第407話
『こんなところで獣人に会うとは……お前たちは何者だ?』
ドラゴンは直接頭に語り掛けて見下ろしている。
「俺たちは誘拐された弟と街の住人を追っていたらここに辿り着いたんです」
『誘拐された、だと? 嘘ではないのだな?』
「大事な弟が攫われたんです。一刻も早く助け出したいのに嘘をつく余裕なんてない」
『ふむ……』
ドラゴンはゆっくりと俺たちの前に降りてくると、光を放ちどんどんと小さくなり人の形に変わっていく。
光が収まると、黒髪の少年の姿に変わり、動きやすい服装だけどどこか高級そうだ。
「久方ぶりの人型になったな~……」
少年の姿に変わったドラゴンを見ていると小声で颯音が耳打ちしてくる。
「なぁ、どことなくさ。オピオさんに似てない?」
「うーん……言われてみれば目元とか似ている気がするけど……」
「名前聞いてみれば?」
「それもそうですね」
俺はドラゴンの前に出た。
「あの、名前を聞いても宜しいでしょうか」
「俺の名前か? 俺はこの広大なる海を統治している皇族の一人、オピオマリスだ」
「オピオマリス……」
オピオさんと名前がにているけど本人かどうかわからないな。
「俺の名前が気になるのか? 」
「あ、いえ……かっこいい名前だなって思って」
「この名前の素晴らしいさに気付くとは! 気に入った!」
オピオマリスというドラゴンは上機嫌に背中を叩いてくる。少し痛い。
「そうだ。お前の名前も聞かせてくれ」
「えっと、俺は春名で。あっちが颯音。そっちの女性がモレルです」
「お前がハルナ。で、ハヤトとモレルだな」
二人の所に向かい握手を交わすオピオマリスさん。
「オピオマリスさんはなんでここに?」
「俺か? この地域で邪悪な魔力を感じてな。確認しに来たら初めて見る島で、散策したらお前たちを見つけたところだ。島を見渡した限り、ここが一番怪しい。調べるんだろう? 付き合うぞ」
「オピオマリスさんが居れば心強いです」
「そうかそうか。俺は最強だから、な!」
オピオマリスさんを仲間にし俺たちは大きな扉をあけて中に侵入し、静かな施設内を進んでいった。
「施設の中は意外と広いな」
「オピオマリスさん、多分こっちに地下に行く階段があると思います」
「地下に行く階段? 何故、そんなことを知っているんだ?」
「ここと似た施設に来たことがあって、そこと作りがほぼ一緒なんです」
「なるほどな。行ってみればわかるか」
迷いなくしばらく進んで行くと目の前に地下に行く階段を見つけた。
「おお、本当に階段があったぞ! 中の構造が同じなら、この先に何が待ち受けているのか知っているんだな!」
「この先には確か洞窟に繋がっていて、枝分かれした道があって、その先にはクラーケンの触手との戦いがあります」
「クラーケンの触手だと……!」
険しい表情を浮かべるオピオマリスさん
「クラーケンは俺たち皇族の者が先祖代々に封印してきた怪物だ。現れるはずが無い」
「なるほど……まぁ、地下の作りまでが一緒の可能性も無いのであまり気にしないでください」
「それもそうだな」
壁の隙間に等間隔に置かれている蝋燭の明かりを頼りに階段を下りていくと少しずつ異臭がしてくる。
「颯音とモレルさん、鼻は大丈夫?」
「私はまだ平気だけど、ハヤト君の顔が……」
「ヒスイたちのスキルの影響で大分キツイ……臭すぎ!」
「おい、声を下げろ。気づかれたらどうすんだよ」
「ご、ごめんって……」
「ヒスイのスキルに風を操るスキルなかったっけ?」
「あ、あったわ。あまり使ってないから忘れてた」
スキルを使うと颯音の周りに風が起こり顔色がよくなった。
慎重に階段を下りていくと洞窟に繋がり、少し歩くと牢屋らしき場所を見つけ、何人か牢屋に入れられていた。
「貴方達は……」
「俺たちは救援隊です。拉致された住人はこれで全員ですか?」
俺の言葉を聞いた住人たちが喜びで涙を流していた。
「副団長のウォルター様と少年が不気味な奴らにこの先に連れていかれました……」
「……颯音とモレルさんは住人たちの救出を。オピオマリスさんは俺と来て欲しいです」
「最後まで付き合おうじゃないか」
住人たちを二人に任せて俺とオピオマリスさんは先に進んだ。




