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第413話

 アオガネの近くに降りていくと、俺を見つけると目を輝かせてアオガネが頭を揺らした。


『ハ、ハルナ……変な流れを追っていたら…ま、街を見つけ、たよ?』


「そうみたいだな。見た感じ、まだプレイヤーはいないみたいだし、初発見の街かも。お手柄だぞ、アオガネ」


 俺はアオガネの頭を撫でまわした。


「そんじゃ新しい街を探索しますか。ルラーシャ、このカチューシャを一応つけてくれ」


 インベントリに仕舞ってあるケモ耳のカチューシャをルラーシャに渡した。

 アオガネに人気のない倉庫近くに浮上してもらい、人混みに紛れて街を探索した。

 しばらく街を探索していると隣から可愛らしいお腹の音が聞こえてきた。 


「さっきからいい匂いしているもんな。なんか食べるか? なんでもいいぞ」


「どうしようかな……」


 きょろきょろとお店を見渡すルラーシャはひとつのお店を選んで前に並んだ。

 ルラーシャが選んだのは焼いた生地に肉と野菜を挟んで食べる奴だ。


「これ、二つください!」


「はいよ」


 朗らかな女性が商品を渡してくれて、ルラーシャが受け取り、俺は代金を払った。

 一口食べたルラーシャは目をキラキラさせた。


「美味しい……! これ、初めて食べた!」


「あなた達は……旅の者かい?」


「あ、はい。さっき、この街に到着して」


「おおー! 旅の者かい! そりゃあ初めて食べるわね。この料理は、王国で広く伝わっている料理なんだよ」


「王国? ここは王国なんですか?」


 そう聞くと女性は目を見開いた。


「知らないのかい!? これはまぁ、驚いたわ……ここはトワイライト王国の西に位置する貿易の街サイゲル。大昔はここが首都だったみたいだけど、大津波の被害で今の場所に移動した歴史があるわ。当時から残っている屋敷がまだ丘の上にあるから見に行くといいわよ。王国で保護しているから中には入れないけどね」


 そう言った女性が指をさした方角に顔を向けた。


「そうなんですね。気が向いたら行ってみます」


 女性にお礼を言って俺たちは店を離れて再び街を散策。しばらく歩いていると街の中央広場に大きな剣を掲げている獣人の騎士の銅像が立っていた。

 銅像の顔にウィルの面影があって見入っていると隣のルラーシャがボソッと呟いた。


「……おじさんだけどウィルに似ているね」


「おじさん……おじさんか……」


 ルラーシャのおじさんって言葉がじわじわと来て、俺は笑いを堪えた。


「笑いすぎ……ハルナも思っているんでしょ? ウィルに似ているって」


「ごめんごめん。そうだな。俺が過去に行った時の大人のウィルに似ていると思う。銅像の近くに行ってみようぜ」


 俺とルラーシャは人混みを掻き分けて銅像の前に立った。

 台座の部分に掠れていて読めない文字が書いてあった。


「ルラーシャ、この文字は読めるか?」


「全然読めない。なんて書いてあるんだろう?」


「ほっほっほ。この銅像はのう、英雄フリューゲルス様じゃ。旅の者よ」


 ぼさぼさした白髪の老人が現れて銅像について話してくれた。


「フリューゲルス……ルラーシャ、屋敷に行くぞ」


「屋敷? ちょ、ちょっと!」


「おい! ワシの話はまだ終わっておらんぞ! たく、これだから若いもんは……」


 俺はルラーシャ手を取って女性に教えてもらった屋敷がある方に走った。

 街を出た俺たちは茂みに隠れてクモガネとアカガネを呼び出し、翅を展開して屋敷がある所に向かった。

 少し飛行すると屋敷が見えてきて上空で俺は立ち止った。


「ここが屋敷? 思ったていたより綺麗だね……ハルナ?」


「屋敷に潜入する」


「はい?! 潜入!? 警備の人がいるんだよ!」


「見つからないから大丈夫。【神氷の鱗粉】」


 クモガネのスキルを使い俺とルラーシャの姿を消した。


「声出したらばれるから静かに」


 俺はゆっくりと屋敷内に降下して近くの窓を確認したが閉まっていた。

 アカガネのスキルを使い、窓ガラスを溶かした。 


「ハルナ……やりすぎ……」


「あとで直すから問題ない。ほら、行くぞ」


 屋敷に潜入した俺たちは、記憶を頼りに俺は絵画のある部屋に向かった。

 

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