第399話
『ハルナ、二人の姿が見えてきたよ!』
「わかってる。戦っているようだし援護しよ」
ヒガネとの共鳴で掛けているゴーグルから颯音と雫恩がモンスターと戦っている姿が視界に入った。
白と赤の翅を二枚ずつ残して、残りの翅を操り、二人が戦っているモンスターに奇襲を仕掛け撃退した。
「春名ー!!」
周りにモンスターが居ないのを確認してから大きく手を振っている颯音の近くに降りた。
「来るのおっそいよ! 暇すぎてモンスターと戦って時間潰してたんだからな」
「襲われていたんじゃねーのかよ! 紛らわしいことを……」
「春名さん、ウィル君の姿が見えないけど……どちらにいらっしゃるの?」
「ウィルはナハルって町に残ってもらって宿屋を確保してもらってるよ。まぁその町に行く前に残りの三人を回収しないといけないけど」
「三人の場所は分かってんの?」
「スキルを使ってもらった時に座標を記録しているから場所は分かってる。移動するから颯音は雫恩を頼む」
「はいよ。あ、そうだ。春名もさ、召喚の数制限食らった?」
「そうだけど」
「春名もか。てことは海都もだよな。俺と海都は三体以下だから平気だけど。春名は大変じゃない? 使い分けないと行けないんだし」
「全員汎用性あるから平気だけど、共鳴技ぶっぱが出来ないのが面倒くさいけど」
「贅沢な悩みだな……」
「ほら、さっさと行くぞ」
「はいはい。ヒスイ!」
共鳴をしていたヒスイを解いて颯音と雫恩は背に乗って移動を始めた。
「次は誰の所に行くんだ!」
「海都とルーシャさんのところ。最後にモレルさんの順で行く」
「了解! 雫恩、しっかりと掴まっていろよ!」
ヒスイの速度が上がり、それに合わせて俺も速度を上げて海都とルーシャさんがいる場所に向かった。
一時間ぐらい空を飛行して海都とルーシャさんがいる街の近くに到着し地上に降りて、二人に街の外に来るようにメッセージを送った。
しばらくすると、ケモ耳のカチューシャを付けた海都とルーシャさんがやってきた。
「やっば……! 海都似合わなすぎ! 超笑えるんですけど!」
「一発殴っていいか?」
げらげら笑う颯音にイライラしだす海都。
「可愛い! 海都さんお似合いですよ! 触っても?!」
「うぐっ……」
キラキラした瞳で雫恩が海都の頭を撫で始めて、海都は複雑な表情を浮かべていた。
そんな光景を見ていると隣にルーシャさんがやってきた。
「あの三人、楽しそうだね」
「ですね。ていうか、よくケモ耳のカチューシャを持っていましたね」
「お店でやった時のイベントのやつ。そのままインベントリにしまっていたの思い出したの。付けて正解だった」
「まだ余ってます?」
「あと三つ。人数分あるから安心」
俺はルーシャさんからカチューシャを受け取り颯音と雫恩に渡すと、颯音は俺とカチューシャを交互に見て困惑した表情を浮かべた。
「これ、つけなきゃダメ?」
「付けないと怪しませるからつけろ」
渋々と颯音はケモ耳のカチューシャを付けると、隣にいたルーシャさんが目をキラキラさせていた。
「ハヤト、似合うね!」
「あ、ありがとうルーシャさん……」
あまり嬉しくなさそうな颯音。その姿を見て笑いを堪えている海都の姿があった。
「よし、モレルさんを回収しにいくぞ。颯音、ギンも頼んでいいか?」
「いや、ケロベロスになって運ぶよ。【地獄の神狼】!」
三体の狼と共鳴をした颯音は黒い三つ首の狼に姿を変えた。
颯音は海都と雫恩、ルーシャさんを背に乗せて、俺たちはモレルさんがいる場所に向かった。
しばらく飛んでいると広い森が見えてきて、一か所だけ不自然に木々が倒されている所を見つけた。ここでモレルさんはスキルを使ったのかな。
ヒガネの共鳴で広範囲に索敵をしてモレルさんを見つけたけど、変な光景に俺は頭を傾げた。
「モレル、見つけた?」
ルーシャさんに聞かれて、俺はありのままを伝えた。
「実はモレルさんが座った椅子?を中心に沢山の人が拝んでいる様子を見たんです」
「どういうこと?」
「さぁ……? とりあえず行ってみますか」
モレルさんにメッセージで送り、俺たちは急いで向かった。




