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第406話

 俺たちの足音に気が付いたのか祈っていた大人のウィルが立ち上がりこっちに歩いてくる。


「よく来てくれた。私はこの街を治めるウィリアム・フリューゲルスと申す」


「春名です。こっちが」


「颯音です」


 俺と颯音は大人のウィルと握手を交わした。なんか変な感じだけど。


「どうして俺たちを呼んだですか?」


「二人を呼んだ理由は二つ。まずは、ハヤト殿。部下から話は聞いている。この街に出現したモンスターの討伐に協力してくれて感謝する。おかげで被害を最小に抑えることが出来た」


「それなら良かったです」


「ここからが本題だ。モンスターを討伐しているときに、ハルナ殿の弟君と私の弟……ウォルターがモンスターによって攫われてしまった。部下の話だと他にも何人か住民も攫われてしまっている。私の騎士団に所属している魔術師に追跡魔法で居場所を特定しようと試みたが見つからなかった……どうか、攫われた人たちの救出に協力をしてもらいたい」


「協力はしましょう。けど、時間がないから救出しに行くのは俺たちだけで向かいます」


「二人だけで行くと言うのかい? 流石に無茶だ」


「俺たちに任せてください」


 俺は大人のウィルの瞳を真っ直ぐと見つめた。


「……初めて会う方なのに信じてもいいと思えるのは何故だろうか……攫われた人たちを見つける方法あるのか?」


「やり方は秘密だけど、確実なはある」


「そうか。なら二人を信じて任せよう」


「ありがとうございます。善は急げだ、行くぞ颯音!」


「おう! モレルさんはどうする?」


「一応聞きに行くか」


 俺と颯音は駆け足で教会を出てモレルさんの所に向かう。


「二人とも急いでどうしたの?」


「これからウィルと攫われた人たち助けに行くんだけど、モレルさんも行きます?」


「勿論行くよ! 早く助けないとね!」


「了解。颯音、モレルさんを乗せて行ってくれ」


「分かってる。ヒスイ!」


 颯音はヒスイを呼び出し、俺はアカガネとシロガネ、ヒガネの三体を呼び出すと周囲がざわめきだし、遅れてきた大人のウィルも目を見開いていた。


「これは……! あなた達はいったい……」


 俺たちは顔を見合わせる。


「ただの旅の者さ」


 俺は共鳴して白と赤の翅を展開し、モレルさんをヒスイの背に乗せ颯音も跨り、空に舞い上がった。


「で、ウィルはどこにいるんだ?」


 颯音に言われて俺はインベントリから眷族の指輪を取り出すと、北の方に光が伸びた。


「あっちみたいだ。行こう」


 俺たちは光が指している方に向かい、しばらく海上を飛行していると、前方に陸地が見えてくる。


『ハルナ。陸地が見えたけど、島っぽい』


「光が島を指しているみたいだ。颯音、モレルさん。一旦島に降りる」 


「「わかった!」」


 俺たちは速度を落として島の海岸に降り立つ。海岸の先は鬱蒼とした森が広がっていた。 


「光は森の中に向いているな。ヒガネ、森の中はなんか見える?」


『森の中? うーん……なんか建物みたいのはあるけど、中が見えない。あとはモンスターがいるぐらい?』


「了解。ヒガネからの情報で森の中に建物があるみたいだから、とりあえずそこに向かおうと思う」


 そう告げると二人は頷いて森の中を進んだ。


「メェー。メェー」


 森の中を進んで行くと羊のような鳴き声が聞こえてくる。俺は気になって辺りを索敵した。


「羊のモンスターの正体はシルクシープだって」


「シルクシープ? 初めて海原エリアを冒険したときに偶然見つけた島にいた奴?」


「そんなこともあったね。懐かしい……」


「森の中に建物……シルクシープ……ここって悪魔の島……?」


 俺は思ったことを呟いた。


「春名も思った? 俺もそんな気はしている」


「それだと昔から悪魔の島があったってことなの?」


「うーん……それは分からないけど、とりあえず建物まで行けば分かると思う」


「そうね。向かいましょう」


 シルクシープしかいない森を進み、建物の前に到着した。

 鉄製の柵に囲まれている、周りの風景に似つかわしくない建物があった。


「記憶が曖昧だけど、こんな感じの建物だった気がする」


「うん。こんな感じだったよね」


「てことは、幽霊系のモンスターと、最奥にはクラーケンの触手があるってことか」


「幽霊系のモンスターいるの?! 行きたくない……」


「指輪の光がこの建物を指しているんだから行くぞ」


 渋っている颯音を連れて柵の前に行くと、強風と共に羽ばたく音が聞こえ、見上げると頭上に現れたは薄い青色の鱗を纏っているドラゴンだった。










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