第423話
『小虫ちゃん~良い耐えたっぷりよ。でも、まだ戦いは終わりじゃないわよ。踏ん張りなさい』
「わかってる……けど、何か体がキツイ……」
ヘイムンダの共鳴技で街の全壊は免れたけど、ほとんど崩壊してしまった状況だ。
それに反動なのか。俺の体力もレッドゾーンまで削れて、全ステータス低下と色んな弱体のデバフに掛かっていた。疲れてしまった俺は地面に座り込んでしまう。
「春名! 後は俺たちに任せてくれ! ヒスイ、ギン、コクヨウ。行くぞ!【地獄の神狼】!」
「お前が休んでいる間に倒しておいてやるさ。リュウオウ、リュウテイ。本気を出すぞ【超古代竜の絆】……発動!」
颯音は黒い霧に覆われ球体状になり、中から鋭い爪が現れ、霧を切り裂くと、三色の首を持つ巨大な狼が現れた。
空中に舞い上がった海都は上空から、青い色の稲妻が直撃して激しく光り、どんどんと姿が大きくなっていく。巨大な翼が広がると、瞳が金色の青い竜と赤い瞳の茶色の竜が融合した、双頭の巨大な竜が現れた。
「海都のその姿……久しぶりにみたな」
俺は見上げながら呟いた。
「本気で倒す時しかしないからな」
「じゃあ行ってくるわ!」
颯音はそう言ってクラーケンに向かって駆け抜け、海都も大きな翼を広げて向かっていく。
クラーケンの触手攻撃を鋭い牙と爪で引き千切り距離を詰める颯音と、光線を放ちながら稲妻と岩石を飛ばす海都の攻撃でクラーケンの体力が徐々に削れていく。
二人が戦っている間に俺はシロガネが召喚してくれた【治癒蜂兵】で体力を回復させていく。
回復の速度が遅いけど、ちゃんと回復はしているな。
『ごめんなさい小虫ちゃん。私の力では呪いは解けないわ……』
「そうか。ニアもロンも無理そうか?」
『これは……大分複雑な呪いが掛かっているな。時間を掛ければ解けそうだが……』
『ごめんねハルナ……』
「大丈夫さ。ありがとうなヘイムンダ。ニア。ロン」
デバフを解除しよと三体に頼んだけど無理みたいだ。
この状態で戦うことになるのか。テオクエと共鳴をして打ち消せばいいけど。
『ハルナ、回復は終わったよ。もうボロボロなのにまだ戦うの……?』
心配そうに見つめてくるシロガネの頭を撫でた。
「ああ。……皆には俺の我儘で付き合わせちゃってごめんだけど、俺が力尽きるまで付いてきて欲しい」
『ハルナ一人じゃあ何も出来ないからね。力を貸してあげるよ』
「その言い方はひどくないか? コガネ」
『ハ、ハルナ……僕の力も使って……』
『ニアも!ニアも! ほらロンも言わなきゃ!』
『僕もかい? 使うかどうかはハルナが決めるのであって……それに僕のは発動までに時間が掛かるし……』
『ハルナ! 僕とアカガネのはいつ使うの!』
『クモガネ。こう言うのはタイミングってのがあるんだから待ってなよ』
皆の会話を聞いていると不思議と笑みが零れた。
デバフのせいで体はしんどいけどなんか元気が出た気がする。
『戦いの最中だというのに呑気なことを……』
「俺的には張りつめている空気よりかはこれぐらいの雰囲気でいいと思うけどな」
『そうそうディルロスは頭が固いんだからさ』
『これが終われば鍛え直してやるからなテオクエ。覚悟しろよ』
『うわあ怖い怖い……』
『先輩方、言い争いはそこまでにして』
「ウシャスラの言う通り続きは帰ってからにしろよな。テオクエ、頼む」
『はいよ』
「【共鳴技・オーバーリミットアクセル】」
下半身に金色の線が入り光り出した。
テオクエの共鳴技で俺に掛かっているデバフはどうにか相殺することは出来たみたいだな。本来なら全ステータスが上昇しているけどまぁ仕方ない。
「アオガネ。ロン。準備はいいか?」
『う、うん……!』
『僕もかい? ハルナが決めたのら従おう。それじゃニア』
「あ、ニアとじゃなくてロンだけで頼みたい。移動手段でニアは残していたい」
『なるほど。わかった』
アオガネとロンと共鳴をして、高圧で水を噴射させる靴と、白を基調にした蝶の首輪をつけた。
そして、白と赤の翅を展開しクラーケンに急いで向かった。




