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第390話

「何が……起きて……」


 周りを見渡すと全員が床に倒れて、体力も大幅に削られていた。


「無様ですねぇ……さあ、止めを刺してあげなさい」


「……デスサイス……ビリーザキッド」


 ウィルが指示を出している声が聞こえてくるも体が硬直して動かない。このままじゃやられる……!


『ハルナ、動ける?』


「コガ……ネ……」


 球体と一体化していたコガネが俺の頭に乗っかってくる。


『ハルナは少し休んでて。クモガネとアカガネは壁を。シロガネは皆の回復。ハガネ、ビートル隊と一緒に攻撃、ただし無茶はしないように。クロガネはハガネたちに色々と付与を。ヒガネは……』


 コガネは的確な指示をして行き、皆はコガネの言葉に従い行動をして行く。


『デバフは解除っと。体力も回復させたけど動ける?』


「ああ。動けるようになった。サンキューなシロガネ」


 シロガネが召喚した【治癒蜂兵】のおかげで皆の体力も回復してどうにか立て直しすることができた。


「コガネ、知っていたらでいいんだけど。あの一瞬で何が起きたのかわかるか?」


『うーん……僕たちも急にハルナが倒れたから正直分からないんだ』


「そうか。まぁ、十中八九、あの時計塔が原因だろうけど」


 ウィルを攻略するにはあの時計塔の攻略が必須条件だが、なにが起きたのか分からなければ対策しようもない。ハガネたちが時間稼ぎをしている間に考えないと。


「春名! さっきのは一体……!」


「俺も考え中だ。あまり時間がありません。なにか思いついた人はいますか?」


 そう尋ねると皆は考え始めた。


「あの、よろしいでしょうか?」


 落ち着いた声でランさんが手を上げた。


「時計塔の名前はクロノス・アルタ。恐らく、時計塔の能力は時間操作だと思います」


 ランさんは言葉を続けた。


「クロノスとは時空を司る神様です。そのクロノスと同じ名前なら能力も時空操作。多分ですが時計の針が零時を指すと能力が発動のトリガーだと思います」


「なるほど……てことは、針が零時を指す前にどうにかしないとだけど」


「ウィルが召喚したミカヅキの防御が厄介だ。俺と雫恩の共鳴技でどうにか突破はしたけど、今はもう完全に修復されている。高威力の攻撃じゃないと不可能だ」


「それと骸骨とガンマン。二体の足止め大事」


「モレルさん。砲撃残数はいくつ残ってます?」


「まだ今回使ってからフルバースト行けるよ!」


「……俺の作戦を聞いてください」


 俺は全員が聞こえるように作戦を伝え、皆が納得して実行に移した。

 ハガネたちに撤退の指示を出して、俺はウィルの前に姿を見せた。 


「おやおや、まだ諦めてない様子ですね。しぶといゴミは処理をしないと。やってしまいなさい」


「……クロノス・アルタ」


 ウィルが呟くと時計塔の秒針が動き始め、それに合わせて俺も十六枚の白と赤の翅を展開した。


「あの姿は……! 厄介ですね……止めなさい!」


 デスサイスは姿を消し、ガンマンは無数の弾丸を放つ。


「「ソニックアロー!」」


 雫恩とランさんがガンマンが放った弾丸を速度重視の魔法の矢で相殺していく。


「ナツキさん! ランさんの後ろ!」


 姿を消した骸骨の存在にいち早く気付いた海都がナツキさんに伝え、骸骨の振り下ろされた大鎌を受け止めた。


「兄貴! 今だ!」


「ビャッコ、【地縛大地】だ」


「ガッオオオオ!」


 地面から鎖が伸び、骸骨をがんじがらめにして動きを封じ込め、三体の狼と共鳴をした颯音と刀身に炎を纏った状態のナツキさんとルーシャさんの三人で骸骨の相手をする。

 これで二体の動きは封じることが出来た。なら、俺も本気を出す。


「共鳴技・」


「させません!」


 傍観していたアルファが動き出して俺の前に立ちはだかった。

 俺は翅を八枚操り、アルファの鞭の攻撃を対応していく。


「何をしているのです! 早くさせな――」


「ウィルに指示は出させない……!」


「くっ……馬鹿な!」


 残りの翅も総動員させてアルファが捌きれない速度で攻撃して邪魔をした。


「皆ー! 準備出来たよー!」


 モレルさんが合図を送ると、待機していたリンさんが動き出した。


「魔を貫く紅蓮の槍よ。汝に仇なす、敵をその業火により灰燼と化せ……【焔槍】!」


「スザク! 【蒼き炎】!」


 リンさんが魔法を放ったタイミングに合わせてアキさんのスザクが青色の炎を纏わせた槍がミカヅキの体を貫いた。


「【アルティメットフルバースト】!!」


 モレルさんの砲台から激しく極太の光線が放たれ、ウィルは光に飲み込まれていった。

 光が収まり、モレルさんの攻撃で抉れて出来た大きな穴は外まで続き、風が流れ込み、煙が晴れていく。


「私の勝ちようですね!」


 時計塔は半壊していたが、文字盤は辛うじて残り秒針がもうすぐで零時を指そうとしていた光景をみたアルファは勝利を確信し、不敵な笑みを浮かべた。


「途中から俺の仲間が姿を消しているの気付けよ、バーカ!」


「はぁ?」


 遠くでリュウテイと共鳴をした海都が叫んだ。


「【共鳴技・グランドグラトニー】!」


 地面が鋭い牙のように隆起し、無数の牙が時計塔を噛み砕いた。その瞬間にウィルが纏っていた禍々しい鎧が砕け散った。


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