、異世界人がブチギレる訳だわ」


 くしゃりとネロが髪を掻き上げる。要は地球人類の負債を異世界人が代わりに支払っている構図なのだ。そのせいで一体どれだけの被害が異世界に出た事か。そんな事実で復讐心が揺らぐものではないが、それはそれとして異世界人には同情するネロだった。


「とまあ、そういう理屈で冥府の底の(あな)から異世界に呪いを流し込んでいるんだが、異世界転生軍の連中、その(あな)をどうにかして塞ぎやがったな。その上で先の大量殺人を起こしたんだ。結果、大量の呪いが逆流して富士山を通じて地上に噴き出しちまった」

「その地上に溢れ出た呪いをここの冥王が慌てて冥府に回収したっていう事? イザナミだっけ?」

「であるな。恐らく今頃、世界各地でも似たような事が起きているだろうよ。回収まで面倒見ているかどうかは分からねえがな」


 もし呪いを回収しなかったら地上はどうなる事か。想像もできないほどの地獄絵図が顕現するに違いない。だが、たとえそうなろうとそれはネロや波旬には手の届かない出来事だ。各地の冥王が事態に対処してくれる事を祈るしかない。


「この事をタケは知っているのかナ?」

「あの月女神か? 断言はできねえが、知らねえだろうな。お前ら、()()()()()が闇の元素だったなんて話は今まで出なかったんだろう? しかも転生する際には記憶を封印されたそうじゃねえか。となりゃあ、恐らくは神々の尖兵として最低限の情報しか渡されてねえ筈だ。それ以上は必要ねえからな」

「そっか……」


 言葉を切り、少し沈黙するネロ。竹――かぐや姫も神でありながら、また利用される側だった。その疎外に憐みの感情を覚えると同時に、彼女が神々とグルではなかった事に安堵の念も覚える。異世界に不条理を押し付けようなどと考える輩と彼女が同類ではなくてよかった。


「――着いたぜ」


 そんな会話をしていると目的地に辿り着いた。石を積み重ねて出来た(やしろ)だ。鳥居や灯籠、拝殿や本殿が建っている。本殿の奥では呪いの塊――闇の元素が巨大な渦を巻いていた。まるで聳える柱のようだ。


 その鳥居の前に一人の男が立っていた。金髪碧眼の偉丈夫だ。年齢は青年と中年の中間。ロングスカーフを肩に引っ掛け、漆黒のロングコートを纏っている。どう見てもアジア人ではない、日本の冥府にはそぐわない風貌だ。

 男はやってきたネロと波旬を見るとこう言った。


「よく来たな。イザナミには会えないぞ」

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