第387話
「……ナ!」
誰かが呼んでいる気がする……
「ハルナ! 起きて!」
「ルーシャ……さん?」
目が覚めるとルーシャさんの顔が視界に入る。
「怪我、ない? 大丈夫?」
「はい……ん? これは……」
右手に指輪を握り締めていることに気が付き、指輪を確認した。
眷族の指輪……主と契約をした時に課せられる指輪。主の元に戻る性質を持つと。で、その主はウィルか。ウォルが残してくれたっぽいな。指輪の戻る性質を使ってウィルを見つけろってことだな。
「呼びかけても意識ないから心配した」
「どれくらい意識がありませんでした?」
「五分ぐらい」
「おい! のんびり話してねぇで! こっちを手伝え!」
叫んでいるトオルさんに視線を向けると、大量のモンスターをユランさんがサポートしながらアキさんと一緒に戦っていた。
「コガネ、手伝ってくれ」
『やっと起きた。共鳴する?』
「いや。共鳴はあいつらに取っておくさ」
『ふーん、わかった』
コガネは特殊な革手袋に変形する。俺は最も細く、最も切れ味が鋭い糸を伸ばして敵モンスターを一掃した。
「いくら弱っていたといえ切り刻むってエグイことしてんなぁ」
「ただのモンスターに時間を掛けられないんで」
「その様子だとなんか見つけたようだな」
「急いで合流しましょう」
屋敷を出て森の入り口に向かうとウォルが召喚した魚の群れに対処してくれていた颯音の姿があった。
「春名、ウォルはどうなったの?」
「ウォルとは……色々話したさ」
指輪を人差し指に嵌めると僅かに引っ張られている感じがした。
「これからウィルの場所に向います。恐らく、このエリアのボスモンスターの眷族が待ち構えていると思います」
「ハルナ、説明をしてくれ」
「はい、グレンさん」
俺はここに居る全員にウィルが拠点を去った理由を説明をした。
説明をし終えるとアレンさんに抱きついていたフリッジさんが手を挙げた。
「眷族を倒した場合のドロップ品はどうするだい?」
「基本は倒した人で良いと思うけど、参加者全員で話し合いかクジ引きでもいいかなと」
「眷族か……まだこのエリアの奴とはやったことねぇから楽しめそうだ」
にやりと笑うトオルさん。
「それじゃあ行きますか」
森を抜けて街に到着した俺たちは指輪が反応する方に進んだ。
大通りを進み、廃れた公園を抜けて、崩壊した教会の所で指輪は大きく震えた。
まさかウォルが見せた場所が目的地だったか。
「春名、ここって探索しなかったっけ?」
「したけどな。ヒガネの目を欺くぐらいだしもう一度確認するか。教会の中を探すんで、何人か外の見張りを任せたいです」
「俺っちがやるっすよー! いいっすよね? フリッジ」
「ダーリンと一緒なら」
「拙者たちも手伝おう」
「なんかあったら呼んでください」
アレンさんとフリッジさん、ギンさんとブレスさんが外の見張りを申し出でてくれ、外は四人に任せて残りのメンバーでそこそこ広い教会を手分けして探索した。
「って言ってもな……ヒガネの共鳴で確認してるし……一番怪しいのはあの祭壇か」
大人のウィルが司祭と話していた場所。何かしらの意味があるに違いない。
「ハルナ君、何か見つけた? こっちは全然」
祭壇を確認していると後ろからモレルさんが話し掛けてくる。
「今のところ特には。この祭壇が怪しいと思うんですけどね……」
「うーん、祭壇か……映画とかだったら隠し装置を起動したら地下に続く階段が出るのが多いけど」
「隠し装置か。大体どんな場所に隠されてます?」
「本棚の中にとか、燭台や松明を傾けたりとか、オルガンのパイプの中にあったりとか色々あるよ」
「なるほど……」
俺は別れて探索しているメンバーに手当たり次第に装飾や確認してくれとメッセージを送った。
「モレルさん、一緒に祭壇周りを探してくれませんか?」
「いいよ。じゃあ私はこっちを調べるね」
モレルさんと祭壇周りを調べ始めて、オルガンパイプの中に一角獣みたいな模様のボタンを見つけた。
「モレルさん、なんか見つけました。見てください」
「どれどれ……これっぽいね。押してみた?」
「押したけどなんも反応がないみたいで」
「他にあるかもね。皆からメッセージは来たの?」
「あ、今返事が……モレルさん。モレルさんの推理、的中したみたいです。とりあえず皆の話を聞きたいから集めます」
俺は皆に祭壇の近くに集まるようにメッセージを送った。




