第412話
全ての授業が終わり、颯音と一緒に教室を出て話しながら下駄箱に向かった。
「昨日の緊急メンテが丸一日掛かるとはな。それにウィルの事は驚いた。ルラーシャは大丈夫かな?」
「ルラーシャの様子を見たかったのにタイミング悪すぎ」
「それな。大丈夫だといいけど……それにしてもウィルには帰ってきたら文句が言いたい。俺たちにも話して欲しかった」
「ウィルにも事情があったんだろうからほどほどにな」
苦笑しつつスマホを片手に緊急メンテの内容が書いている記事に目を通した。
「一部エリアの改修と追加か……」
「緊急メンテの内容? 公式サイトにはそれしか書いてないよね。メンテ終了が夕方六時だから色々と冒険したいな。この後、やるっしょ?」
「もちろん。夕飯を済ましたらログインする予定」
「それぐらいが丁度良いよね。了解」
颯音と別れて、寄り道せずに帰宅した。
兄ちゃんと一緒に夕飯を済ませると、丁度良い時間になっていた。
ゲームにログインをして拠点の家に入ると俺以外のメンバーは揃っていた。
ルラーシャの方を見ると笑みを浮かべて手を振ってくれた。
「よし、全員揃ったしこれからの事を話そうと思います。誰か一部エリアの情報を持っている人いる?」
そう聞いても皆は首を横に振った。
「いないか……」
「はいはーい!」
モレルさんが元気よく手を挙げた。
「モレルさん、どうぞ」
「はい! 海原の街で情報収集がいいと思います! 理由としては他のプレイヤーも情報が一切ない状態なんだし、情報を求めるなら街の組合所で情報を聞きに行くと思うんだ」
「なるほど……モレルさんの意見、採用で!」
「やった! よーし、早速街に転移しよっと」
皆が街に転移していく中でルラーシャが俺の袖を引っ張った。
「迷惑じゃなかったらでいいんだけど、私も街に連れていって」
「おう。船で行くか?」
「船じゃ遅いから……アオガネで行こ」
俺とルラーシャは砂浜の方に行き、アオガネを呼び出した。
「アオガネ、街まで頼むよ。アオガネ?」
名前を呼んでもアオガネは海をじっと見つめていた。
「海になんかあるのか?」
『うーん……う、海の流れが……へ、変な気がして……』
「あ、おい! アオガネ! 止まれ!」
アオガネは制止の言葉を聞かずに海に潜っていく。
「どうしたんだよアオガネ……ルラーシャ、ごめん。また今度でいい?」
「私も心配だから付いていく」
「わかった。海を泳いでいるアオガネは速いから、しっかり掴まっておけよ」
俺はクモガネとアカガネを呼び出して白と赤の翅を展開して、颯音たちに街の方を任せてアオガネを追いかけた。
「ハルナ、疲れてない?」
「これぐらい平気だけど……二時間も飛び続けているし少し休むか」
「休んだらアオガネを見失しなわない?」
「ヒガネで場所は分かるから問題ないけど……お、あそこの小さな島で休もう」
三日月の形をした小さな島を見つけ、砂浜に着地した。
砂浜に座り込む、ルラーシャにインベントリにしまっている料理を渡した。
「ありがとうハルナ。美味しい……」
ルラーシャの隣に座り、俺も軽く食事を取りながら、ヒガネを呼び出した。
「ヒガネ、アオガネが何処まで泳いでいるか分かるか?」
『アオガネ? えっと……随分遠くに泳いでいるけど、何してるのあの子は……』
「俺も知らない。アオガネがさ、海の流れが変な気がするんだって」
『ふーん……まぁ別にいいけどね。まだここで休むの?』
俺はちらっとルラーシャを見て、ヒガネに伝えた。
「もう少し休もうと思うけど、どうした?」
『それじゃあコガネたちを呼んで、皆で休もう?』
「そう言えば、あっちに行っている時は全員呼び出せてなかったな。皆、出てこい!」
俺はコガネたちを呼び出した。
「全員を呼んだのなんか久しぶりな感じがする。適当に休んでくれ」
コガネたちは各別行動で小さな島を楽しんだ。
「ハルナ、そろそろ行く?」
「おう。じゃあアオガネの追跡をしますか。飛ばすから口を開けるなよ」
コガネたちを回収して白と赤の翅を展開して島を後にし、そこからさらに二時間かけて飛行した。
『ハルナ、アオガネが止まっているみたい。それと、街なのかな? 凄い数の人の反応がする』
「人の反応? ……着けば分かるか」
共鳴したヒガネが教えてくれ分厚い雲を突き抜けると、広大なな街並みが広がっていた。
「こんなところに街があるなんて……」
「ハルナ、船着き場にアオガネがいたよ!」
「お、おう」
ルラーシャが指をさした方にいるアオガネの元に向かった。




