第376話
次の日。少し遅めの朝飯を食べ終え、部屋で課題をやっていると、颯音からメッセージが届いた同じタイミングでチャイム音が鳴り、俺は玄関まで向かった。
「いらっしゃい、颯音」
「お邪魔します。冬真兄は居る?」
「兄ちゃんは今日は仕事。なんか飲むか?」
「なんでもいいけど、喉渇いてるから冷たいのがいいかな」
「部屋に持っていくから、適当に座って」
「わかった」
俺はキッチンに向かい適当に冷蔵庫にある冷たい飲み物をグラスに注ぎ、部屋に持っていく。
「ありがとう春名。頂きます」
颯音にグラスを渡すと一気に飲み干し、空になった。
「車の迎えって何時だっけ?」
「昼の一時だったかな」
「一時か……二時間ぐらいならゲームする?」
「課題やるからパス。颯音は終わってていいな」
「か、課題やります……」
颯音は途中まで出していたヘッドギアを戻して勉強道具一式を取り出して、課題を進め始めた。
しばらく無言で課題を進めているとスマホの通知音が鳴り、画面を開くと海都からだった。
「海都がマンションの下に着いたって」
「もうそんな時間か」
俺と颯音は勉強道具一式とヘッドギアをカバンに仕舞い家を出て、マンション近くに止めている海都の車を見つけて乗り込んだ。
「海都、お待たせ」
「おう。ちゃんとシートベルトをしろよ」
俺たちがシートベルトをしたの確認してから車が動き出した。
「そう言えばさ、こんなスレが立っていたけど知ってるか?」
助手席に座っている海都が画面を開いた状態のスマホを渡してくる。そこには「樹海エリアを凍結!樹海が一瞬で修復!新たなボスモンスターか!?」というスレ名だった。
俺は下にスクロールすると画質は荒いが人が映っている画像があった。
「これに巻き込まれた人が数名いて、その人たちが情報収集しているらしい」
「へ、へぇー……そうなんだ! 迷惑な奴もいたもんだな!」
「急にどうした?」
「いや別に! あはは……!」
「なんかテンションがおかしいぞ? 春名」
「……ん? これってさ……クモガネと共鳴をした春名じゃね? 痛っ! 殴ることないじゃん!」
「ごめん。つい、拳が出たわ」
「酷くない!? てか、殴るってことはこれ、春名じゃん!」
颯音に問い詰められて俺は溜息を吐いた。
「そうだよ。俺だよ」
「さっきの台詞、特大ブーメランじゃん。面白過ぎる」
「颯音、口を閉じないとお前の母親に色々とチクるぞー」
「母親を持ち出してくるのはズルいって!」
「うっせぇ!」
「あんま暴れんなよ。騒がしい奴らだ……」
そんなくだらない会話をしていたらいつの間にか車は海都の屋敷に着いた。
海都の後を付いて行き、屋敷の中を進むと大量の服がある部屋に案内された。そこにはメイド服姿の人が数十名並んでいた。
「この二人に合う服を見繕ってくれ」
「「畏まりました」」
俺と颯音は別々の部屋で何十着も洋服を試着した。俺は白いワイシャツに紺色のスーツ、颯音は白ワイシャツに黒スーツに決まった。
ようやく洋服が決まり髪型もセットされ、全てが終わり俺と颯音は海都が待っている部屋に案内された。
「おお、よく似合ってんじゃん」
俺と颯音の姿を見て海都は褒め上げてくる。
「なんかすっげぇ緊張してきたんだけど」
「俺も俺も」
「別に緊張することはないさ。それじゃ会場に移動するぞ」
「海都の家でやるんじゃないの?」
「ここじゃない。見てからのお楽しみ」
荷物を海都の家に置いてから車に乗り、パーティーが開かれる会場に向かった。
一時間ぐらい車は走り、ようやく目的地に到着した。俺と颯音は揃って目の前の高級ホテルに目を見開いた。
「春名、颯音。さっきも言ったけど俺と雫恩は挨拶回りがあるから序盤は付いてやれない。一応、近くに母もいるから大丈夫だと思うけど、何か話しかけられても適当に流してくれ」
「わかった」
車から降りた俺たちは赤い絨毯を歩き、エレベーターに乗り、最上階のパーティー会場に向かった。




