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第402話

 バイトが終わり少し遅れてゲームにログインした。 

「バイトお疲れさん、春名」


 拠点の家の壁にもたれかかって颯音が待っていた。


「先に行ってたんじゃないのか?」


「春名に情報共有しよと思って戻ってきたんだよ」


「情報共有? なんかあったの?」


「俺たちが宿泊している町から、海都と雫恩、ウィルの三人が馬車でウィルの屋敷がある街に移動中。で、モレルさんとルーシャさんは急用で先にログアウトしたんだ」


「馬車で? 一緒に移動した方が早いと思うんだけど……了解。じゃあ俺たちも行くか」


 設置したポータルを触れて俺と颯音は過去に移動した。

 借りた部屋に設置したポータルを解除してから廊下に出て、階段を降り受付にいる女将さんに話しかけた。


「女将さん。何日か遠出するんで一旦鍵を預かってください」


「遠出かい? 最近モンスターが活発になっているみたいだから気を付けんだよ。それと遠出の間は部屋の掃除はどうするんだい?」


「お願いしてもいいですか? あと、宿泊日が過ぎてしまったら次の人に部屋を貸して上げて構いません」


「わかったわ。いってらっしゃい」


 鍵を渡して俺たちは宿屋を後にした。町の外に出た俺たちは道を外れ、人気のない場所に移動した。


「で、ウィルたちはどっちに行ったんだ?」


「あの街道を進んで行ったよ。ウィルが言っていたんだけど一日掛かるから途中の町に寄って泊まるらしいよ」


「そうなんだ。よし、ウィルたちを追いかけよう」


「馬車の足は遅いから直ぐ追いつくけど、途中合流は怪しませるかな?」


「可能性はあるかも。少し離れたところで見守っているか。到着したら海都にメッセージを送れば大丈夫かな」


「了解」


 俺はクモガネとアカガネを呼び出して白と赤の翅を展開してからヒガネも呼び出してゴーグルを掛けた。颯音はヒスイの背に跨り、馬車を追いかけた。

 しばらく飛行をしていると五体の群れの鳥型のモンスターが俺たち向かってくるのが視界に入った。


「春名! あのモンスター倒していいか!」


「いや、俺がやる」


 四枚の赤い翅を操り、回転させて打ち出した。

 モンスターたちは赤い翅を高速で飛行して避けようとしているが、赤い翅は追いついていく。赤い翅で上手く誘導したモンスターを前もって展開していた白の翅で貫いてモンスターの群れは全滅した。


「やってることエグっ! 赤い翅だけで倒せるのに……」


「ただの操作具合を確かめただけだ。素材を回収して向かうぞ」


 地上に散乱した素材を回収してからその場を離れ、馬車を追いかけた。

 二時間程飛行してようやくウィルたちが乗っている馬車が見え、上空で滞空して様子を見ながら海都にメッセージを送った。


「海都からのメッセージだ。町で合流しようだって」


「町での合流なら怪しまれないね。了解」


 俺たちは馬車を追い越して先に町に向かうことした。難なく町に入り、酒場で待っているとようやく三人が姿を見せた。


「こっちこっち!」


 颯音が手を振り三人が俺たちの姿を見て近寄ってくる。


「お待たせしてすいません」


「大丈夫だよ。馬車の旅はどうだった?」


「どこか懐かしくて楽しかったです。カイトさんは慣れない馬車で疲れてしまいましたが……カイトさん、シオンさん。僕の我儘に付き合ってくれてありがとうございました」


「俺も乗ってみたかったから気にしなくていい。ただもう二度と馬車は乗らねぇ……尻と腰が痛ぇ……」


「座って休んでください海都さん」 


 海都と雫恩が向かい側の席に座り、ウィルは俺の隣に座った。


「皆さんはまだ続けるご予定ですか?」


「うーん、大分移動で時間使っちゃったしな~あとどのくらいで屋敷がある街に着くんだ?」


「特に問題なければ半日ぐらいで着くと思います」


「なるほど。じゃあ少しぶらぶらしてから落ちようかな」


「じゃあ俺も適当にぶらついているわ」


「海都と雫恩はどうする?」


「俺はなんか疲れたから落ちるわ。雫恩も明日早いし寝る時間だろ?」


「ええ。私も今日はこれぐらいにしますわ」


「了解。宿屋を取ってポータルを設置するか」


 酒場を移動して俺たちは安い宿屋を見つけて一部屋借りることにした。

 ポータルを設置したら海都と雫恩はログアウトしていき、いつの間にか颯音は姿を消していて、俺とウィルは町を散策することにした。


「なんか武器を持った兵士が多いな」


「強敵なモンスターが現れたみたいで、それでこの町に集まっているそうですよ。道具屋を見てもいいですか?」


「おう」


 ウィルと一緒に道具屋に入り店内を見回った。


「なんか欲しいのあんの?」


「うーん、特にはないけど、こういうの……見てる……のが……」


 ウィルの目が見開いていることに気が付いて目線の先を追うと、カランコロンと音を鳴らしながらドアが開くと、重装備を来た兵士が入ってきた。


「ウォル……」


 ウィルはか細い声でウォルの名前を呼んだ。


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