第408話
二人分の足音が響く洞窟を真っ直ぐ進んで行くと扉がない鉄壁が現れた。
周りには開閉装置みたいなものはなかった。
「こじ開けるんで離れてください。クロガネ」
俺はクロガネを呼び出すとオピオマリスさんが興味津々に見ている。そんなオピオマリスさんを無視して俺はクロガネに話しかけた。
「クロガネ、この壁を壊せるか?」
『この壁……?』
てくてくと近づいたクロガネは鉄壁を観察し始めた。すると、クロガネの体色がみるみるうちに黄緑色に変わっていく。クロガネのスキル【錬金】で鉄壁の成分を調べて適切な体に変わったんだな。
『……ハルナ、共鳴』
「おう」
クロガネと共鳴をして右腕に黄緑色の巨大なドリルを装着した。
「【共鳴技・ブレイカードリル】!!」
激しい音とともに火花が散って鉄壁に罅が入った。罅は広がり鉄壁に大きな穴をこじ開けた。
「ハルナは面白い獣人だな! モンスターを仲間にしている奴は初めて見たぞ!」
「それはどうも。先急ぎますよ」
大きな穴から侵入すると、岩肌だった洞窟が全面機械的な通路に変わっていた。
――侵入者! 侵入者! 侵入者を排除せよ!
けたたましいほどサイレン音が鳴り響き、赤いランプが点滅し出すと、武器を持った豚頭のオークが数体現れた。
「敵が現れたな! 先を急いでいるんだ、消えてもらうぞ!」
オピオマリスさんは深く呼吸をして口を開けると真っ赤な炎を吐き、逃げ場のない通路でオークたちが一瞬で灰と化した。
「すっご……流石ですね」
「これぐらい楽勝だ」
襲ってくるモンスターを次々となぎ倒して、しばらく進むと仕切られた部屋を見つけて、その中の一つに椅子に座らせられている人を発見し、オピオマリスさんが扉を蹴り壊して中に入った。
頭に被せられている麻袋を外すと、頭から血を流しているウィルだった。
俺はシロガネを呼び出して、ウィルの治療を始めた。
「うっ……ハルナ……さん?」
「大丈夫か? 今、シロガネに治療してもらっているから」
「来てくれたんですね……信じてました」
「そうか。大分、強くなったお前がここまでやられるとはな」
「反撃しようとしたけど、力が出なくて……」
「これは珍しい石材で作られた腕輪だ」
オピオマリスさんの言葉でウィルの腕に見たことが無い腕輪に気が付いた。
「これの素材になっている神海石は限られた場所でし取れない物だ。神海石には装着した者のスキルを封印する効果がある。これのせいだろう。触るぞ」
そう言ったオピオマリスさんは腕輪に触れ、強く握りしめて粉々に砕いた。
「まぁ皇族の者なら簡単に壊せるのが弱点だけどな」
「こちらは……オピオさん? でもなんか違うような……」
「俺はオピオマリスだ。今回は不問にするが気を付けろよ?」
「はい、気を付けます……」
俺はウィルにウォルのことを尋ねる。
「ウィル、ウォルが何処に行ったのかわかるか?」
「ウォルは多分、僕と別の部屋に連れて行かれたんだと思います。助けに行かなきゃ……!」
まだ回復しきっていないウォルは無理矢理に体を起こそうとしたから、俺は腕を掴みウィルを背負うことにした。
「重っ……回復するまで背負われてろ」
「ハルナさん……」
「オピオマリスさん、前衛を任せてもいいですか?」
「仕方ねぇな。任せておけ」
ウィルを背負って部屋をしらみつぶしに探したがウォルの姿は何処にも居なかった。
「結構奥に来たが、あとはこの部屋だけだな」
「そうですね」
「ハルナさん、もう大丈夫なんで降ろしてください」
『大分回復はしたけど、あんまり無茶はしないでね』
ウィルの体力は半分以上回復はしていて俺はウィルを降ろすことに。俺たちは扉の前に行くと勝手に扉が開きだした。
「罠かもしれないから警戒しろよ」
俺とウィルは頷き慎重に進むことに。しばらく進むと広い空間に到着した。
――排除せよ。排除せよ。排除せよ……
上空からアナウンスが流れると床から数体のオークが現れたが、どれも異形な姿をしていた。
そして、アナウンスが終わると上空から何かが地面に落ちて砂煙が舞い上がる。煙が晴れるとそこには禍々しく醜い姿にされたウォルが立っていた。




