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第370話

 上空まで逃げて来た俺は地上にいる半魚人を確認。上を見上げているけど追っては来なさそうだな。

 安堵した俺はアインとツヴァイを呼び出して二人を乗せた。


「ニア、共鳴を」


『? もう安全なのにするの?』


「拠点に帰るまでは安全じゃねーよ。念の為にな」


『わかった』


 ニアと共鳴をして二人に黒蝶の翅を付与した。


「綺麗な翅……ハルナ、この翅は?」


「ニアの能力。飛行能力と、俺とウィルに転移が出来る能力があるから、万が一、空中に放り出されたら使って」


「うん」


 ルラーシャは軽く翅を動かした。


『ハルナ、下の様子が変よ』 


 ヒガネに言われて下を見ると、半魚人がどんどん体を溶かし海に流れ始め、汚れた海面からエイみたいなモンスターが飛んでくる。


「なんでもありかよ……! ウシャスラ、行くぞ」


『仰せのままに』


「【共鳴技・拡散する刃】」


 ウシャスラと共鳴をして大鎌を手に持ち、思いっきり振り回し、黒い刃の斬撃を四方八方に飛ばす。飛んでくるモンスターに刃が当たり、そこからどんどん拡散されていき、モンスターを減らしていく。


「今のうちに二人を運んで――っ! 嘘だろっ!?」


 汚れた海面から巨大な触手がいくつも出現した。そして、濃霧も発生して海が霧に飲まれて行く。


「フィーアとフュンとゼクス。共鳴」


『『『お任せを!』』』


 三体と共鳴をして六機の小型甲虫が腰の周り装着され、六機全てを二人の援護に向かわせた。


「コガネ、共鳴をするぞ」


『そろそろ手が……ていうか翅か。足りなくなってきたね。誰をスキャンすればいい?』


「クロガネを」


『……私? ふーん、まぁいいけど』


 コガネは正方形のキューブになり、球体と一体化しているクロガネをスキャンをする。すると、十個の小型ドリルが鋭いワイヤーで繋がれたグローブに装着する。


「エンチャント……ゲイル」


 小型ドリルに風を纏わせ操り、触手を斬り刻んで行く。


「ふぉふぉ。様子を見に来てみたら面白いことになっていますね~」


 月を背景に突然現れたそいつは、青い鱗の肌に蝙蝠のような羽、腰辺りから尻尾が生えていた。


「初めまして。私はこの世界の支配者の忠実なる僕の一人、アルファと申します。以後、お見知り置き――」


「【共鳴技・トリニティドラゴン】!!」


 敵が挨拶をしている間に俺はディルと共鳴して最大火力の攻撃を放った。


「最後まで話を聞くのがマナーだろうが! この低俗が! ぶち殺すぞ!」


 煙が晴れた瞬間、そいつは血管が浮き上がるほどに激怒していた。

 多少は体力は減っているが殆ど効いてない。硬過ぎだろ!


「隙だらけで明らかに敵と分かっているんだから攻撃しない方が変だろう?」


「低俗風情が!」


 激怒した瞬間、体からどす黒いオーラを放ち、そこら中にいた触手が全て消え失せ、海面が盛り上がり巨大なドロドロとした巨人が数体現れた。

 不完全体の怪物……前に撃退したやつか。あの時はオピオさんが助けに来てくれて、その時にオピオさんの力の一部をアオガネとリュウオウに受継がせたっけな。


「さぁ、絶望をしろ!」


 ドロドロとした巨人の体からいくつも触手が生えて迫ってくる。


「また触手の攻撃かよ! 芸がないなっ!」


 空中で体を捩り、攻撃を躱して赤い翅で燃やし尽くす。


「……聖なる加護の炎か……気に食わないが、目的を優先しよう」


 俺を狙っていた攻撃が後ろに居る二人の方に向かった。


「儂の友人に手を出すな!」


 上空から真っ赤に燃え上がる炎が放たれて、巨人と汚れた海面を燃やしていく。上空を見上げるとドラゴンの翼を広げているオピオさんの姿があった。


「おお! これはこれは! この様な場所で出会えるとは光栄に存じます……負け犬様」


 敵は不敵な笑みを浮かべてオピオさんを挑発する。


「……この状況で儂を挑発する余裕があるとは呆れたのう……」


 そう言いながらオピオさんの周りに炎の槍がいくつも生成された。


「おお、怖い怖い。これは退散せねば」


「逃がすものか……!」


 炎の槍が真っ直ぐ敵に飛翔するが、新たに生まれた巨人に吸われ大爆発が起きた。

 爆発が収まると敵の姿は何処にもなかった。


「間に合ってよかった……怪我が無くて何よりじゃ」


「助かりましたオピオさん。あいつはオピオさんの知り合いだったり……?」


「うぅ……お主たちを巻き込みたくなかったが仕方ないか。今からお主たちの拠点に立ち寄ってもよいかのう?」


「はい、大丈夫です」


「そこで話をしよう。二人も疲れ切っているようだし、急いで向かうとしよう」


 オピオさんの体がみるみるうちに大きくなり青いドラゴンの姿になって行く。


「すっご……これがオピオさんのドラゴンの姿?」


「まぁそんなもんじゃ。さぁ背に乗りたまえ」


 ウィルとルラーシャを前に乗せて、俺は後ろに座った。


「大丈夫か二人共? もうすぐで拠点に帰るから少しだけ辛抱してくれ」


「うん……少し寝ててもいい?」


「おう。ウィルも少し寝ろ」


「そう、します……」


 二人は相当疲れたのか、目を閉じると直ぐに寝息が聞こえてくる。オピオさんは二人を起こさないようにか音を立てないように空を飛び、拠点に連れて行ってくれた。



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