第429話
アオガネの背に乗り、海中を猛スピードで横断していると「集合時間だぞー」って颯音からメッセージが来た。
カスティさんを連れて王国に向かっているとメッセージを返す。
直ぐに返事が来て、「ウィルの力で王国まで転移してくれるから先に待ってるぞ」とのこと。
『アオガネ、もう少しスピードを上げれるか?』
『スピードを上げていいんだな! 飛ばすぜ!』
アオガネのスピードは更に上がり、三十分ぐらいでサイゲルの街近くの浜辺に到着した。
アオガネの背から降りたカスティさんは膝から崩れ落ち、砂浜に座り込んでしまった。
「も、モンスターがあんな一瞬で……」
「カスティさん、大丈夫……そうではないか」
カスティさんを落ち着かせるために急いでシロガネを呼び出した。
『どういう状況なの、これは?』
ありのままのことを伝えるとシロガネはため息をついた。
カスティさんの近くに行くシロガネは翅を羽ばたかせる。甘い香りが砂浜に広がる。
「気分はどうですか?」
「はい、大分落ち着きました……ここがトワイライト王国でしょうか?」
俺は頷く。
「ネプチューンとクラーケンの戦闘でボロボロですけど、ここはトワイライト王国のサイゲルっていう街です。王都はまだ先です」
「そうなんですか」
カスティさんはゆっくりと立ち上がる。
「体調も回復しましたし、王都に向かいましょう」
「あ、カスティさん。先に到着している颯音たちと合流してもいいですか?」
「わかりました。行きましょう」
アオガネとシロガネを戻してサイゲルに向かう。颯音にメッセージを送り、騎士団の仮本部で待ち合わせをすることに。
「あ、春名! 遅いぞー!」
「お待たせ。他のメンバーは?」
「ウィルの屋敷にいるよ。屋敷から王都に行けるってウィルが言ってたから集まってる」
「屋敷から行けるんだ。てことで、屋敷に行きましょうかカスティさん」
「ウィルさんの屋敷……ですか?」
「あ、カスティさんには言ってなかったな。道すがらウィルについて話しますよ」
カスティさんにウィルのことを話しながら屋敷に向かう。
屋敷と到着すると警備の人が門の前で立っていたが、俺たちの姿を見ると門を開けてくれて敬礼までしてくれた。
絵画のある部屋に向かい、そこから隠し扉を潜ると、ウィルとルラーシャ、兄ちゃん以外のメンバーの姿があった。
「おかえりなさい。ハルナさん。それとカスティさん、ようこそトワイライト王国」
「ウィル様……いえ、クロノス様とお呼びした方がよろしいでしょうか」
「え……カスティさんに何を伝えたんですか、ハルナさん?」
「ウィルが時の神クロノスになったことだけだけど」
ウィルはため息をついた。
「カスティさん、今まで通りでウィルって呼んでください」
「クロノス様がそう仰るなら……」
「はい! この話は終わり! 王都に行きますよ!」
話を終わらせたウィルは壁に手を翳すと扉が出現した。
「春名さん、昨日は行けなくてごめんなさい」
突然、雫恩が謝りに来て俺は目を丸くした。
「全然気にしなくていいのに。これから王都に行くから海都と一緒に観光したら?」
「そうしますわ」
出現した扉を潜るとどこかの路地に繋がっていた。
「こっちです」
ウィルの後を追って路地を進むと王城が視界に入る。迷うことなく進んでいくウィルについていくとすぐに王城の近くに到着した。
王城の門の前にいる騎士の人に話し掛けることにした。
「すみません。総団長さんに王都に来た時に王城に寄ってほしいと言われて来たのですが……あ、ハルナって言います」
「お待ちしておりました。ハルナ様ですね。総団長より話は伺っております。この時間は訓練場に居りますのでご案内致します」
綺麗な庭園を通り過ぎ、静かな訓練所に到着。中庭で瞑想している総団長の姿を見つけた。
鎧をつけていない姿は初めて見た気がする。
「総団長、ハルナ様をお連れ致しました」
「……そうか。勤務に戻ってくれ」
案内してくれた騎士は一礼して去っていく。
瞑想した総団長は立ち上がり、俺たちの方にやってくる。
「こんな姿ですまないな。初めての方もいるようだな」
「あっちの女性が仲間のシオンで。こっちの女性が組合所代表のカスティさんです」
「初めまして組合所代表カスティと申します」
「王国白銀騎士団、総団長のアレックスだ。こんなに早く来てくれるとは思わなかった」
カスティさんと総団長さんは握手を交わした。
「カスティ殿、手紙の要件はハルナ殿に物を渡してからでも構わないかな?」
「はい」
「それじゃハルナ殿と……魔術師の方、付いてきてくれ。他の方々は立入禁止されている所以外は自由に見学してもらって構わない」
「ウィルも? どうする?」
「僕も話があるので付いていきます」
「そうか。じゃあ一旦解散で。颯音、終わったらメッセージ送るわ」
「おう、わかった。総団長さん! 武器庫ってありますか!」
「武器庫なら地下室にあるぞ。見学しても構わないが危険な物もあるから気をつけてくれ」
「はーい! よっしゃ、探検するぞー!」
颯音は勢いよく掛けていった。
他のメンバーも別行動しだし、俺とウィルは総団長と一緒に執務室に向かった。




