第369話
夜の海原を船は進み、三十分経ったぐらいに島が見え、ヒガネを呼び出して共鳴をした。
ゴーグルを付けて島全を見通す。モンスターも居るし、ウィルより少し高いけどサポートすれば行けるかな。
操縦室に向かい船を止め、デッキに居る二人の所に向かう。
「今から目の前の島に降りる。ウィルより少しだけレベルは上だけど油断しないように」
「はい。ミカヅキ、頑張ろうな」
ウィルの隣でぷかぷかと浮いていうる海月のモンスターが触手を動かして返事をしている。
「で、ルラーシャにはこの短剣を渡しておく」
短剣を受け取ったルラーシャは俺を見て首を傾げる。
「瀕死にしたモンスターを動けない状態で連れてくるから、ルラーシャにはそいつに止めを刺してくれ」
「どうして?」
「そうすることでルラーシャにも経験値が入って割かし安全にレベル上げが出来るんだ。出来るか?」
「やってみる……」
俺はルラーシャの頭を撫でた。
「そんじゃ行きますか。前衛はウィルで、その後ろに俺とルラーシャって感じで進むぞ」
ウィルとルラーシャは力強く頷いた。
整備されてない道を進んで行くと、モンスターの反応が現れた。
「ウィル、前方にモンスター一体の反応」
「はい! ミカヅキ、【ショックボルト】」
ウィルにまっしぐらに突っ込んで行く狼のモンスターはミカヅキが放つ電気で動けなくさせてからウィルが止めを刺した。
「まだまだモンスターが来るぞ。油断するなよ」
「はい!」
次々と来るモンスターに俺はルラーシャを守りながらウィルのサポートをして行く。
「ルラーシャ、あと一撃で倒せるから止めを」
「う、うん……!」
コガネの糸で拘束した瀕死のモンスターをルラーシャの前に運ぶ。ルラーシャは震える手で握り占めた短剣をモンスターに突き刺して倒した。
しばらく繰り返してルラーシャの顔に疲れが見え始めて、俺のスキル【ラウンドフォース】を使い安全を確保してから休憩をした。
「大丈夫?」
「うん、まだ平気」
ウィルはルラーシャに水筒を渡した。
二人の様子を見ながらステータスを確認。ウィルは二つ上がって40。ルラーシャは1から15まで上がったな。パワーレベリングだけど、ルラーシャを強くするためにはこの方法が手っ取り早い。
「ルラーシャはなんかスキルを覚えたのか?」
「えっと、見てて」
立ち上がったルラーシャは手を胸に置いて、目を瞑り歌い出す。言葉は分からないけど聞いてて心地よい歌声に俺は魅入られていた。
「ハルナさん、体力が回復してます」
小声で話しかけてくるウィルに言われて自身のステータスを確認すると、持続回復のバフが掛かっていた。
「どうだった?」
歌え終わったルラーシャが首を傾げて聞いてくる。
「綺麗な歌声だったよ。持続回復が効果であってる?」
「うん。【癒しのアリア】ってスキルなんだ。これの他に【舞踏のヴェルディ】と【宝石のマドンナ】の三つを覚えたよ」
「へぇー凄いじゃん。今度、拠点で聞かせてくれよ」
「えへへ。楽しみにしてて」
「大分休めたし、再開するぞ」
モンスターが居るところに向かい、同じこと繰り返してルラーシャのレベルを上げて行く。
「よし、今日はこれぐらいで終わりにしよ」
「ハァ……ハァ……はい……」
肩で息をしているウィルにルラーシャは寄り添い肩を貸した。
「よし、ゆっくり帰るぞ」
来た道を戻っていると変な視線を感じてヒガネに尋ねた。
「ヒガネ、なんか変な視線を感じるんだけど」
『……姿を消すスキルを使っているみたい。条件を絞って見てみて』
「姿を消す? わかった、やってみる」
俺は条件を姿を消せるスキルを思いつく限り思い浮かべ見渡す。すると、姿を消しているモンスターの姿が視界に映る。
「囲まれているな……ウィル、ルラーシャ。俺から離れるな」
察してウィルは剣を構える。
俺は糸を周囲に張り巡らせて境界線を作る。
「隠れているのは分かってる。それ以上来るようなら容赦はしない」
怒りが籠った声で聞こえるように放った。すると、木々の隙間から頭部が魚で体が人間の半魚人が姿を現した。
「生贄を……」
「生贄を!」
「生贄を……!!」
半魚人は生贄という言葉を壊れたように何度も何度も繰り返した。
数も多いし、二人を守りながらはちょっとばかりキツイか。
「二人共、俺に掴まれ」
二人は俺の体に抱きつき、しっかり掴まったのを確認してから張り巡らせた糸を引き、木々を薙ぎ倒し、砂煙を起こす。
「口を開けるなよ! アカガネ!」
『任せて!』
アカガネと共鳴をして赤い翅を展開して、一気に上昇して上空に逃げることにした。




