第427話
「おーい、春名~! って……横にいるのってウィル!?」
「マジか……!」
「髪色変わったけどウィル君だ!」
「ルラーシャ、ウィル帰ってきたね」
「……うん……!」
ウィルの姿を見たルラーシャは駆け出して胸に飛び込んで涙を流した。
そんなルラーシャにウィルは優しく抱きしめた。
隣に来た颯音が聞いてくる。
「生きてるか~?」
「体が動かない。肩を貸してくれ」
「テオクエの反動だっけ? てか、遠くから見てたけど、春名の最後のあれは凄まじかったな。誰との共鳴技なんだ?」
「コガネだよ。詳しいことは言わないけど、疑似共鳴をする共鳴技だ」
「疑似共鳴って……またチート級な技を……」
「ネプチューンには全然ダメージは与えれなかったけどな」
颯音に手伝ってもらい立ち上がると、目の前に総団長さんがやってきた。
「総団長さんも来てたんですね。すみません……街を守ると言っていたのにめちゃくちゃに……」
総団長さんは軽くため息をこぼした。
「街はいくらでも再建すれば元に戻るさ。君たちが無事でよかった」
「怪我人とか大丈夫でした?」
「ああ。負傷者は多少はいるが、幸い死者は出ていない。君たちの協力には心から感謝する。ありがとう」
「てことは屋敷の侵入した罪は無しでいいですよね……?」
「お前って奴は……そうだな。無罪放免だ」
そんな会話を聞いていた颯音たちの笑い声が聞こえてきた。
「それにしても君たちの仲間にはドラゴンもいたのだな」
「仲間……って言うよりかは友人かな。ね、オピオマリスさん!」
『その名前は昔に捨てた名だ。オピオって呼んでくれないかのう……』
そう言ってオピオさんは人間の姿に戻った。
「お疲れ様、オピオさん」
「お主もな。ネプチューンには逃げられてしまったが、しばらくは目覚めないだろう」
「それまでには強くならなきゃだな。オピオさん、手伝ってくださいね」
「儂で良ければいくらでも手伝おう」
「あ、春名だけずるい! 俺も手伝ってくださいオピオさん! てか、戦いたい!」
「儂とか?! 構わぬが手加減はせぬぞ?」
「望むところです!」
何故かオピオさんと颯音が対戦すること約束し合った。
「あ、総団長さん。俺たち一旦帰るから、後のこと任せてもいいですか? そろそろ限界で……」
「それもそうだな、後のことはこちらに任せてくれ。それと何時でも構わないが王都に来た時に王城を訪ねてくれ。渡したい物がある」
「渡したい物? 近いうちに王城に寄ります。あ、そうだ。これ必要だったら使ってください」
総団長さんに海原エリアの街の座標が書かれている紙を渡した。
「人族の街がある座標です。そこの組合所の代表と知り合いなんで、色々と助けてくれると思います」
「人族の街……わかった」
「それじゃ、拠点に戻ります。ウィルとルラーシャはどうする? 一緒に拠点に帰るなら送るけど?」
「久々にルラーシャとデートでもしようかなって思ってます」
そう言いながらウィルはルラーシャと手を繋いだ。
「ちゃんとエスコートしろよ。またあとでな!」
俺たちは拠点に転移しソファに深く腰掛けた。
「今日の夜、ログイン出来る人~」
「俺は行けるかな」
「右に同じく」
「午後からの予定無いよね?」
「確か……ない。あってもキャンセルする」
「だよねー。流石に疲れたね」
「春名。午後から会社に行かないといけないから俺は不参加で頼むよ」
「午後から会社なの? わかった。それじゃ、一旦解散で。夜の六時ぐらいに集合かな」
ログアウトした俺はヘッドギアを外し、近くにあったスマホに手を伸ばした。
「六時か……アラームもセットしたな。あ、兄ちゃんに言っておこう」
部屋を出た俺は、兄ちゃんの部屋のドアをノックした。返事がなく、ゆっくりとドアを開けた。
「兄ちゃん、昨日から手伝ってくれてありがとう。おやすみ、兄ちゃん」
兄ちゃんは手を振って返事をくれた。
部屋に戻り、横になっていると瞼が重くなり眠り就いた。




