表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
契約結婚のその後で、領地をもらって自由に生きることにしました  作者: 奏多


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

94/118

94 石の触媒

 それから一週間は、毎日薬作りにいそしんだ。

 早めに薬を作り上げて、後を他の調合にあてるつもりで。


 子供達三人の魔術修業は、ちまちまと進んでいるようだ。

 横目で見てる限り、けっこう瞑想の時間が多い。


 二週間目には、採取に行くことが多くなった。

 そして外で、色々な採取物から魔力を取り出す練習をはじめたようだ。

 一度ついて行って様子を見ていると、


 カールさんは満足そうな顔だ。


『よしよし、これで魔石以外からも魔力を取り出せるであろう』


「魔石以外からも?」


『とっさの時、魔石がなければ自分の魔力を使ってしまう。それではわざわざ寿命を削らずに魔術師になろうとしているのに、元の木阿弥じゃろ』


 なるほど。そうやって防御しようという話らしい。


 三週間目に、ようやく指先に火を灯す魔術へと移った。

 一日では難しく、三日、四日と続けて……。


「できた!」


 最初に成功したのはアダン。

 それを見てコツをつかんだのか、メリーもマティアスも成功するようになった。


『よし、穏やかな方法での魔術師の誕生、達成じゃ!』


 カールさんが興奮して、幽霊なのに鼻息が聞こえそうだ。


『やはりそれなりの期間と時間、そして多少の魔力の移動を経験した上で、というのが解決の糸口だったようだな』


 ふんふんと、独り言で自分の解析結果を語り出す。


「じゃあ、このまま魔術を他にも覚えていく感じですか?」


 私が問うと、カールさんがうなずく。


『とはいっても、魔術は己のイメージと魔力で作る物。小さな物でまだ訓練が必要じゃ。そして自分の感覚で掴む物ゆえ、方法論はない。まだるっこしくても、じわじわとその火を大きくする練習をするのだ』


「錬金術みたいに、決まった分量とかがないのね……」


 それは習得しにくいだろう。

 危機的状況で、そんな慣れを体得できるわけがない。

 失敗したらごっそりと寿命が削れるのだから。

 どうりで、今まで危機的状況ではない時に魔術師になろう、させようという人がいないと思った。

 カールさんみたいな指導をする魔術師もいなかったんだろう。

 そしてカールさんは相手の魔力のゆらぎを見分けるのが上手いようだ。


『アダン、止めよ。メリーは一度深呼吸。マティアスは同じことを繰り返すように』


 魔力が多すぎると感じたらすぐ止め、気持ちを落ち着かせる。

 カールさんはじっと集中して観察し続け、指導する。


「カールさん、錬金術の作業の方は、お休みしますか?」


 彼ら三人が身を守れるようになることで、何か未来が変わるかもしれない。

 そちらを優先するべきかと思ったが……。


『いや、錬金術に使うぐらいの小さな魔力の動きを、体に覚え込ませた方がいい。そのうえで、他の物から補うくせをつけた方が、寿命は守られるじゃろう』


「なるほど」


 錬金術も、少しは役に立っているようだ。


 私は二週間ほどで、かなりの薬を作り出した。

 怪我の薬はある程度確保できたし、売る分も大丈夫。

 なので、いよいよ他の作業に入る。


「石の触媒……」


 これができれば、石を人力で積む労力が減る可能性が出てくる。

 鉄の木みたいに、人の手でやりやすい場所に集めておいて、増やせれば……。かなり作業も楽だし、施工期間も減らせるのだけど。


「でも、どの本にも石の触媒ってないのよね。他の触媒のつくり方を参考にしてみようかな」


 個人的には、植物の触媒もあるのだから、石があったっていいはず。

 そんなわけで、基本の触媒の作り方で、石に置き換える方法を試してみる。


 使うのは、比較的多くて、魔力の性質に片よりがない物。


「花崗岩とかどうかな」


 鉄でもないし、山まで行かなくても、道の途中に岩がある。

 というわけで、拾っておいた花崗岩のを使用。

 トンカチで砕いて、布に包んでさらに粉々にしていく。


「性質を偏らせたくないから……」


 粉になった花崗岩に魔力を注ぎながら水を混ぜ、それをランプの火で熱していく。

 鉄のマドラーで混ぜつつ、さらに魔力を込める。


「強すぎる……?」


 水の魔力の方が勝ちそうになったので、魔力を止めて熱して水分を蒸発させた。

 かちこちに乾いて固まった石の粒の塊ができる。

 どこか花崗岩よりも透き通った石になった気がするけど。

 

「確認するにはこれを……」


 私は沢山貯めてあったペリドットを取り出し、石の粒の塊を一つまみ。

 魔力を込めると……。


「おお、固まる固まる」


 ペリドットと石の粒が溶けて固まっていき、乳白色がかった緑の石に変わっていく。


「やっぱり石の触媒ってできるのね」


 こんなに簡単なのに、なぜどの本も扱わなかったのだろう。


「……あまり石の触媒って、必要だと思わなかったとか?」


 考えてみれば、鉱石から純鉄やらを取り出そうと思っても、わざわざ組み合わせようとは思うまい。

 鉱石はたいてい純度の高い銅や鉄、金や銀を取り出すのを錬金術で行い、それを鍛冶師や細工師に加工させる物が多いようだし。


「錬金術師、なのにね」


 純金を、通常の苦労をしなくても魔力で調合することで取り出せることから、錬金術師は最初とても重宝されたそうだけど。

 わざわざ混ぜ合わせようとも思わなかったのだろう。価値が落ちるのだろうし。

 作ったこれも、特に価値がある物ではない。


「建築の装飾とか、絵の具材料とかにならできるかもしれないけど」


 そういうのは錬金術師が調合で作ると、ばかみたいに高価になってしまう。

 そもそも絵の具なら、他の色を混ぜればいいだけなので、その色を作る必要はない。

 結果、わざわざ石を混ぜ合わせようなんて思わなかったのだろう。


 考えれば考えるほど、必要なかったんだなと思えてきた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ