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契約結婚のその後で、領地をもらって自由に生きることにしました  作者: 奏多


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93 魔術師になりますか?

 一緒に彼を引き取った里親もついてきたのは当然だろう。

 我が子だと思って育てようとしたところで、急に領主に呼ばれてびっくりしたのに違いない。


「とても大事な話があるのですけど、本人にまず意思を確認させてください」


 私は里親二人にそう断り、まずはマティアスとアダン、メリーと話をさせた。

 長い間一緒に助け合ってきて、お互いの出自も気心も知っているのだ。

 三人で結論を出したいだろう。

 その後、里親とマティアスで話し合ってもらうとして……。


(まだ外に情報を知らせるには早いから。そこはアダンとメリーから上手く話してもらおう)


 ふわっとした薄茶色の髪のマティアスは、城に来ておどおどしていたものの、二人と話せるとなると、ぱっと表情を明るくしていた。

 そうして私が見守る中、三人で色々と話し始める。


 まずは預かってくれる里親のこと。

 順調に仲良くなっているらしいこと。

 お互いの状況について簡単に意見を交換した後、アダンが急いで本題を切り出す。


 マティアスは驚き、怯え、それから目を見開いて……やがて何かを決意した表情になる。


「僕も、魔術師になる、勉強したい。おじさんおばさんが、父上達みたいに殺されたりしないようにできるし、また放り出されても三人で上手く生きていけるから」


 ああ、と私は心の中で吐息をつく。

 マティアスが怯えがちだったのは、賢いからだったのだと。

 子供で、何もできないことが多いとわかっているから、怖がっていたのだ。


 そして賢いから、すぐに魔術師としての特権を使えば、連座させられないようにできるという情報を、覚えていた。

 もしかしたら、自分が本当に魔術師だったら……と何度も思い返していたのかもしれない。

 まだ十歳ぐらいの子供なのに。


 アダンとメリーは、魔術師になる授業を受けられる、とだけ話したようだ。

 彼らも自分より幼いマティアスに、ここが攻め込まれるかもしれないという話を、今はできなかったようだ。

 ただし寿命のことはきちんと話してくれた。

 マティアスは、魔術師達の多くが若くして亡くなってしまうことを聞いたうえで、今自分に温かく接してくれる里親の二人を守るために、力がほしいと望んだのだろう。


「わかりました。では、あなたの今の保護者に授業について伝えましょう」


 そこでようやく、里親二人をまじえて話をした。

 もちろん、魔術師の寿命が少ないことは有名だ。

 だからこそ里親二人は怯え、そんなことはしなくていいとマティアスに言ってくれる。

 優しい保護者だと再確認できてうれしいと同時に、マティアスはなおさらそんな二人を守りたいだろうなという気持ちも理解できる。


 私は里親に言った。


「寿命の問題はあります。でも、それを緩和しつつ魔術師になれる可能性が見えたので、彼にも授業に参加してもらえないかと思っているのです。実は、ひそかに高名な魔術師を紹介してもらいまして……」


 カールさんのことは、そんな風にごまかしておく。


「寿命が短くなるのは、命の危機などに陥ってからの魔術を発現させてしまうから。でも小さな魔術を最初から使えるようにしておけば、その心配はありません。問題は、魔術を使えるようにならないかもしれない、という方です」


 カールさんの思惑通りにいくかどうかは、魔術師ではない私にはわからない。

 だからどっちかというと、マティアス達が魔術師になれない可能性まであるのだ。

 錬金術に使える程度の魔力の放出はできても、同じ方法で魔術を使用できるか全くわからない。


 里親達も、そもそも魔術師にかならずなれるわけではないという話に、ちょっと拍子抜けしたようだ。

 そしてマティアスが、実親達のように何かに巻き込まれたら自分が助けてあげられるから、という理由を告げると、涙をこぼして了承していた。


 そんな風に愛情を与え合える家族の姿に、私はほんの少し憧憬を感じたのだった。



 翌日から、アダンとメリーは午前中、錬金術の調合手伝いと座学をミカと一緒に。

 午後はマティアスを加えて、魔力練習という名の魔術講座をしてもらい、私はその横で調合をすることになった。


 カールさんと三人の初対面は……ちょっと面白かった。


「幽霊?」


「幽霊みたい!」


 そう言って興味津々の子供達に、突撃されたり、触ろうとされたり、ひとしきり大騒ぎだったからだ。


 その後は、カールさんが考えた突貫の訓練を始めた。

 カールさんはノリノリだった。


『ウホホホ、これで正常状態からの魔術師への転換についての実証ができるぞ!』


「お、お手柔らかに……?」


 アダンが言う。


『もちろんじゃぞい! これが成功したら、そなたらは世界で最初に、寿命をほとんど削らずに魔術師になり、寿命の温存までできる稀有な魔術師となるのじゃ!』


 カールさんがそこまで嬉しそうに言うので、かえって子供達三人は安心したようだ。

 やっぱり寿命が減るの、嫌よね。

 助かった後で、残りの年数を数えてみたら、泣き崩れる人もいるでしょうし。


 私も自分にできること……調合をしながら気合を入れる。

 よし、がんばってやっていこう。

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