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第419話

 海が静かになり海底の様子を確認。 モンスターを生み出していた触手は消えていなかったが体力は大分削れていた。

 ルラーシャの歌のバフで普段より更に威力は上がっていたんだけど、ディルの共鳴技を受けても耐えるか。相当、固いな。


『ハルナ、触手の様子が!』


 触手は小刻みに震えて、凄い勢いでどこかに消えていく。


『それ以上の範囲を見ると危険だから見ちゃダメ』


「……わかった」


 どこに向かっているのか確認したかったけどヒガネに止められ追跡をやめることにした。

 共鳴技を使い、ヒガネとの共鳴が解除され、視界が元に戻った。

 ヒガネとの共鳴は疲れるな……まあテオクエの方が疲れるけども。


『大丈夫?』


 鼻の付け根を押していると心配そうにヒガネが聞いてくる。


「ああ。これぐらい平気。それよりも、しばらくはヒガネと共鳴が出来ないから、索敵は任せてもいいか?」


『わかった。フードの中にいるね』


 肩にいたヒガネはフードの中に入り、頭だけ外に出した状態に落ち着いた。


『下からさっきの人が来るみたい』


「さっきの人?」


 視線を下に向けると総団長さんがこっちに飛んで来ていた。


「総団長さん。なんかありました?」


「……先程の爆発音はお前の仕業か?」


「あ、はい」


「即答か……はぁ~……」


 総団長さんは何故か深いため息を零した。


「その騒ぎで地上で混乱が起きた。が、お前の仲間のおかげでどうにか収拾することは出来たが……説明をしてもらうか」


「簡潔に説明すると、海底にいたモンスターを生み出していた触手に高威力の攻撃で撃退?した。以上」


「……その話は嘘ではないのだな?」


「モンスターの数が減っているのがその証拠です」


「確認するからそこで待っていろ」


「ええ……あの建物の屋上にいるんで、後で来てくださいよ」


「あの建物だな。後で行こう」


 総団長さんと別れて、ルラーシャと海都、ルーシャさんの三人がいる建物に向かった。

 建物の屋上にはルラーシャと海都、ルーシャの他に一人で戦いに行った颯音と、兄ちゃんと護衛に付けていたビートル隊が揃っていた。

 モレルさんはまだ戻っていないみたいだな。


「あ、ハルナだ! おかえりー!」


 俺を見つけたルラーシャが手を振ってくれた。


「春名、やるならやるって事前に知らせてくれ! 騎士たちが慌てだしたから説明するのが大変だったんだからな!」


「颯音が総団長さんに説明してくれたんだな。助かったわ」


「貸し一つだからな。それで、何をやったんだ?」


「ディルの共鳴技で巨大な触手を攻撃したらどっか行った。以上」


「巨大な触手? ……それってクラーケンの触手?」


「名前はなかったけど……」


 ゴーグル越しに見たけど触手には名前はなかった。ただの触手だ。ただの触手って言うのも変だけど。

 形状は似ている気はしたけど……まさかな。


「まあ騎士たちも到着するし、大丈夫だろう」


 シロガネが召喚した【空艇蜂兵】が街の上空に到着し、地面に魔法陣が現れて乗せていた騎士たちを下ろして、【空艇蜂兵】が消え、シロガネが俺の所に飛んできた。


「おかえり、シロガネ。問題なかったか?」


『少し体調を崩した人はいたけど、回復させたし、大丈夫っしょ』


「そうか」


 地上の方では騎士たちが到着して、忙しなく総団長さんが指示を出していた。

 あの様子だと、こっちに来るのが無理そうだな。


「ちょっと総団長さんの所に行ってくる」


 そう言い残して総団長さんの所に向かった。


「総団長さん!」


「ん? お前か。モンスターは確実に減っているようだな」


「それで結果は……?」


「……ああ。成果は十分だ。陛下には私から伝えておこう」


「ありがとうございます!」


「しばらくは街に滞在する予定か?」


「一旦、自分たちの拠点に戻って明日また来ようと思ってます」


「そうか。王国に来たら私の所を尋ねるがいい。話は通しておく」


「はい。あ、そうだ。黒い翅を解除するんで地上にいてくださいね」


「そうだったな。部下に伝えておく」


 総団長さんと別れて、皆がいる建物に向かっている最中にモレルさんに屋上に集まってほしいとメッセージを飛ばした。

 屋上に到着するとモレルさんの姿があった。


「全員揃ったところで、これからのことを話そうと思います。とりあえず、今日はもう遅いんで続きは明日にしようと……っ!」


 嫌な気配を感じて俺は海の方に視線を向けた。


「ヒスイ? ギン? コクヨウまで……どうしたんだよ!」


 颯音の近くにいた三体の狼も毛を逆立て、威嚇をしだした。


『ハルナ! 来るよ!』


 ヒガネが叫んだ瞬間、海面が盛り上がり巨大な何かが姿を現した。

 真っ赤に光る四つの目に鋭い牙が不規則に並ぶ大きな口、禍々しいオーラを放つ真っ黒な体。そして、八本の触手を持っていた。 


「太古の災いクラーケン……」


 消えそうな声で俺は巨人の名前を呟いた。



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