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契約結婚のその後で、領地をもらって自由に生きることにしました  作者: 奏多


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91 夢で見た未来との違いはどこだ? 2

「あ……」


 私は紙に書き込んで、ふっと頭の中で、何かが繋がっていく感覚がした。


「崖崩れを回避して、生き残ることが決定したから、その先の未来を見たんですね? で、その時はまだ、アダンとメリーは殺されるはずだった。それなら、崖崩れを回避した後に、何かが起こったとしたら……あ!」


 私は自分の手を叩く。


「アダンとメリーを殺して証拠隠滅までする人物。しかも山賊を倒せるのなら、それは魔術師じゃないかと思うんですけど!」


『む、確かに。そして大人数でこの田舎でもあるハルスタットを通れば、目立つ』


 私はうなずく。

 珍しいから、誰かが知らせてくれたはずだ。

 だって崖を通り抜けた旅人のほとんどが、ハルスタットのある山へ向かう道ではなくて、ゆるやかな南側や北側へ向かう道に行ってしまっていた。


「ベルナード軍が魔力を持つ人間を集めていると、知られた可能性があるから、殺して誰にも知られないようにしたかったんですかね?」


『おお、ありそうなことじゃが、なぜそれを実行できなかったのか? が問題じゃ』


 カールさんの指摘にうなずく。


「魔術師だとしたら、ぶつかるのが嫌なのはリュシアンだと思うんです。でもリュシアンは翌日に出発して……。うーん、先に誰か町の人が、旅人を泊めていないか調べます!」


 次の日、私はさっそくセレナに頼んで情報収集をしてもらった。

 待つ間は、ひたすら材料がなくなるまで薬を作る。

 熱さましをまだ作っていなかったので、ちょうどいい。


 一方のセレナの方も、使用人を介して『町民のつながり』を使い、昼までに旅人を探してくれていた。


 一人、旅人を泊めた人間を見つけた。


 セレナは詳細も聞いてくれていた。

 旅人が来たのは、私達がハルスタットへ到着した夜のことだったようだ。

 

 農家を訪ねた旅人は、お金と引き換えに倉庫に泊まったらしい。

 旅人は、山賊が捕まった翌々日ぐらいに町を出たのだとか。


「それじゃ、リュシアンがいたからじゃないわね」


『警戒するべきだったのは、領主ぐらいではないか?』


 カールさんの言葉に、私は思わず自分を指さす。


「でも私、たぶん同じような行動したと思うんです」


 確かにリュシアンが出発した日、すぐに街中を歩き回っていた。

 でも採取はすぐじゃなかったような?


「あ、いや、待ってくださいカールさん。山賊の未来を見たのって、崖崩れを警戒して待機中ですよね? てことは……カールさんが私に、ベルナード軍が来る未来を見せる前?」


1、私、崖崩れの夢を見る

2、待機して崖崩れ回避

  ※この日にカールさんは山賊のところにいる子供が殺された未来を見る

3、私がハルスタット到着――同じ日にベルナード軍関係者到着

4、リュシアンが出発した日――私は町を歩き回っていた

5、その夜、ベルナード軍が来る悪夢を見て、朝から対策を考える

6、翌日、湖へ採取に行く

7、採取の次の日、私は調合してたけど、山賊が出現して襲われる人がいた

8、翌日、ギベルから山賊が出たという報告を受ける


 書いてみて、悪夢を見た日は、幸いにも魔術師だか誰かが山賊を見つけられなかったのだと推測できる。


「魔術師は、一日だけ、山賊を探すことができた。でも、翌日は私が森に近い湖へ採取に行ったりしていたから、警戒したかもしれない?」


『お前さんがうろちょろしている間に山賊が出て、家令が森を見張らせるようにしたのだとしたら……森へ山賊を探しに行きにくくなっただろうな』


 カールさんが私の推測を肯定するように、続きを想像してくれた。


「その後は山賊狩りまで時間がありましたけど、兵士に警戒させてましたし、木こりも近寄らないのに、森へ行こうとしたら目立ちます。それで……あきらめたんでしょうか」


 カールさんがうなずく。


『子供に詳細は伝えていないし、子供を運んでいた商人達は山賊に殺されて、ベルナード軍の情報を話すことはない。そう思って、隣国へ戻る方を優先したのかもしれん。……では未来を見たことによってお前さんの行動が変わり、山賊の所の子供が殺されなかったのではないか?』


「そうかもしれません。その後魔術師は、一応情報が漏れたのではないかと警戒はしたんだと思います。子供が何かしゃべったら、すぐさま西の領地にベルナード軍がおかしな動きをしているという知らせを送るかもしれない、と思っていた。けど、何も私は早馬なんて送りませんでしたから」


 子供達と話をした後、すぐに火竜が出る未来を見たのもそうだけど……。ベルナード軍が侵攻してくる未来を見ていた結果、西の領地がそんな情報で動くとは思えなかったからだ。


『やはり、未来を見たおまえさんが行動を変えたことで、違いが発生したのではないか?』


「あ、そうか」


 私は改めて図を描く。


崖崩れの夢

崖崩れ回避=ハルスタットに私が到着できる未来が決定

山賊が確保していた子供が殺されている未来

(私がベルナード軍が侵攻する未来を知らない状態)

ハルスタット到着後、ベルナード軍の侵攻で死ぬ未来を見る

私が周辺に採取に出るなどの行動が当初よりも早くなって、子供を殺した人物の行動を邪魔した可能性


「私が採取を早めたのもあるけど、きっと侵攻に備えて……」

 

 人を殺す覚悟を固めなくてはと思って、爆発物の効果を自分の目で見たいと山賊狩りに参加したのだ。

 そのせいで、兵士の数も増えたはず。

 結果、アダンとメリーを殺そうとしていた人物は、目立たない方を選択した。


「アダンとメリーが殺されなかったから、私達に国内でもベルナード軍の人間が行動しているかもしれないと教えることができた。そして火竜についても必死になってて、そのあたりも何か変わったかも?」


 私はもう一度、紙に書いたメモを見て、書き足す。



※失敗した未来

・ 錬金術で薬、爆薬は作成済み

・ アダンとメリーの話を聞いていないから、警戒度は今より低い

・ 火竜が出た時と、実際に火竜の対策をした時の様子が違う

  私は山に登っていた。

・ たぶんリュシアンの協力で、雨キノコによって火竜を鎮めるのには成功している

・ 一方で、私は怪我をした可能性が強い……。


「もし未来を見た時の状況のままなら、火竜鎮めの時に私が怪我をしたはずです。そうしたら、今のように調合も進まなくなっていたと思います。あと、アダンとメリーがいるので、薬なんかの調合が沢山できるようになったので……」


 お金を稼ぐのも、戦闘時の治療も、あの未来より良くなるはずだ。

 強い爆弾も作れる。


「それに魔石。火竜が暴れまわらなかったので、洞窟を発見できたんじゃないかと思うんです。怪我をしていたら動き回りませんし、火竜が出入りしているからと、近寄らなかった可能性が高いです」


 おかげで、傭兵の剣が強化できた。兵士の剣も、あの魔石を使った錬金術で強化するつもりだ。

 だから、戦闘力的にも予定されていた未来よりはいいはず。

 ……うん、ちょっと希望が見えて来た気がする。


「たぶん、カールさんが見せてくれた未来よりは、錬金術で戦う手段が増えているのは間違いないはずです」


『お前さんの調合量や種類が増えたなら、また違った状況になりそうだな』


「はい。ただ、今現在手に入る物だけで足りるか心配で」


 もっと大きな武器が必要だ。

 城壁を壊せるような武器を持つ、ベルナード軍に勝てるような物を。


(個人的な理想としては、私は領内にベルナード軍を入れたくない。だから道を封鎖したいけど、二手に分かれての攻撃は人数が少ない私達には厳しいのよね)


「あと、ベルナード軍を侵入させずに撃退できるのが一番いいんですけど、リュシアンの送ってくれる兵力だけでは心配です。最低でも、二手に分けなければならないので」


 それ以外の場所から侵入されることだって、多少は考えないと……。

 あれこれ悩んでいると、カールさんがふいに提案してきた。


『わしも思ったんだがな』


「なんでしょう?」


『一番、わしらが見た破滅の未来になかった要素は、あの魔力を持つ子供二人だ。あの子達に、小規模でも魔術を使えるようにしてはどうだ?』


「え?」


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