第394話
睡魔に抗いながらどうにか全ての授業が終わり、最後のHRも終わって俺は机に突っ伏していた。
「春名、生きてる?」
「無理……眠い……けど、今日はログインする……」
兄ちゃんから貰ったタブレットを食べて眠気を飛ばして、荷物を鞄にしまった。
「颯音は元気そうだな」
「俺は徹夜慣れしているからな。何時ぐらいにログインする予定?」
「夕飯食べてからだから六時ぐらいかな」
「そんじゃ俺もそれぐらいにログインするわ。海都の様子を見に行こうぜ」
「おう」
教室を出て海都の教室に行くと席に座り腕を組んでイライラしてそうな表情をしている海都の姿があった。
「海都……怒ってる?」
「……眠いだけだ。何か用か?」
「様子を見に来ただけ。特に予定がないなら帰ろうぜ」
「わかった」
廊下を歩き下駄箱に着くと海都が聞いてくる。
「……今日は雫恩は来れないそうだ。てか、俺も無理かも。流石に眠い……」
「そっか。じゃあ俺と春名と……モレルさんとルーシャさんは来れそうなの?」
「さっき返事が来て少し遅くなるってさ。ウィルと話し合った事は後で伝えるよ」
「悪いな……二人も限界なのにって言いたかったけど颯音は元気だったな」
「これぐらい平気平気」
「車で送っておく」
「俺、自転車なんだけど」
「車のトランクに入れるから問題ない」
学校を出た俺たちは校門の近くに停車している海都の車に乗り、家まで送ってもらった。
玄関を開けると兄ちゃんの靴は無かった。まだ兄ちゃんは帰ってないみたいだな。
部屋に鞄を置いてリビングに行くと、テーブルの上にはラップがしてある料理が置いてあった。そこにメモ紙もあった。
「二日連続徹夜したらゲーム没収っと……流石に二日連続で徹夜は出来ないって」
兄ちゃんが用意してくれた夕飯を食べてからゲームにログインした。
拠点に入るとリビングで颯音とウィル、ルラーシャの三人がソファに座って待っていた。
「お待たせ」
「おかえりなさい、ハルナさん」
「モレルさんとルーシャさんは少し遅れてくれ来るから先に始めようか」
「はい」
俺はウィルの向かい側のソファに腰かけた。
「それじゃ今後の方針なんだけど、ウィルの問題を解決するのが最優先で行こうと思う」
「俺もそれでいいぜ。他のメンバーも賛成するっしょ」
「で、それが解決次第ルラーシャを過去に戻そうと思う」
「私、過去に戻れるの!?」
ルラーシャは俺の言葉を聞いて席を立ち上がった。
その様子を見て俺はウィルに視線を向け、ウィルは気まずそうな表情をしていた。
「俺から話しちゃう?」
「いえ、僕から話します」
ウィルはルラーシャの手を握り静かに話し出す。
「僕ね、新しいジョブになったんだ。そのおかげで過去に戻れる……いや、時間を操る力を手に入れたんだ」
「新しいジョブ?」
「僕のジョブは刻剣の召喚士。異界からモンスターを召喚して使役するジョブです。僕が使役してるのはミカヅキを含めて四体。その中でもクロノス・アルタは時空の神クロノスとの契約により使役してる一体です。能力は時間操作。魔力を使った分だけ時間を停止したり、加速させたり……そして、過去や未来に行くことも可能です」
「「未来も行けんの!?」」
俺と颯音の驚いた声が重なった。
「って言っても今は制限が掛かって未来には行けないんですけど」
「そ、そうなんだ……未来かぁ。ん? てことは過去に戻った時に、現代、いわゆる未来には帰れないってこと?」
「うーん……現代から未来には行けないだけなんで、過去に戻ったら使えるかもしれないです」
「そっか……戻れなかった用になんか対策する必要があるな」
ルラーシャの視線に気が付いたウィルは咳払いをした。
「僕の力はまだ不安定だ。この力が安定したら今度はルラーシャを返そうと思う。それまで待ってて欲しい」
「……危険なことだけはしないでね。約束して」
「ああ、約束する」
二人は指切りをした。
「ごっめん! 遅くなった!」
「モレルがもたもたしたから……」
「だって……!」
慌ただしくモレルさんとルーシャさんがやってきた。
二人にはとりあえず決まったことを伝えると賛成してくれた。
「あと伝えることは……あ、オピオさんの件か。海原エリアのボスモンスターが出現するから、その時が来たら依頼をするって」
「悪魔の島、全部攻略したもんな。早く出現してほしいぜ」
「ハルナ君、カイト君とシオンちゃんには伝えたの?」
「後で伝える予定です。他に話することある人~」
そう尋ねるとみんなは首を横に振った。
「それじゃ解散!」
「「「はーい」」」
モレルさんとルーシャさん、颯音の三人は早々にログアウトした。
「また明日な、ウィル。ルラーシャ」
「おやすみなさい、ハルナさん」
「また明日~」
俺も直ぐにログアウトした。
「眠い……スマホスマホ」
枕の近くに置いてあるスマホに手を伸ばし海都と雫恩に連絡した。
外を見上げて俺は大欠伸をした。
「もう寝よう……長い一日だったな……」
横になっていると我慢していた睡魔が一斉に押し寄せ俺は直ぐに意識を手放した。




