第418話
「総団長さん、街が見えてきましたよ!」
「そうみたいだな……!」
大幅に移動時間を短縮することが出来て、想定している時間よりも早く、サイゲルの街が見えてきた。
「総団長さん! 指示は!」
「団員は逃げ遅れている住人の救出と戦闘している団員の掩護を!」
「「はっ!」」
九人の騎士たちは分散して飛んで行った。
「俺たちは!」
「お前たちは自由に動いてくれ! その方が動きやすいだろう!」
「そんじゃお言葉に甘えて! 俺たちは一番高い建物に向かおう!」
総団長さんと別れて、この街を見渡せるほどに高い建物の屋上に降り立った。
「うわ……あっちこっちで戦闘が起きてる! 俺も戦いに行っていいか! 春名!」
「おう。なんかあったらメッセージ飛ばすわ」
「わかった。行くぞ、みんな!」
颯音は屋上から飛び降り、三体の狼と共鳴をして街に繰り広げた。
「海都はここからの狙撃で」
「海から来る奴を狙えばいいか?」
「任せるよ。兄ちゃんは……戦う?」
「俺でも勝てるのか……?」
「うーん……正直厳しいかな。まあビートル隊を付けるし、やってみたら?」
「やってみるか……」
俺は兄ちゃんのためにビートル隊の六体を呼び出した。
『主! お呼びで!』
「お前たちに任務だ。兄ちゃんの護衛を任せたい」
『畏まりました。全力で御守り致しましょう!』
「よ、よろしく……」
やる気満々なアインたちのキラキラした瞳に少し引いている兄ちゃんは地上に降りた。
「私は?」
「ルラーシャのには……お、モレルさんからメッセージが来た」
モレルさんからメッセージが来て、俺は簡潔に状況を説明し、直ぐにモレルさんとルーシャさんの二人が近くに転移してくる。
「遅くなってごめんね。ハルナ君、指示を頂戴」
「モレルさんには、避難している人たちが集まっている建物に行ってください。あと、三十分ぐらいで【空艇蜂兵】で運んでいる騎士たちが到着するんで、それまで援護をお願いします。ルーシャさんには――」
建物をよじ登って足が八本あるドロドロしたモンスターが来たが、武器を取り出したルーシャさんが切り捨て、地上に落下していった。
「おお、ルーシャさんやるぅ~」
「来るの知ってた、でしょ?」
ルーシャさんはゴーグルを指差す。
「ルーシャさんはここでルラーシャの護衛をお願いします。そんでルラーシャはここで歌ってくれ」
「歌えばいいんだね。わかった!」
「ハルナ君は?」
「俺? 俺はちょっと上空から様子を見る予定。戦況は見ているからなんかあったらメッセージを送る」
「ハルナ、気をつけて」
「おう。ルラーシャもな!」
ルラーシャの髪をくしゃくしゃに掻き回してから白と赤の翅を展開して上空に舞い上がった。
「さぁて、見ますか……ヒガネ、見る範囲を広げる」
『危険と判断したら止めるから』
「頼りにしてる。……【共鳴技・世界を取り巻く瞳】」
深呼吸をしてからヒガネとの共鳴技を使い、見下ろし型の視点に変わり、広範囲に索敵を行った。
色んな情報が一斉に視界に入ってきて頭が痛い……
『ハルナ、海の方から嫌な感じがするから陸の方は見なくていいよ』
「おう……」
ヒガネに言われた通りにしたら少しだけ頭痛が和らいだ。
『海底を見てみて。モヤモヤしている場所がわかる?』
「あーうん。見えた……なんかデカくない?」
海底に巨大なモヤモヤしたものが動いているのが見えた。さらにじっと見ているとモヤが晴れて巨大な触手が露わになった。
その先端からどんどんとモンスターが生み出されている。なんか見ていると鳥肌が立つ。
「あれをどうにかすればこのモンスターの襲撃が止まるってことか?」
『うーん……そこまでの判断は出来ないけど……』
「やるだけやってみるか」
ては言っても、クモガネとアカガネの共鳴技は切り札だから使わないとして、遠距離攻撃ならニアでも……ニアの共鳴技を使ったら総団長さんたちのバフも消えちゃうな。となると、ディルになるな。
俺はディルを呼び出した。
「ディルの共鳴技であの触手を吹き飛ばせる?」
『お前が外さなければ余裕だ』
「言ってくれるな。ヒガネ、サポートを」
『そこ、頼るんだ……まぁいいけど』
俺はディルと共鳴をして対物ライフルを構え、ゴーグル越しにサイトを覗き、狙いを定める。
「【共鳴技・ドラゴンブレイク】!」
引き金を引き、銃弾は真っ直ぐと発射され、分厚い海を突き抜け、大きな爆発音と共に水柱が噴き上がった。




