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第409話

「侵入者を排除せよ……!」


 雑音が混ざった声でウォルが叫ぶと数体のオークが全速力で向かってくる。俺とウィルが一体ずつオークと対峙し、残りはオピオマリスさんが対応してくれた。

 対峙しながらウォルを見ていたが動く様子が無い。様子見でもしているのか?

 オークの攻撃を盾で弾いて、体勢を崩した隙にコガネと共鳴をし、部屋全体に糸を伸ばし、オークたちの動きを止めた。


「その糸を使わせてもらうぞ!」


 オピオマリスさんが糸に指を触れると炎が糸を沿ってオークに向かい燃え上がった。


「ハルナの攻撃は多彩だな。他にもモンスターの仲間がいるのか?」


「全部で二十体です」


「二十!? それは凄いな……」


「そんなことよりも動きそうですよ」


 様子見をしていたウォルが雄叫びを上げると新たなオークが数体現れた。


「雑魚のオークをいくら倒しても無駄のようだな。一気にあいつを倒すとしようか」


「待ってくださいオピオマリスさん。あいつは……ウォルは僕がなんとかします」


 ウィルは真っ直ぐ真剣な瞳をオピオマリスさんに向ける。


「あのモンスターは知り合いなのか?」


「はい。僕の大事な家族です」


「家族か……」


 オークが再び突撃してくる。


「雑魚は黙ってろ!」


 オピオマリスさんが地面を思いっきり踏むと、前方の床が盛り上がりそこから炎が溢れ出してオークたちを遮った。


「あの状態になった者は元の姿に戻すことは出来ない。唯一の救いは倒して楽にさせることだけだ」


「方法はあります。だから、力を貸してください。オピオマリスさん」


 頭を下げるウィルを見てオピオマリスさんは溜息を零した。


「雑魚は俺が何とかする。あまり時間を掛けるなよ」


 そう言ってオピオマリスさんはオークが俺たちの方に近づけさせないようにしてくれた。


「俺は何をすればいい?」


「詠唱が終わるまでウォルの相手をお願いします」


「了解。ヒガネ!」


 俺はヒガネを呼び出してウォルの弱点を確認した。


『うわ……なんなのあいつ……体力も耐久力もあって、属性耐性に状態異常耐性もあるんだけど……ハルナも見てる?』


「見てるよ、面倒くさい――」


 ウォルを観察していたら、目の前から姿が消えた。


『振り返り盾でガード! 早く!』


 ヒガネに言われた通り振り返って盾を構えると重たい剣撃が盾に伝わり俺は壁まで吹き飛ばされた。

 俺は糸を伸ばして体勢を整え、視線をウォルに向けた。


『ハルナ、糸は巻き付けておいたよ!』


「サンキュー、コガネ!」


 ウォルに絡みついた糸を一気に引くが力が強すぎてびくともしない。急いでアカガネを呼び出し、共鳴し片側が長い双円錐型の赤い翅を展開して最大出力でウォルを引いて壁までぶん投げた。


「オオオオオオオオ!」


 ウォルが雄叫びを上げると背中から大きな腕が二本も生えた。本気のようだな。

 コガネを戻してクモガネを呼び出し、白と赤の翅を展開した。

 地面に落ちている武器を持ったウォルが目にも止まらない速さで一気に距離を詰めてくる。二枚ずつ重ねた赤い翅をウォルに飛ばした。

 ウォルは武器で赤い翅を受け止め、動きが止まっている間に白い翅を四枚で追撃。二本の武器が弾けて赤い翅が直撃し煙が立ち込めた。


『ハルナ、ダメージが通ったよ!』


 ヒガネの報告でウォルの体力が少し削れているのが確認した。

 クモガネとアカガネの攻撃は神の力が宿っている。流石にその耐性はなかったようだな。

 ダメージが通ることは分かったが、倒すことが目的じゃない。早くウィルの詠唱が終わってくれ。


『ハルナ、あいつの様子が変だよ。気を付けて……』


 煙が晴れるとウォルの体から赤黒いオーラが溢れ出し、背中が盛り上がり大量の手が生え、物凄い速さで襲ってくる。

 俺はヒガネの的確な指示で十六枚の翅をすべて使い迫りくる手を捌いていく。だが、数がさらに増え、捌きれず、手が無防備なウィルに向かった。

 手が差し迫った瞬間、炎が手を焼き尽くした。


「おーい、抜かれてるぞ!」


「助かりました!」


 オピオマリスさんが助けに入り、ウィルに攻撃は届かなくて俺は内心安堵した。

 ウォルの攻撃に集中できるようになり、しばらく防いでいたら、ウィルの方から激しい光の柱が起きて、俺は視線を向けた。


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