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第420話

「ゴオオオオオオオ!!」


 クラーケンが雄叫びを上げ、全ての触手が一斉に動き出した。


「ニア、【黒蝶の誘い】を全展開だ!」


『わかった!』


 クラーケンの攻撃を躱しながら、ニアのスキルを使い、無数の黒蝶が街に広がっていく。


『準備出来たよ!』


「了解。【ラウンドフォース】!」


 防御スキルでクラーケンの攻撃を受け止める。

 あまり長くは持たないけど、それで十分だ。

 黒蝶を使い、街にいる人たちが巻き込まれないように、道中の草原に設置していた黒蝶に、一斉に転移させた。

 念のために設置していたけど役に立ったな。

 【ラウンドフォース】に罅が入ったか。攻撃力高過ぎだろ。そろそろ限界だな。


『ハルナ、街には誰もいなくなったよ』


「おし、俺たちも転移するぞ」


 【ラウンドフォース】が壊れる瞬間に俺も転移した。

 草原には転移させた街の住人と騎士たちが溢れていた。

 無事に転移出来ているな。


「春名~! 全員を転移させたのか?」


 駆け寄ってきた颯音が聞いてくる。


「おう。危険だし転移させた。怪我人はどう?」


「怪我人はそんないないけど……物凄い形相している人はいる」


 そう言って颯音は総団長さんを指さした。


「これは、お前たちがやったことなんだな……?」


「あ、いや……緊急だったんで事前に知らせなかったのは本当に申し訳ないと思っているんですが、最小限に被害は抑えてるんじゃないかと思いまして……」


「……そうだな。お前の迅速な対応なおかげで死人は出ていない。素早い対応、本当に感謝する。が、この能力があるなら何故、他の団員も同じように移動させなかったんだ?」


「あーそれは転移が出来る距離の制限があるのと、手札を見せたくなかった。のが、本音です」


「ふむ……まぁ今はそんなことはどうでもいい。あの化け物はなんなのだ?」


 総団長さんは聳え立っているクラーケンを見つめながら聞いてくる。


「俺が知っている情報なら。あいつは太古の災いクラーケン。この海原エリアの支配者ネプチューンの眷族。そして、俺たちと大分因縁があるモンスターです。あいつは、俺たちが倒します」


「倒す自信はあるのというのか……?」


「正直に言って自信はないです。でも、ウィルが見守った街を、この国を壊させない」


「かっこいこと言うじゃん春名!」


「よっ! ハルナ君、かっこいいよ!」


 ルラーシャと兄ちゃん、ルーシャさんの三人は何故か拍手をし出す。

 完全に冷やかされているな。


「ごほん。そんじゃ……行きますか。皆、出てこい!」


 俺は呼び出していないメンバーを呼び出した。


「なんて数のモンスターだ……! これが人族の力か……!」


「総団長さん、誤解しないで欲しいんだけど、こんな数をテイムしてるのこいつぐらいです」


「そ、そうなのか?」


 後ろにいる総団長さんと颯音の会話を聞き流して、コガネたちを黒球と一体化してもらった。


「春名、俺はここで待ってるよ。あれと戦える気がしない」


「わかった。兄ちゃんはここの人たちを守ってね。それとルラーシャもお留守番な」


「え!? 私も皆と一緒に戦いたい!」


「ダメだ。流石に危険すぎる。それにルラーシャを守ってやれる自信がない……」


 ルラーシャは不服そうに俯いてしまった。


「必ずあいつを倒すからここで俺たちの帰りを待っててくれ」


「……わかった。絶対にあいつを倒してね……」


「おう!」


 俺はルラーシャの頭をくしゃくしゃに掻き回した。


「それじゃ行ってくる」


「いってらっしゃい!」


 再びニアのスキル【黒蝶の誘い】を使い、街に残っている黒蝶に俺と颯音、海都とモレルさん、ルーシャさんの五人を一斉に転移させた。


「これは……ひどいな……」


 上空から見た街は半壊状態だった。ウィルの銅像もぐちゃぐちゃだな。

 屋敷の方は……街から離れているおかげで被害は出ていないようだな。


「ゴオオオオオオオ!」


 クラーケンは雄叫びを上げた。


「お前は必ず倒す! ハガネ、共鳴!」


 ハガネと一体化している黒球が大太刀に変わり刃先を向けて構えた。


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