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第426話

『何ヲシヨウガ、無駄ダ』


 ネプチューンが再び稲妻を放ってくる。

 水玉模様が入っている扇子を扇ぎ濃霧を発生させ、稲妻を遮り、物陰に隠れた。

 スナイパーライフルを構え、額を狙い、一発放つ。

 直撃してるのにダメージがほとんど入ってない。次だ次。


『遊ビハ終ワリダ』


 突然目の前に現れたネプチューンの攻撃をギリギリで赤と黒の丸い盾で防ぎ、後ろに吹き飛んだ。

 吹き飛ばされた時に竜巻のような装飾の短剣、光り輝くレイピア、ギザギザの刃先の槍をネプチューンに放った。


『下ラヌ』


 三つの武器を弾き、勢いそのままで突撃してくるネプチューン。

 それに合わせて柄部分と鎖で繋がれた棘付きの氷塊を振り下ろした。

 体を捻り、黒い大鎌を振り上げて、一撃を加える。バッタを模した靴を装備し、ネプチューンから距離を取った。


「これでも食らっとけ!」


 白の杖を地面に突き刺し、ハエトリグサのような植物を生やして襲わせた。

 毒での継続ダメージを期待しているけど……お、ダメージが入っているが、あいつの回復速度が高いのかプラマイゼロだな。


『毒カ……小賢シイ真似ヲ!』


 激怒したネプチューンが体に纏われているハエトリグサを引き千切り向かってくる。

 蝶の模様が刻まれた黒手袋を使い、俺の分身体を複数作り出して、ネプチューンの攻撃を避ける。


『一掃シテクレルワ!』


 ネプチューンは槍を掲げ、複数の稲妻を落とし分身体を次々に消されていく。


『全テ偽物ダ、ト……?』


 影から現れ、背中ががら空きのネプチューンに毒が塗られているクナイ振り下ろした。

 だけど、ネプチューンは振り返ることなく俺の腕を掴んだ。

 ネプチューンに槍で付かれる前に体を小さな黒蝶に分裂させ姿を消す。


『此奴モ偽物カ……!』


 隙だらけの頭上から、牙状の突起が付いてい細身の刀身が特徴の双剣と、鋭い棘が付いているメリケンサックを装備をしている俺の分身体が攻撃をする。


『クラーケン!』


 ネプチューンが叫ぶとクラーケンは触手を伸ばしてきて、二体の分身体は薙ぎ払いされた。


「お前が動くなら……!」


 手に持っている起動装置のボタンを押すと、上空から光線が降り注ぎ、クラーケンを攻撃した。

 俺の姿を見つけたネプチューンが攻撃してきたがギリギリで盾で受け止めた。


『モウ遊ビハ終ワリダ!』


「それは俺のセリフ!」


 刀身が巨大な薙刀を持った分身体が振り下ろした。

 だが、地面は沈むもネプチューンは片手で受け止めた。


「本命はこっちさ!」


 四枚の白い翅と二枚の竜の爪のような翅が最大まで溜めたエネルギーの塊を放った。

 激しい爆発と砂煙が起こり、ネプチューンの体力を二割も削った。

 お、二割も削れた。無敵のように見えて神の属性を持っている攻撃は防げないみたいだな。これは大きな収穫だ。


『コノ体ニ傷ヲ……! 楽ニ死ネルト思ウナ! ン? 何ダ、コノ糸ハ……』


「言っただろ? これで終わらせるって!」


 気づかれないように張り巡らせた細くて鋭い糸の太さを全て変え、一気に引っ張り、ネプチューンを縛り上げた。


『ハルナ! 待たせたのう!』


 空に描かれた巨大な魔法陣から神秘的な光が放たれる。

 どうにか時間を稼ぐことが出来たな。


『これで終いじゃ!』


 巨大な魔法陣はぐるぐると回り出して、ネプチューンの周囲にいくつもの小さな魔法陣が絡まっていく。


『クラーケン! 一掃シロ!』


 クラーケンは醜い口を開き、光線を放つ。

 それに合わせて背面に蜘蛛の模様がある鏡を翳して、光線を吸収し、跳ね返したことで直撃したクラーケンは多く仰け反った。

 魔法陣は激しく光を放ち、ネプチューンが封印されていく。


『コノ程度ノ、貧弱ナチカラデ、我ヲ封印出来ルト思ウナ!』


 ネプチューンは力尽くで封印を破ろうと禍々しいオーラを撒き散らした。


「このままじゃ破られる……」


『安心せい。これも想定内じゃ。任せるぞ、クロノス』 


 目の間に現れた人物の顔を見て俺は目を見開き、思わず名前を呼んでしまう。


「ウィル……なのか?」


 白と黒が半々の髪色のウィルは微笑んだ。


「お久しぶりですハルナさん。色々と話したいことはあるけど、今はあいつの封印をしないと」


 大きな羅針盤が現れ、壊れかけていた魔法陣は修復され、封印されていく。


『……コノ屈辱ハ、忘レヌゾ!』


 小さく封印されたネプチューンはどこかに飛んで行ってしまい、クラーケンの体は崩壊し塵に変わっていく。

 暗かった雲の隙間から眩しい光が射す。


「終わったのか……?」


「はい、終わりました。ただ、最後の抵抗でネプチューンは何処かに行ってしまったけど」


「そうか。終わったのか……終わったんだ……!」


 緊張の糸が切れ、俺は地面に倒れ込みそうになった所をウィルが支えてくれて横にしてもらった。


「疲れた……本当に疲れた……テオクエの反動で体が動かない」


 ウィルの顔をじっと見つめていると、ウィルは頬を掻いた。


「僕の顔になにか付いてます?」


「いや、本当にウィルなんだなって思ってさ。イメチェン?」


「違いますよ。力を継承した時にこんな髪色になっちゃったんです。似合ってないですよね」


「意外と似合ってる……かも?」


「かもって……何で疑問形なんですか。それよりも、ハヤトさんたちがこっちに向かって来てますよ」


 ウィルに体を起こしてもらい、手を振って向かってくる颯音たちの姿が視界に入った。


「色々やることを済ませたら話そうぜ」


「はい。待ってます」



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