第42話
「ん……今……何時だ?」
近くに置いてあるスマホを見ると夜の六時だった。
「結構寝たな~。あれ、颯音がいない」
俺の部屋で布団を敷いて寝ていた颯音の姿がない。帰ったのかな?
部屋を出てリビングに向かうと、リビングの明かりはついていなく兄ちゃんの姿もなかった。
兄ちゃんの部屋を覗いても居なかった。出掛けてるみたいだな。
「ただいま」
玄関が開いて兄ちゃんが帰ってきたようだ。
「起きてたんだ」
「さっき起きた。どっか行ってたの?」
「颯音を家に送り行ってたんだよ。飯まだだよな?」
「まだだけどお腹空いてないし今はいいや」
「そっか、冷蔵庫から適当なの食えよ」
そう言って兄ちゃんは部屋に入っていく。
俺も部屋に戻ってベットに横になるとスマホが鳴り画面を見ると颯音からの電話だった。
「どうした?」
『お、春名も起きたんだな。装備取りに行くの一緒にどうかなって思って』
「風呂入ってからならいいよ」
『了解。じゃあ一時間後にアトラさんの店の前で集合な』
「はいよ」
俺は電話を切って風呂に入る。
「はぁ~……」
のんびり風呂に浸かっていると風呂のドアがノックされ開く。
「ちょっ! なんで開けるんだよ兄ちゃん!」
「なんでって風呂に入るためだけど」
「え……のんびり浸かりたかったのに……」
不貞腐れ気味に言い俺は肩まで浸かった。
兄ちゃんは俺の言葉を聞かずに風呂場に入り体を洗い始めた。
小さい時ならまだしも男二人は流石にそこそこ広くい風呂場だけど窮屈に感じるな。
「兄ちゃんと一緒の風呂って子供の時以来だよね」
「そうだな。一人で入るのが怖くってよく泣きついて一緒に入っていたな」
「忘れてよそんな昔の話し……」
「泣き虫だった春名がこんな大きくなって――」
「あーあーなんも聞こえません」
兄ちゃんの話しを遮って俺は風呂場を出て急いで着替え部屋に戻った。
早いけど俺はログインすることにして時間までヴェルガを探すことに。
最初に門に行ってみたけどヴェルガはいなく他の門兵に聞いたら今日は休みって言われた。ヴェルガの家に行ってみると何度呼びかけても反応はなかった。留守のようだな。
孵化について聞きたかったけど、急ぎでもないしまた今度にしよう。
「そろそろ行った方がいいな」
踵を返してアトラさんのお店に向かった。
「ん? なんだあれ」
大通りを歩いていると二人組の男性にしつこくパーティーに誘われている女性を遠くから見かける。遠目で他の人たちも見ている様子。
「俺たちとパーティーを組もうよお嬢さん?」
「俺らレベル30だしレベル上げ行こうぜ!」
「結構です!」
女性が断っても諦める気がない男性二人組。
「これ以上話しかけるなら……」
女性は自分の身長を越える程の大きい筒みたいのを手にする。
「あの武器……見覚えが……」
近くに行って女性の顔を見ると俺がゲーム初めて出会った女性――モレルさんだった。
俺はモレルさんの下に駆け出した。
「モレルさん、大丈夫ですか?」
「ハルナ君? なんでここに……」
「たまたま近くを通ったら見かけて。行きましょうモレルさん」
モレルさんの手を取って歩き出すと肩を掴まれた。
「おい、そのお嬢さんは俺たちが勧誘してんだ。邪魔すんじゃねーぞクソガキ」
「は?」
俺は肩に乗った手を振り払った。
「モレルさんは何度も断っている筈なんですが……しつこ過ぎでは?」
「あなたたちとなんかパーティーは組む気ないわ。パーティー組むならハルナ君とよ!」
「なんだと!」
「しつこいぞお前らー」
「そうよそうよ!」
周りの人たちも声をあげて二人組の男性を非難し始める。
「くそが……おめぇの顔覚えたからな!」
そう言って二人組の男性は走り去っていく。ようやく立ち去ってくれて一安心。
「ベーっだ!」
俺の後ろで下を出すモレルさん。
「あんま挑発しないでくださいね」
「そうね。それにしても助けてくれてありがとねハルナ君。それと久しぶり~」
「お久しぶりです」
「ようやく仕事も落ち着いて遊べるよ」
「あーそれでほとんど居なかったんですね」
「そうなの。これからハルナ君、暇?」
「……あ」
颯音との約束を思い出し時間を見ると待ち合わせ時間が迫っていた。
「やっば! モレルさんすいません友人と待ち合わせしているんで俺はこれで」
「そうなんだ……じゃまた今度誘うね」
「はい、それじゃ」
モレルさんと別れて急いでアトラさんの店に向かった。




