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第395話

 次の日。学校が終わってマンションの駐輪場に着くとスマホが鳴る。画面を点けるとレゾナンスオンラインの運営からと表記されていた。


「うーん……詐欺系かぁ?」


 恐る恐る開いてみると、運営から話があるみたいで指定された時間と場所に来て欲しいとのこと。

 今の所、予定も無いし別にいいけど。詐欺系だったら危ないし誰か同伴してもらうか。とりあえず返信はしないでおこう。

 家に帰宅し、部屋着に着替えているとドアがノックされ、兄ちゃんが扉を開けた。


「お帰り、夕飯出来ているけど食べるか?」


「うん。勿論、食べるよ」


「目の隈……ちゃんと寝ろよ」


「うん、しばらくは徹夜はしないよ。今日の夕飯は?」


「カレーだ」


 その後、兄ちゃんと夕飯を食べ、昨日決まったことを話した。


「昨日話し合ったことでウィルの過去に行くことになったんだ」


「過去……最近のゲームはそんなことも可能なんだな」


「まだ行く日程とか決めてないから、決まったら伝えるよ」


「わかった」


「そうだ。兄ちゃん、この後は時間ある? 実はさ、さっき運営から連絡が来て会って話したいことがあるんだって。一人で行くのが怖いからさ、付き添いしてほしんだ」


「運営から? 見せてみろ」


 兄ちゃんにスマホを渡すと、自分と俺のスマホを交互に操作をしだす。


「本物っぽいけど、一応ついて行こうか」


「ありがとう兄ちゃん」


 空になった食器を流しに運び、俺は部屋に戻り、ログインをした。

 拠点で兄ちゃんと待ち合わせてから指定された場所の沼地エリアの組合所に向かった。


「暗いし、じめっとしているし、人がほとんどいないなこのエリアは……」


「兄ちゃんはこのエリア初めて? このエリアは厄介なモンスターが多いから人気無くて、昼間でも人いないよ。組合所はあっちだよ」


 人通りの少ない道を進み組合所に向かった。

 組合所は閑散としていて、受付嬢は欠伸をしていた。暇なんだろうな。

 俺は空いている受付に並んだ。


「すみません、ここで待ち合わせしているハルナです」


「……ハルナ様ですね。お待ちしておりました。ご案内致します」


「連れの方も一緒でも大丈夫ですか? 一応クランのメンバーです」


「確認してまいります」


 受付嬢は一礼をしてから立ち去り、少ししてから戻ってきた。


「構わないとのことですのでご案内致します」


 兄ちゃんと一緒に受付嬢の後を付いて行き、部屋の前に案内された。

 受付嬢がノックをすると、中から「どうぞ」と声が返ってきた。

 ドアが開くと紳士服を着て、背筋を真っ直ぐにしている男性が出迎えてくれた。


「お待ちしておりました、ハルナ様。GMの一人、ドウジマと申します。覚えておられますでしょうか」


「はい。大会の景品を渡してくれたドウジマさんですよね。お久しぶりです」


「春名、この人は知り合いなのか?」


 兄ちゃんが小声で話しかけてくる。


「うん。って言っても二回ぐらいしか会ってないけどね。それで、話しって何ですか?」


「ゆっくりお茶を飲みながらお話をしましょう」


 俺の隣に兄ちゃんが座り、向かい側にドウジマさんが腰かけた。

 用意された美味しい紅茶を一口飲み、一息ついてからドウジマさんは懐から何かを取り出してテーブルに置いた。それは真ん中に真っ赤な宝石が付いているブレスレットだ。


「これは?」


「今のハルナ様たちが必要な物です」


 俺は手に取りブレスレットの効果を確認した。

 ブレスレットの効果は使用することで過去と現代を繋ぐ転移門を作りだし行ったり来たり出来るようになる効果だった。


「……確かに今の俺たちには必要な物ですが、タダでくれるって訳じゃないんですよね?」


 ドウジマさんは不敵に笑った。


「はい。こちらのブレスレットは条件付きでお貸ししようと思います」


「条件……どんな事をすればいいんですか!」


「私からの条件は過去に戻った際に皆さんの行動を逐一報告すること。それと、ウィリアム・フリューゲルスを絶対に死なせないようにサポートすることです。この二つを守って頂けるならそのブレスレットをお貸し致しましょう」


「その条件にした理由を聞いてもいいですか?」


「構いません。一つ目の理由は過去に戻った時に些細な行動で現代にどのように変化するのか確認するため。二つ目は彼の死によって大きく歴史が変わってしまい、我々の仕事が増えてしまうので防いで頂きたいのです」


「そんな理由なの……? まぁそれぐらいなら大丈夫か。ドウジマさん、その条件で貸してください」


「分かりました。何か困ったことが起きたい際に私とフレンドを交換しましょう」


 俺はGMのドウジマさんとフレンドを交換した。


「報告する時はこちらのアイテムを使ってください」


 ドウジマさんから渡されたのは小さな鳥のロボットだ。説明書も渡されて俺は目を通した。


「では、私はまだ仕事がございますでこれにて失礼致します。良い旅を」


 ドウジマさんは一礼してから目の前から消えていった。

 俺は深いため息を零した。


「なんか疲れた……兄ちゃん、一緒に来てくれてありがとう」


「俺は何もしてないさ。じゃあ俺もログアウトするけど、春名は?」


「うーん、ウィルと話してからログアウトしようかな」


「そっか。遅くなるなよ」


 兄ちゃんもログアウトして、俺は拠点に転移をした。



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