第389話
壁に掛かっている松明の明かりを頼りに螺旋階段をしばらく降りて行くと石造りの壁に囲まれた一本道が続いていた。
「海都、この先にモンスターの反応はある?」
「モンスターの反応は無いし、道も真っ直ぐみたいだ」
「了解。俺が前に出ます。ヘイムンダ、共鳴をしてくれ」
『わかったわ、小虫ちゃん』
ヘイムンダと共鳴をすることで盾にテントウムシの模様が現れ、俺の盾は強化された。
長い廊下を進んで行き、突き当りには大きな扉があった。
俺たちが近づくと扉はゆっくり開きだし、部屋に明かりが点き始め、部屋の真ん中に幹部の一人――アルファが待ち構えていた。
「これはこれは……誰が侵入したのかと思ったら貴方でしたか。よくこの場所がわかりましたね」
「ウィルは何処にいる……!」
「くくっ。貴方がお探しの人物はこの方でしょうか?」
アルファの不気味に笑うと黒い靄と共に黒い甲冑を纏った人が現れ、兜の隙間から覗く虚ろな目をしたウィルの顔が見えた瞬間、怒りが込み上げ、最も細く鋭い糸を全方位から浴びせた。
「はは! そんな攻撃は聞きませんよ!」
「……ミカヅキ」
アルファはウィルの後ろに隠れ、ウィルが剣を掲げると巨大な姿になったクラゲのミカヅキが二人を包み込んで俺の攻撃を受け流されてしまった。
「今度はこちらの番ですよー! やりなさい!」
「……デスサイス」
ウィルが地面に剣を突き刺すと、地面からボロボロの黒いローブを着た六本腕の骸骨が姿を現れた。それぞれの六本の腕には大鎌を持っていた。
現れた骸骨は目を光らせて一瞬で目の前から消えた。
「ランさん、避けて!」
海都が一番最初にランさんの真後ろにいる骸骨に気付き叫ぶ。振り下ろされた大鎌を、間に入ったナツキさんが刀で弾き、近くに居たリンさんと雫恩がありったけの魔法を放った。
「さあ、どんどん召喚しなさい!」
「……ビリーザキッド」
ウィルが今度、召喚したのは西部劇に出て来そうな二丁拳銃のガンマンだ。ただ、そのガンマンの肌は青色で不気味だった。
「ヘイムンダ、共鳴技を使うぞ」
『どれを使うかは小虫ちゃんに任させするわ』
「了解。【共鳴技・天道【霧】】」
赤色だった盾の色が水色に変わり、周囲に霧が発生しだす。ウィルが召喚したガンマンは次々と弾丸を放ってくるも霧の中を通過した途端、弾丸の軌道が大きくずれて全弾外れた。
「ガンマンの攻撃を封じている今の内に骸骨を!」
「分かってる!」
駆け出した颯音はアキさんとナツキさん、ランさんとリンさんの四人で足止めをしている骸骨の頭上に跳躍して重たい一撃を入れ、骸骨はウィルの所まで後退をした。
「なかなかお強いですね。そろそろお遊びを止めて本気を出して差し上げましょうか!」
「……クロノス・アルタ」
ウィルの後ろに地面から禍々しい時計塔が出現して、二つの秒針が物凄い速さで動き出した。
「海都! 雫恩! あの時計塔を壊すぞ!」
「ウィルのミカヅキを突破しないと壊せねぇ……雫恩、共鳴技をやるぞ」
「わかりましたわ。行きますわよ!」
雫恩は杖を構え、円を作るように腕を回し、七色の球体を作りだす。海都はリュウオウを呼び出すと、雫恩が作った七色の球体を吸収し始め、体中の突起物が七色の光を放ち始めた。
「「【共鳴技・セブンスバースト】!!」」
リュウオウは口を大きく開け、七色の光線をウィルに放つ。ウィルを守ろうとミカヅキが盾になり受け止めるも、長くは持たずに光線はミカヅキを貫いた。
その隙に時計塔の頂上に糸を繋ぎ一気に移動した。
「ハガネ、行くぞ」
ハガネが一体化した球体が右手に移動すると刀身が長い大太刀になった。
刀を振り下ろそうとしたら、文字盤がぱかっと開き、中から大量の銃火器が一斉に撃ち始め、俺は天井に糸を張り巡らせて弾丸を避けるが、豪雨のような弾丸の量に押され離されていく。
「……時間だ」
時計塔の秒針が十二の所で揃い、頂上にある大きな鐘が鳴り響いた。
瞬きをした次の瞬間には空中にいた俺は地面に倒れ伏していた。




