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第43話

『春名まだ?』


 街中を走っていると颯音からメッセージが来る。


「悪い! 少し遅れるから先入ってて」


『わかった。早く来いよ』


「おう」


 颯音とのメッセージを終わらして足を速めた。


「おい、そこのガキ! 止まれ!」


 俺の行く手を複数で阻んでくる人たちが現れた。

 さっきの二人組の仲間だよなきっと。


「外までツラ貸しなガキ」


「嫌ですけど?」


 街中だとプレイヤー同士じゃダメージを与えるスキルや魔法を使うことが出来ないからこいつらは俺を囲って外に連れて行く気だろうけど、そんなのに付き合う気はない。


「生意気なガキめ!」


 じりじりと近づいてくるな。こういう時はシロガネのスキルを使うか。


「【ハニートラップ】!」


 地面に手を置きスキルを使うと俺の周りに粘り気のある蜂蜜が広がり囲っていた人たちの足に浸る。


「うわっ! なんだこの液体は!」


「滑って立てねぇ……!」


 上手く行ったようだな。コガネのスキル【ビリビリの糸】を使って建物の屋上に糸を伸ばして俺は一気に上がった。


「待てガキ!」


「待てって言われて待つ奴なんかいないよーだ。あと、これ以上面倒事は嫌なんで運営に通報しまーす」


「お、おい!」


 俺はポチポチと操作してこの場に居る全員を運営に通報した。


「じゃーね」


 手を振って建物の屋上を歩く。

 アトラさんの店はあっちの方角だよな。また下に降りたら絡まれそうだし、このまま屋上伝ってアトラさんの店に行こう。てか、あいつらのせいで大分遅れてしまった。マジで許さない。俺は急いで向かった。

 アトラさんの店近くに着いた俺は辺りを警戒して下に降りた。


「あいつらはいないようだな」


 安全を確認してアトラさんの店に入る。


「あ、遅いぞ春名」


 お店に入ってすぐに颯音を見つける。


「わりぃ、色々あってさ……それよりも着替えたんだな」


 颯音は最初の装備から新しく新調した装備を着ていた。

 白いタンクトップの上から濃い青色の首元が広く口元を隠す服を着ていて、両腕には濃い青色に上部には月を模した装飾がされている籠手が装着されていた。

 腰には黄色の布が巻かれ、上着と同じく濃い青い色の膝が隠れる長さしかないズボンを履いている。靴も新調したのか以前よりも動きやすそうな靴になっていた。


「似合っていると思うけど……なんか見たことがあるような……」


「昔、一緒にやってたストレートファイターズトライって格ゲー覚えている? それに出てくる俺がよく使うキャラの衣装だよ」


「あー道理で見たことあるわけか。お前が格ゲーに嵌るきっかけになったゲームだよな」


「そそ。再現度も高くてアトラさんには感謝してる!」


「そのアトラさんは?」


 店内にはアトラさんの姿がなく俺は颯音に尋ねる。


「アトラさんなら少し出掛けてるよ。俺たちが出たら自動で鍵が閉まるようにしてくれているから気にせずにお店を出ちゃって良いって」


「そっか。挨拶したかったけど仕方ない」


「春名、この後さ少しだけ新エリアに行かない?」


「え、うーんいいけど……少しだけだからな」


「よっしゃ、早く行こう」


 俺と颯音はアトラさんのお店を後にした。


「そう言えば、さっき色々あったって言ってたけど」


「あー実はな……」


 俺は颯音に事細かく伝えた。


「ただの迷惑行為じゃん! 通報して正解だよ! 次あったら俺が追い返してやるよ!」


「その気持ちは嬉しいけど、相手レベル30あるから一人で突っ込むなよ」


「意外と高かった! 春名も厳しそう?」


「俺はコガネとシロガネがいるからワンチャン行ける」


「本当にそれずりぃよなぁ〜羨ましい!」


 キリよく話が終わると街の中心にある転移門に辿り着く。

 俺たちは転移門から伸びている列に並び順番を待つことにした。

 適当に颯音と話して時間を潰しているとようやく自分たちの番が来る。転移門の前に行くと転移先を選択する画面が出てきた。


「しばらくは新エリアに居るんだし、そいつらのことさっさと忘れて楽しもうよ春名」


「そうだな。んじゃ前に言っていた」


「海原に」


「「レッツゴー!」」


 俺と颯音は同時に新エリアの海原を選択して転移門を潜った。



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― 新着の感想 ―
[気になる点] >「滑って立てれね……!」 「立てねえ」かな?それともこれは地方での言い方?
[良い点] 面白いです。 仕事の合間にここまではいっきに読みました。 [気になる点] ハルナとハヤトの会話やモノローグですが、 ゲーム中はプレイヤーネームにあたるカタカナ 評価の方が良いと思います。 …
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