身体がふわふわすると思ったら…… ②
「マリアージュ様、おめでとうございます。妊娠していますよ」
「にん、しん??」
私は医者から言われた言葉に、思わず固まってしまう。
妊娠……、妊娠ってアレだよね。子供が出来るってこと。え? 私に子供!? 頭の中がいっぱいいっぱいになる。
「そうですよ。それに双子です」
「双子!! え、ということは、あれなの? 私のお腹に可愛い子供が二人!? え、本当!?」
「嘘はいいませんよ。マリアージュ様が不思議な感覚になっていたのも、その妊娠の影響でしょうね」
私はそう言われて、不思議な気持ちになる。
そして自分のお腹をさする。……まだお腹は膨れていない。でも確かに此処にその命がある。それに双子ならこれからお腹がどんどん大きくなるってこと? 自分が妊婦になるなんて思ってもなかったからなんかすごく不思議!
「本当に此処に子供いるの?」
「ええ。そう言ってますよ。流石マリアージュ様とグラン様のお子様というか、魔力も通常よりは持ってそうですね。マリアージュ様ならば問題はないでしょうが、出産というのは命がけのものですから安静にしてくださいね」
「えー」
「えーじゃありません。マリアージュ様は大丈夫でも、お子様が流れてしまうこともありますからね。マリアージュ様は大人しくするのは難しいかもしれませんが、安静にしてください」
……私だけの問題じゃないからなぁ。まだまだ実感はわかないけれど、私の可愛い子供の命がこのお腹に宿っている。
ならば安静にはしなきゃだよね。うずうずするかもだけど、うん、その辺はグランも一緒に大人しくしてもらって巣ごもりすればいいかな?
そんなことを考えながら、私はグランに妊娠したことを報告した。
グランは驚いた顔をした後に、本当に嬉しそうに、とろけるような笑みを溢す。
「グラン、嬉しいの?」
「うん。だって俺のマリアージュの身体に、俺の子供がいるんでしょ? 凄く嬉しい」
そう言ったグランに抱きしめられる。
嬉しそうな顔をしてにこにこしているグランを見ると、私も嬉しくなる。
なんだろう、こうして旦那さんになったグランが私の妊娠を喜んでくれているのに、私も笑ってしまう。
「私も嬉しい。絶対に可愛い子が産まれるわ。ふふ、グランみたいな綺麗な顔の子かしら? でも自分の子供ならそういうの関係なしに可愛いだろうけど!!」
はぁ、楽しみ。
というか、可愛い可愛い子供が産まれるんだよね? しかも私のことをお母さんって呼んでくれるようになるのよね。可愛い子供と一緒にお風呂に入ったり、一緒に眠ったり……。考えただけでも、涎がたれそう。
グランは私が考えていることがなんとなくわかるのか、小さく笑いながら涎をハンカチで拭ってくれる。
「マリアージュ、楽しそうだね」
「うん! だって絶対可愛いじゃん! 産まれる前から確定だよ。それに私誰かと結婚するとか、子供を産むとか考えた事なかった。昔、そういう夢を抱いていたけれど、それが本当に現実になるとは思ってなかった」
……想像しただけでびっくりするぐらい私はワクワクした気持ちになっている。
それにしても結構不思議でふわふわした気持ち。何だろう、妊娠しているからもあるけれどふわふわしている。
私は誰とも結婚もしないし、子供も産まないと思って……それでグランを養子にした。その時はこうやってグランと結婚して子供を産むなんて考えてなかったからなぁ。
「グラン、私、自分の夢がかなうの凄く嬉しいし、楽しみなの! 大人しくしなければならないのはちょっとむずむずするけれど、子供が産まれるって、嬉しい。産まれるのが男の子でも女の子でも、凄い楽しみ。しかも双子って言ってたし。二人も可愛い子供が産まれるなんて本当に嬉しい」
子供ってだけでも最高に可愛いし、グランとの子供だと益々可愛いだろうし。
興奮する私をグランが何だか優しい目で見ていて、少しだけ恥ずかしい気持ちになるけれど嬉しいものは嬉しいもん!!
「マリアージュ、しばらくゆっくりしていようね。子供が無事に産まれるように」
「うん。グランも一緒に大人しくしていよう? 魔物退治とかはワオたちに任せてもいいし。良い特訓になるよね? でも妊婦でもちょっとは運動してもいいよね?」
「そのあたりは医者と相談しながらにしようか。でも俺もマリアージュを独り占めできるなら嬉しいし、望むところだよ」
グランにそう言われて、私は未来のことを考えて嬉しくなって笑った。
初めての妊娠だけど不安も何もないのは、きっとグランと一緒にいるからだ。まぁ、例えば私が一人で子供を育てることになったとしても多分元気だろうけれども、それでも一緒だと余計になんか安心というかさー。なんかいいよね。
でも私、自分が不安になるのあんまり想像出来ないんだよなぁ。妊婦って結構不安定になったりするって聞くけど、人によるのかな?
それから私はふわふわした気持ちになりながらも、なるべく安静にしていた。
時々、暴れては居たけれど。ちゃんと、医者から許可をもらった範囲でだけどね!
私の妊娠を何処からか聞きつけたのか、敵対勢力に襲われたけれど返り討ちにしたり、グランが処理したりしているのだった。
――そしてそんな生活をしたのち、私は可愛い双子の女の子の赤ちゃんを産んだ。
一旦久しぶりの番外編は此処で終わりです。
また機会があったら追加していきます。




