第378話
遅ればせながら、新年明けましておめでとうございます。本年も宜しくお願いします。
メイドの一人に案内された部屋には、綺麗に畳まれた服と荷物がベッドの上に置かれていた。しかも、服はアイロン掛けされていた。てことは、洗濯したのかな? やっぱ海都の家は別次元だ。
「春名、入るよ?」
私服に着替え終わると、ドアがノックされ颯音が入ってくる。
「どうした?」
「一緒に浴場に行こうと思って」
「そうだな」
外で待っているメイドに案内を頼み、浴場に向かう。脱衣室で服を脱ぎ、浴場のドアを開けると海都が広い風呂に肩まで浸かっている姿があった。
「先に来てたんだな」
「頭を空っぽにしたかったからな」
「……そうか」
「春名。俺たちも体を洗って浸かろうぜ」
「おう」
俺と颯音は体を洗ってから海都の対面に腰を下ろして湯に浸かった。
「「はぁ~……気持ち……」」
肩まで浸かって俺と颯音の声が重なり響く。
「足を伸ばせるって最高だな……この後ってゲームやるの?」
颯音の質問に海都が答える。
「一時間ぐらい課題を進めてからやる予定だから先にやっててくれ」
「俺も課題やってからだな」
「えー、課題やるの? 二人が課題やるなら俺も合わせるよ……充分温まったし先に上がる」
颯音が出て行ってから数十分後に俺と海都も出て、一旦それぞれの部屋に戻ってから勉強道具一式を持って海都の部屋に集まった。その中に部屋姿の雫恩の姿もあった。
「雫恩も課題か?」
「ええ。と言いましても直ぐに終わりますけど。皆さんの進捗はどのぐらいで?」
「俺も少しかな。海都も同じくらい?」
「ああ。颯音は?」
「お、俺も同じくらいかな……」
「そうかい。ちゃっちゃと課題を終わらせてゲームをやろうぜ」
課題を進める中、俺と雫恩がニ十分ぐらいにで終わり、その十分後ぐらいに海都も終わった。少し苦戦している颯音を三人で手伝い、どうにか課題を終わらせることが出来た。
「助かったよ三人とも……!」
「感謝しろよな。そんじゃ始めますか」
「私は部屋に戻りますわ。では、後ほど」
雫恩が部屋を出てから俺たちは準備をしてゲームにログイン。拠点から空を見上げると、いつも青空が広がっていた海原が珍しく曇りだった。
「ハルナさん! ハヤトさん! カイトさん!」
剣を振っていたウィルが俺たちを見かけて駆け寄ってきた。
「今日はお揃いなんですね」
「雫恩も来るけど……お、来た来た」
「お待たせしましたわ」
少し遅れて装備を一新した雫恩がやってきた。
「これから何処かに行かれるんですか?」
「まだ決めてないけど……何処か行きたい場所ある?」
そう聞くと三人は考え始め、最初に口を開いたのは海都だった。
「それなら人魚族の街に行かないか? 街周辺のモンスターもレベルが高くていい経験値になる」
「街周辺は探索してないし、いいんじゃない?」
「反対意見は無さそうだし決まりだな。街ならウィルも来るか? ルラーシャも一緒に」
「僕たちも行ってもいいんですか? 僕たちを襲ってきた連中が来て、皆さんに迷惑をかけ――」
俺はウィルの頭に手を置いた。
「迷惑だと思ってないから気にするな。それに今回は四人だし、襲われても四人がいればどうとなるさ」
「分かりました。ルラーシャは部屋に居るので聞いてきます」
「おう」
しばらく待っているとウィルと一緒にルラーシャも来た。
「私も行きたい」
「おう。俺たちから離れるなよ」
俺たちは人魚族の街に転移をする。辺りを見渡してもプレイヤーの姿はまだない。まだ道が出来ていないのかな。
「俺たち以外にはまだプレイヤーは居ないね。今が狩りチャンスだね。行こうぜ!」
「はいはい」
俺たちは街中を歩いて行き門の方に向かうと、人魚のエスカルスさんの姿があった。
「これはこれはハルナ殿ではないか。今日は如何様に来られたのだ?」
「街の周辺でレベル上げをしに」
「なるほど……あの日以来、深淵の者共の報告が絶えないから気を付けるのだぞ」
「わかりました」
門を潜り街の外に出て、俺はアオガネを海都はリュウオウを呼び出す。俺は念の為に他のメンバーも呼び出して球体と一体化しておく。
「そんじゃーレッツゴー!」
「テンション高いな、颯音」
俺と颯音、ウィルとルラーシャはアオガネの背に、海都と雫恩はリュウオウに背に乗って出発した。




