第9話
組合所の中は沢山のプレイヤーでごった返していた。
「二百七十番でお待ちの方~」
「二百七十一番でお待ちの方~」
従業員の女性のNPCたちが番号を次々に呼び上げ、その番号札を持っているプレイヤーが受付みたいな所に並んでいく。順番で呼ばれるみたいだけど、あの番号札は何処で手に入れるんだろう。
「組合所にようこそ。初めてご来店の方ですか?」
金髪でポニーテールの制服姿の女性が話しかけてくる。
「あ、はい。今日初めて来ました」
「では、こちらへお越しください」
従業員に案内されて空いている受付に向かう。
「素材の買取の際はこちらの受付で申請してくださいね。今、素材をお持ちですか?」
「はい」
「では、その素材とプレイヤーカードのご提示お願いします」
インベントリからロングエイプの毛皮とゴブリンの錆びた短剣と棍棒を取り出しプレイヤーカードを見せた。
「ありがとうございます。査定には少々お時間をいただきますのでこちらの番号札をお渡ししております」
従業員の女性は数字が書かれた四角い札を差し出す。そこに書かれていた数字は四百五十。さっき二百七十番台が呼ばれていた気がするけど時間かかるのかな。俺はその事を尋ねた。
「どれくらい掛かるんですか?」
「うちの従業員は優秀なので十分ぐらいで終わりますよ」
「わかりました。それぐらいでしたら待ってます」
「それではお預かりします。受け取りの際は受取口にまでお越しくださいませ」
空いている席に座り周りにいるプレイヤーたちを眺めながら待っていると自分の番号を呼ばれ受取口に向かった。
「四百五十番です」
そう言いながら番号札を渡す。
「お待たせしました。こちらが買取額になります」
果物を買った分は戻ってきて一安心した。
お金を受け取り組合所を出ていく。時間はまだ昼の三時手前。夕飯作らなきゃいけないから……あと二時間ぐらいは出来るな。よし、森に行こう。コガネを呼び出して森に向かった。
「いたいた」
森に着いた俺達は散策しながらモンスターを探していると大きい牙を持つ猪のモンスターのワイルドボアを見つける。レベルは6だけど、二対一なら行ける……はず。
コガネには木の上で待機してもらって俺は盾を回転刃に変形させて投げた。
「ブヒィ!」
ワイルドボアは回転刃にいち早く気づいて大きい牙で弾く。回転刃は明後日の方向に飛んでいく。
「コガネ頼む!」
「シュ!」
コガネは糸を使い回転刃を糸で絡め、勢いをつけ俺の所にぶん投げてくる。
「ナイス! コガネ!」
飛んできた回転刃を上手く右手に装着させ盾に変え、突撃してくるワイルドボアの攻撃を【プロテクト】のスキルを使い重たい一撃を受け止めた。
「重、すぎ……!」
「シュ!」
「プギィィ!」
受け止めている間にワイルドボアの背中にコガネが乗り移り背中に噛みつく。コガネを振り落とそうとワイルドボアは暴れ回る。俺は巻き込まれないように一旦距離を取ることにした。
コガネの【毒の牙】のおかげでワイルドボアは毒状態になった。かっこいいぞコガネ!
「シュ!?」
振り落とされたコガネは背中から地面に落ち、ワイルドボアは追撃しようと牙を向ける。
「させないよ!」
盾を使い俺はワイルドボアの頭に横から体当たりして軌道を無理矢理逸らして、急いでコガネを回収して逃げ出した。
「シュ……?」
「コガネ、じっとしていてくれ……っておい!」
コガネは走っている俺の体を器用に上り頭に乗っかり後ろの木々をなぎ倒しながら追いかけてくるワイルドボアを見た。
「シュ!」
頭の上でコガネは足を使って指示をする。
「そっち行けばいいんだな……!」
「シュ!」
「お前を信じるよ!」
木を使い急旋回してコガネが指す方へ走り出す。
俺が急旋回したことでワイルドボアは大きくよろけて転がるけど、直ぐに追いかけてきた。
俺はコガネが指す方へ無我夢中で走った。
「げっ!」
森を抜けたと思ったら崖が広がっていた。
その向こうにはまだ森が続いているけど向こう側に渡る橋が見当たらない。
「ブヒィ!」
目の前は崖で後ろには怒り狂うワイルドボア。これどうしろと。
「シュ!」
コガネは崖の向こう側を指さす。え、まさかこいつ俺に飛べって言っているか?
視線を向けるとコガネは頷いた。
「ブヒィィィ!!」
「あーもう! 飛んでやるよ!」
少し後ろに下がり助走をつけ俺は思いっ切りジャンプをした。
や、やばい! 届かな――
「シュッ!」
コガネは俺の腕に飛び移り糸を向こう側の木に絡め、俺の腕をギュッと掴まれ引っ張られた。
「……痛いんだけどコガネ……」
見事に顔面から木にぶつかり俺はコガネに文句を言う。
「シュ」
そんなの知らないと言いたげにそっぽを向いた。
「プギィィィ…………」
崖に落ちていくワイルドボアが視界に入る。
少し経つとレベルが上がっていることに気が付く。どうやら落下ダメージで倒せたようだな。
まぁそれは置いといて。
俺はコガネの頭を撫でながら言う。
「お疲れコガネ」
「シュ」




