第377話
赤い絨毯を進んで行くと、高そうなスーツ姿の男性や煌びやかなドレスを着た女性達が沢山いて、その近くには豪華な料理が並べられていた。
ここに居る人たちって、普通じゃあ出会えない人達だよな。俺と颯音の場違い感凄いな……今すぐにでも帰りたい。
「海都さん!」
明るい青色のドレスを着た雫恩が手を振って呼んでいた。その隣には綺麗な女性が立っている。誰だろう?
「春名さん、颯音さん。よくお似合いですわ」
「メイドさんたちが手伝ってくれたからな。そういう雫恩も似合っているじゃん」
「本当ですか? こちらのドレスは海都さんに選んで頂いたんです」
「「へぇ~」」
「その視線はやめる」
俺と颯音がニヤニヤしながら海都に視線を送っていると怒られた。
海都は溜息をついてから雫恩の隣に居る女性を紹介する。
「二人共、こちらが俺の母。母さん、友人の春名と颯音」
「母の知代です。今日は息子の我儘に付き合ってくれてありがとう」
「小日向春名です。こっちが」
「立川颯音です。友達の頼みなら何処へでも付き合います!」
「って言ってますけど、料理に釣られて」
「ちょ!? それは春名もそうだろう!」
「ふふ。お話に聞いた通りの方たちですね。海都、雫恩さん。この二人は私が見ていますから、ご挨拶しに行ってきなさい」
「はい」
「行って参りますわ」
離れていく海都と雫恩の後ろ姿を見送っていると海都の母、知代さんが話しかけてくる。
「さて、私たちはあちらのテーブルで料理を楽しみましょうか。世界各地の有名な料理人たちが腕を奮っているからとても美味しいわよ」
知代さんの後を付いて行き丸いテーブルに座り、知代さんがスタッフに料理を運ぶように頼んで、俺たちは豪華な料理を堪能した。
「これは奥空夫人。ご無沙汰しております」
「あら、伊集院家長男の虎彦さん。ごきげんよう」
ベージュのスーツを着た金髪のオールバックの男性が知代さんに挨拶しに来た。
「そう言えば海都はどちらに?」
「息子なら雫恩さんと共に挨拶しに行っていますわ」
「そうですか……こちらの二人は奥様のご友人で?」
「この二人は息子の友人たちよ」
「ふーん」
目の前の男性は俺たちをじろじろと観察をしてくる。
「この二人が海都の友人? 夫人、海都に友人は選ぶべきだと伝えていただけますでしょうか? この二人は海都には相応しくない。海都の友人に相応しいのは僕みたいな人物だ!」
初めて会った男性にいきなり見下さられて内心イラっとした。
「それを決めるのは海都自身だ。他人が決めることではない。何様のつもりなんだよ」
「一般人風情が僕を説教――」
後ろから来た海都が男性の肩に手を置いた。
「俺の友人に何をしているいんだ? 虎彦……」
「おお、我が永遠の友!」
「は? 何ふざけた事を言ってんだ……?」
今までに聞いたことがない低い声を出す海都。
「お前が今までにしてきたことを俺が知らないとでも……!」
「さぁ? 何の事かわからないですね」
「お前……!」
「海都、落ち着けって!」
今にも飛び掛かろうとしている海都を俺は引き止めた。
「母さん。挨拶が終わったから帰るから」
「……わかったわ。雫恩さんを送り届けるのよ」
「わかってます。行こう」
知代さんに一礼してから俺たちは海都と一緒に会場を後にして、駐車場にある車に乗り込んだ。
助手席に座った海都は大きな溜息をついた。
「俺の事情に巻き込んでしまったな、悪い……」
「別に気にしてないさ。それにしても嫌な奴だったな」
「海都が敵意剥き出しなの初めてみたな。あまり力には慣れないと思うけど何かあったらいつでも聞くからな!」
「……いつか話すよ。荷物を回収してから家に送る」
車はゆっくりと動き出し、高級ホテルを出て海都の屋敷に向かった。
「そうだ。海都、今日泊まってもいいか?」
「今日か? 別に構わないけど……春名、明日バイトがあるんだろう?」
「朝に帰れば間に合うさ」
「わかった。颯音は?」
「俺も泊る予定! 母には許可取ってあるぜ!」
「用意周到だな。わかった」
「ちょっと、二人だけお泊まりはズルいわ! 私も泊まりますわ!」
雫恩の予想外の言葉に俺は視線を海都に向けた。
「流石にそれは……」
「二人は良くて、私は駄目ですの?」
「……わかった。泊まってもいいけど、部屋は別々だからな」
「昔はよく一緒に寝ていたのに……」
「幼稚園ぐらいの時に話しだろうが」
他愛もない話はしていると、いつの間にか車は海都の屋敷に到着していた。
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