第383話
結界を出てから数時間ほど迫りくるモンスターを薙ぎ倒しながら、ヒガネと共鳴して島を広範囲に索敵してもどこにもウィルの姿は無かった。
別行動してもらっているグレンさんたちからも連絡なし。一旦、休む為に俺はスキルを使いモンスターが入ってこれない安全エリアを作った。
「春名、この結界はどのくらい持つんだ?」
「今の攻撃ぐらいなら大分持つけど、高火力の攻撃を喰らったらそんなに持たないかな」
「周囲の警戒は俺がしておくから春名は一旦、共鳴を解け」
「了解。任せたよ海都。ふぅ……目が痛ぇ……」
俺はゴーグルを外して目を擦った。
いつもなら絞って索敵しているから負担はそんなにはないけど、広範囲でやっているせいで目に負担が来ているな。
『ハルナ、ちょっと目を見せて』
黒球と一体化したシロガネが姿を見せて俺の目に触れた途端、甘い香りが広がった。
『まだ痛みとかある?』
「おお……痛みが引いた! ありがとなシロガネ」
『……皆も癒してあげる』
シロガネは順番に顔に手を触れ癒していく。普段なら【治癒蜂兵】を使うのに自ら癒している初めて見たな。
『はい、これでお仕舞。また疲れたら言ってね。今日だけは特別にサービスしてあげる。じゃあね』
「本当にありがとなシロガネ」
シロガネは再び黒球と一体化した。
「海都、代るよ」
「わかった」
俺は再びゴーグルを掛けて島を見渡し、ある光景に俺は首を傾けた。
「春名、なんかあったのか?」
「うーん……なんか地面から巨大な牙が生えてプレイヤーとモンスターを飲み込んでいるんだよな」
「プレイヤーとモンスターを? うーん……敵味方関係なく襲っているってこと?」
「そうみたい……」
巨大な牙を観察をし続けても靄が掛かっていて正体がわからず、頭を捻っているとヒガネが話しかけてくる。
『ハルナ、私の共鳴技使って。そいつの正体が分かると思う』
「それはそうだけど……使うと共鳴が解かれるちゃうからウィルを探せなくなるし……」
『私の目を使っても見つけれないならさっさと共鳴技を使ってヒントでも探した方がいいと思う』
「そうだな、適当に探し回るよりかはいいか。行くぞヒガネ……【共鳴技・世界を取り巻く瞳】」
ヒガネの共鳴技は隠れた真実を見通し、どんなに高い隠蔽スキルを使ったとしても貫通して情報を見ることが出来るというシンプルな効果だ。
共鳴技を使うとゴーグルのレンズに五重円が現れ、上空から見下ろす視点になり俺は牙を凝視をした。すると、靄が晴れていき牙の正体は地上を泳いでいた鮫だった。それも見覚えのある奴だった。
「……牙の所に行こう」
「その様子だと正体がわかった感じ?」
「あとで説明をするよ。ヒガネありがとう」
『少し休憩するね』
そう言ったヒガネは黒球と一体化した。
モンスターと遭遇しないようにボロボロの建物の屋根を伝って、鮫に気付かれないように近づいた。
屋根から見下ろしたモレルさんが小声で聞いてくる。
「それで、あの鮫はなんなの?」
「あの鮫は……ウィルの弟だったウォルの悪魔の姿です」
地上を泳いでいる巨大な鮫……グラトニーフォルネウスを視界に入れながら呟いた。
「足元に敵対反応!」
海都が叫ぶと足元から巨大な牙が生えて、俺は咄嗟に防御スキルの【ラウンドフォース】を使い、モレルさんと雫恩を守る。
攻撃を回避した颯音とルーシャさんが透かさず鮫の両脇を攻撃をした瞬間、体が霧散して鮫の姿は消えた。
「海都! 後ろ!」
突然現れた鮫に反応が遅れた海都は尾ひれの振り回しを喰らい飛ばされてしまうが、颯音は一瞬で移動して海都を受け止め、どうにか体力が残り、即死は免れた。
また姿を消した鮫は海都に追撃をしようとしていて、俺は【咆哮】を使い敵視を俺に集め、鮫の攻撃を止める。その隙にモレルさんと雫恩が攻撃を与えるが、また体が霧散されて躱された。
再び現れた鮫は俺を見てから別の方向に移動し始めた。
「悪い……油断した」
「海都にしては珍しいな」
「俺の索敵を掻い潜ってくのは対応出来ないって」
「後を追う?」
「手掛かりが欲しいので追います」
ルーシャさんに言われて俺は力強く答えた。
【治癒蜂兵】を召喚して海都の体力を回復させてから直ぐに後を追った。




