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第392話

 白と赤の翅を展開した俺は上空から様子を窺った。


『ワハハハ! 無駄だ無駄だー! 』


 高笑いしているドラゴンに色んなプレイヤーが総攻撃をしているが、届く前に見えない壁に遮られて攻撃が効いていないようだ。


「ハルナさん。あいつ、周囲の空間を歪ませているせいでプレイヤーの攻撃が届いていないみたいです」


 巨大な姿になったミカヅキに乗って付いてきたウィルが言う。


「そんなことが分かるんだな」


「俺と同じ力の気配がしたんで。恐らく、時間停止も使ってくると思います」


「となると、長引いたら面倒くさくなるな……」


「力を貸そうかなのう? ハルナよ」


 どう攻略するか悩んでいると後ろから翼を広げた人型のオピオさんが声を掛けてくる。


「オピオさん。もう結界の方はいいんですか?」


「ああ。もう維持する必要がないからのう。あいつを討伐すればこの島は崩れ、儂の力も……最後の力を取り戻せる!」


「やる気満々だな。そんじゃ力を貸してください、オピオさん」


「任せた! って言いたいがウィルよ。儂に付与魔法を施してもらっても良いかのう? 流石に捻じれた空間に飛び込んだら儂でもちっとばかしキツイ」


「……僕の力を知っているんですね」


「儂を誰だと思っていおる。それぐらいわかるわい。ほら、早よしてくれ」


「わかりました」


 ウィルがオピオさんに触れると、淡い光がオピオさんを包み込んでいく。


「力が漲ってくるのう……! 全力で行こうとしようかの!」


 オピオさんはドラゴンの姿になりアルファに突撃していった。


『この死にぞこないがああ! 我の邪魔をするなぁあああ!』


『暴れるではない。大人しくしておれ、小童が!』


 二体のドラゴンは激しくぶつかり合い周囲の環境がどんどん崩壊していく。いつの間にか攻撃をしていたプレイヤー達は遠巻きで見ていた。


「怪獣映画のようだな……オピオさんになんの付与魔法をしたんだ? てか、付与魔法も使えるのかよ」


「僕が付与したのは効果抵抗力を上げる付与魔法です。転職の時に使えるようになったんです」


「へぇー、あとで教えてくれよ。そんじゃ俺たちも続こう」


 俺は四枚の残して他の翅を操り、右手に白い翅を、左手に赤い翅を集め、氷と炎の力を溜めていき圧縮。二つの圧縮した力をぶつけて神々しい弓を生成をした。


「おっしゃ! 俺も行くぜ! 【地獄の神狼】!」


 空中に立っていた颯音は三つ首の狼に姿を変えた。


「二人共全力だな。……初のお披露目と行こうかリュウオウ、リュウテイ。【雷霆と地裂】」


 光に包まれていく海都の姿がどんどん変わっていく。巨大な体格に蝙蝠のような翼を広げた青と緑の二つの首のドラゴンが現れた。

 あまりにも巨大な姿に俺は口を大きく開けた見上げた。


「デカすぎだろ……」


『隙を作るからぶっ放せよ、春名』


「おう、任せろ!」


 翼を羽ばたかせて凄い速さで向かっていく海都は炎と電気のブレスを放ち、颯音とオピオさんは離れて、ブレスはアルファに直撃。颯音とオピオさんが直ぐに追撃を加えて体力も減らしていく。


『雑魚の分際で我に触れるな!』


 怒りに任せたアルファは全方位にオーラが放ち、周りの景色から色が無くなり止まっているように見えた。

 時が止まっているのか……?でも、なんで俺だけ動けているんだ?


『お主の攻撃など、今の儂には効かんぞ!』


 オピオさんはべしっと尻尾の叩きつけでアルファの頭部を攻撃をし、仰け反ったアルファは目を見開いていた。


『な、何故……!? 時が止まっている世界で動けるのだ!?』


『分からぬか?』


 アルファは俺の後ろに居るウィルを見ているようだ。


『っ!? 裏切り者が……!!!』


『させぬ!』


 怒りを露わにしたアルファは翼を広げて飛び立とうとするがオピオさんが邪魔をする。


「ハルナさん、この世界で長時間は動けないので今の内にお願いします」


「……わかった」


 神々しい弓を構え、白銀の弦を引き、氷と炎を纏った矢を番える。


「【共鳴技・神殺しの一矢】」


 放たれた矢は綺麗な軌跡を描きながら真っ直ぐに飛翔していく。


『く、来るなアアアアア!』


 アルファはブレスを放ち抵抗するも、ブレスを引き裂き、矢はアルファの口の中に入って行った。そして、体内で大爆発が起こり、黄金の炎と凍てつく氷が体外に漏れ出し、アルファは白目を向いて地面に倒れた。


『もうし……わけ、ございません……主様……』


 体力がなくなったアルファの体に罅が入って砕け散った。

 アルファが倒されたことで止まっていた時間が動き出し、世界に色が戻った。



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