第401話
村に戻ると颯音たちと村長のソクテさんと住人たちが出迎えてくれた。
「よくぞお戻りに! お二人が戻られたということはドラゴンを討伐されたのですね!」
「まぁそんなところです。近くに脅威になりそうなモンスターもいないからこれでもう安全だと思います」
俺の言葉を聞いた住人たちは歓声を上げて喜んでいた。
「おお! そこまでしてくれたのですね! 皆様はこの村の英雄です。この御恩は一生忘れません。何かお礼を! そうだ! 依頼をするために集めた依頼金をどうかお受け取り下さい!」
村長のソクテさんはお金が入った袋を渡してくるが俺は断った。
「このお金は受け取れません。このお金は村の復旧に使ってください」
「では、何かお礼を……!」
「それじゃあ……空いている家とかあります? 今度来るときに拠点として使わせてほしいです」
「それでよろしいのですか? そう仰るのなら。空いている家を綺麗にしておきますので、この村に立ち寄りましたら自由にお使いください」
「ありがとうございます。それじゃあ俺たちは一旦帰ります」
俺は白と赤の翅を展開して海都を背負い、颯音は再び三頭狼に姿を変えてモレルさんとルーシャさん、雫恩の三人を乗せて村を後にして、ウィルがいる町に戻った。
町の近くに到着した俺たちはケモ耳のカチューシャを付けて町に入り、ウィルに付けていた【偵察蜂兵】を一体を呼び寄せてウィルの居場所に案内してもらい、しばらく歩いていると猫の看板が目印の宿屋前に到着した。
「いらっしゃい。食事かい? 宿泊かい?」
宿屋の入ると恰幅の良い女性が受付カウンターに立っていた。
「今日宿泊している仲間のウィルって子がいると思うんですけど、何号室か教えてください」
「お仲間かい? ……アイナ、ちょっと来な」
「なぁに~?」
カウンターのおくから小学生ぐらいの女の子が姿を見せる。
「この部屋に宿泊しているお客さんに確認をしてくれるかい? あんた名前は?」
「ハルナって言います」
「ハルナかい。アイナ頼んだよ」
「は~い」
女の子が階段を上っていき、少しすると女の子と一緒にウィルが下りてきた。
「ハルナさん! みんなと合流出来たんですね!」
「遅くなったなウィル」
「どうやら知り合いのようだね。違っていたら衛兵に突き出すところよ」
「あはは……すいません」
「謝るぐらいなら部屋を借りな。その人数だと狭いが四人部屋を二部屋で構わないかい?」
「それでお願いします。とりあえず一週間でお願いします」
「そんなに宿泊してくれるのかい!? それなら少しサービスをしようじゃないか」
「ありがとうございます」
「じゃあ僕は荷物片付けからそっちに行きますね」
「おう」
ウィルは階段を駆け上がっていき、俺たちはお金を出し合って宿泊代を支払った。
「これが鍵。無くしたら罰金になるから気を付けなよ」
鍵を受け取って部屋に向かう。片付けを終えたウィルが部屋の前で待っていた。
ドアを開けると二段ベッドが二つ置いてあって、真ん中に木製のテーブルが置いてあるだけの部屋だった。
ちょっと狭い部屋に全員を集めてこの後の事を話し合った。
「時間も時間なんで、一旦現代に戻ってログアウトしようと思う。皆はどうする?」
「俺も落ちようかな。明日学校だしね」
「右に同じく。雫恩も落ちるだろう?」
「ええ。流石に眠くなってきましたわ」
「私は明日休みだからもう少し続けようかな。ルーシャはどうする?」
「私も少しだけ続ける」
「了解です。この部屋にポータルを作るんで現代に戻る時に使ってください。ウィルはどうする?」
「僕は……今日はここで泊って行きます。誰か一人はいないと怪しませるでしょ?」
「そうか。なんかあったら直ぐに現代に戻るんだぞ」
「分かってます」
俺は壁側に手を翳して、青い光を放つポータルを作り出した。
「じゃあモレルさんルーシャさん、また明日! ウィルも明日な!」
俺と颯音、海都と雫恩の四人はポータルに触れた瞬間光に包まれて、気が付いたら拠点の家の前に居た。制限がなくなっているってことは現代に戻ってこれたんだな。
「なんか色々と過去の世界楽しいな」
「そうだな。じゃあ学校でな」
「おう。おやすみ~」
「おやすみなさい。春名さん、颯音さん」
三人に別れを告げてログアウトし、そのまま眠りに就いた。
生活の方が大分落ち着いてきたので更新を再開します。




