第397話
ウィルが言っていた三日はあっという間に過ぎ去り、約束の当日。学校が終わり、夕飯と風呂を済ませ、準備万端でゲームにログインをした。
拠点にはすでに兄ちゃん以外のクランのメンバーが揃っていて、何故か子供姿に戻ったオピオさんもいた。
「また子供姿に戻ってる。てか、なんでオピオさんがここに?」
「この姿に慣れてしまってのう。大きい姿だとちと不便を感じてこの姿になっているだけじゃ。儂が来たのはただの見送りじゃ。お主たちが留守の時は儂がルラーシャを見ておこう」
「助かります、オピオさん」
オピオさんと会話が終わり、俺は地面に魔法陣を描いているウィルのところに行く。
「ウィル、魔法陣の方は順調か?」
ウィルが描いているのはオピオさん直伝の時間操作を安定にしてくれる魔法陣だ。
「はい。もう描き終わっています。あとは僕がクロノス・アルタを召喚すれば出発できます」
「了解。そんじゃまぁ行きますか。全員魔法陣の上に」
ぞろぞろと皆は移動して魔法陣の上に並んだ。
「こい……クロノス・アルタ!」
ウィルが召喚をした時計塔のクロノス・アルタは魔法陣の中心に出現した。
「皆さん、準備はいいですか?」
ウィルの問いかけに俺たちは頷いた。
「一応注意事項。時間移動中に逸れたら僕でも見つけるのは難しいから離れないでください。行きます……【時空回帰】発動!」
ウィルが叫ぶと秒針が凄い速さで逆回りしていき、魔法陣が光り出した。
「みんな! 気を付けてね!」
「おう! 行ってくる!」
俺は心配そうにしているルラーシャにとびきりな笑顔で返事した。
魔法陣の光がより増していき、俺たちは光に飲み込まれた。
「……さん!」
誰かに呼ばれている気がしているけど瞼が重い。
「ハルナさん!」
「っ! ……ウィル?」
「やっと起きた……」
安堵するウィルの姿が視界に映る。俺は体を起こして周りを見渡した。
周りには整った石造りの道がずっと続いていてほのぼのとした雰囲気が漂っていた。
「ここは……過去に来れたのか?」
「来れたのは来れたんですけど……」
「ですけど? ていうか、他のメンバーは?」
「実は……過去に来た時に何らかの原因で散り散りになってしまって……」
「なるほど……ちょっとメッセージを送ってみるわ」
俺は散り散りになったメンバーにメッセージを送った。
直ぐにメッセージが返ってきて颯音と雫恩は無人島に、海都とルーシャさんは中規模の街に、そしてモレルさんはソロで森の中にいるそうだ。それと、仕様なのかマップ機能は使えないみたいだ。マップ機能が使えれば皆の座標を教えてもらって迎えに行けるんだけどな。
「全員無事みたい」
「よかったです……これからどうします?」
「そうだな。とりあえず皆と合流して、現代と行き来ができるポータルを作らなきゃな。ウィル、俺たちがいる場所ってわかるか? マップ機能が使えないみたいでさ」
「うーん、見覚えがある気がするけど……ハルナさん、上空から地上を見下ろしたいです」
「わかった」
俺はクモガネとアカガネを呼び出した。
すると、俺の目の前にウィンドウ画面が現れ、そこには2/3と書かれていた。
「ウィル、ちょっと試したいことがあるから少し待ってくれ。コガネ」
俺はコガネを呼び出すと再びウィンドウ画面が現れ、今度は3/3になっていた。
「アオガネ! クロガネ!」
二体の名前を呼んでも姿は現れなかった。その後、コガネを戻してシロガネを呼ぶと普通に呼び出せた。
どうやら同時に呼び出せる数に制限が掛かっているみたいだ。攻撃の手段は減るけども初めた時と思えば苦ではないな。
「どうかしましたか?」
「コガネ達を同時に呼び出せる数に制限があるみたい。まぁ問題ないから上空に飛ぶぞ。クモガネ、アカガネ。共鳴を」
『『はーい』』
二体と共鳴をして白と赤の翅を展開し、翅を操り、違和感がないか確認をした。
共鳴にも制限があるかと思ったけど問題なく操作できるから大丈夫そうだな。
「飛ぶぞー」
「お願いします」
ウィルを背負いゆっくりと上昇していく。
「ハルナさん! 石造りの道のずっと先に町が見えます!」
「見覚えあるか?」
「ここからじゃわかりません」
「了解。とりあえずあの町に行って情報収集するか」
俺たちは上空から見つけた町に向かって飛んで行った。




