第405話
過去に来た俺は、先に来ている颯音にメッセージを飛ばして状況を確認した。
直ぐに颯音から返事が来て、「直ぐに街に来てくれ!」と返事が来て、設置したポータルを撤去し借りた部屋の鍵を返却しに受付に向かった。
「店主さん、鍵を返却で」
「お前さん。今、町を出ない方がいい! 町の外はモンスターで溢れているぞ!」
「モンスターが……この町は安全なんですか?」
「ああ。町を覆うほどの強力なモンスター除けの結界が張られているから安全だ」
「ここ以外の町でも?」
「ん? ああ、基本的に結界があるから安全だ」
「なるほど……」
「お前さんは武器も持っていないようだし町に留まりな!」
慌てている店主に俺は落ち着いた声で答えた。
「俺は平気なんで店主は町から出ないでください。ついでにここら辺のモンスターも倒しておきますね!」
そう言って俺は受付に鍵を置いて宿屋を出ると空は灰色の雲が広がっていた。
周囲の目を気にせずに町中でクモガネとアカガネ、ヒガネの三体を呼び出して翅を展開して上空に舞い上がって見下ろした。
周囲にはモンスターもうろうろしていて町に入ってこないように武器を持っている人たちがモンスターと対峙をしていた。
「……ヒガネ、颯音たちの位置は分かるか?」
『ちょっと時間掛かるけど探してみる』
「その間に周囲をある程度倒してから皆の所に向かうぞ」
ゴーグルを装着して俺はモンスターに狙いを定め、赤い翅を分離させてモンスターたちに奇襲を仕掛け、次々に倒していく。
『ハルナ、反応見つけたよ。この先の街にいるみたいなんだけど……』
「言い淀んでどうした? ヒガネ」
『……ハヤトとモレルの反応はあったんだけど、ウィルの反応が街に無いの……』
「……わかった。モンスターの数も減ったし街に急ごう」
赤い翅を回収してから街に急いで向かった。
しばらく飛行すると大きな街が見えてきて、外周を囲っている城壁の周りにはモンスターが沢山の湧いていた。
『ハルナ、建物の屋上でハヤトが手を振っているよ』
視線を地上に向け颯音を見つけた俺は颯音の近くに降り立った。
「来るのが遅いよ! 春名が来るまでに色々あったんだからな!」
「ウィルが居ないんだろう? 説明をしてくれ」
「モレルさんが教会前にいるから向かいながら話すよ」
俺と颯音は地上に降りてモレルさんが待っている教会の前に向かう。
「春名が来る二時間前ぐらいにこの街に着いたんだ。その後、ウィルに街の案内を頼んで巡っていたら警報が鳴り響いて、街にモンスターが現れたんだよ!」
「街に!? 街にはモンスターを防いでくれる結界があるんだろう?」
「結界は今でもこの街を覆っているよ。だけど、突然街に湧いたんだ。騎士団が総出して対処してくれたんだけど、そんな時に偶然ウォルと出会ったんだ。流れでモンスターを一緒に倒していたら、モンスターが何故かウィルとウォルの二人を連れ去ったんだ。途中まで追ったんだけど黒い煙のせいで見失った。ヒスイたちの鼻でも追えなくて春名を待つことにしたんだ」
「色々ありすぎだろ! 俺が早めに来れていたら……」
「春名のせいじゃないんだからあんまり気にすんなよ」
「わかってる」
街中を走り、モレルさんが待っている教会に到着。モレルさんの姿を探していると、モレルさんは怪我人の看病をしていた。
「モレルさん! お待たせしました!」
「ハルナ君! 待ってたよ! 話は聞いている?」
「はい。経緯は颯音から聞きました」
「そう。なら話が早いね。さっき、この時代のウィルが来たんだ。話があるから教会で待っているって」
「教会ってここの?」
「うん。私はまだ看病しているから二人で話を聞いてきてくれない?」
「わかりました。モレルさん、ポーション渡しておきますね」
「ありがとう」
モレルさんにポーションを渡して、俺と颯音はこの時代のウィルの話を聞きに教会の前に向う。教会の前に立っている兵士に話かけた。
「すみません。ウィル……ウィリアム様に話があると言われて来たんですが」
「話は聞いている。領主様なら祭壇でお待ちだ」
「ありがとうございます」
兵士に通されて祭壇に向かうと、この時代のウィルが神像に祈りを捧げていた。




