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第365話

「蒼さん、お先に失礼します」


「春名君、お疲れ様。気を付けて帰るんだよ」


 バイト先の店長の蒼さんに挨拶してから店を後にする。特に寄り道することなく夜の九時前には帰宅した。


「ただいま」


 玄関には兄ちゃんの靴はあるけどリビングの明かりは消えていた。

 部屋着に着替えてリビングに行くと、兄ちゃんがソファーで寝てた。


「自分の部屋で寝ればいいのに……兄ちゃん、ここで寝ていると風邪を引くよ」


 俺は兄ちゃんの肩を揺らして起こすことにした。


「ん……春名か。おかえり」


 兄ちゃんは欠伸をしてから体を起こした。


「夕飯まだなら冷蔵庫にあるから温めて食べろよ」


「うん、わかった」


 兄ちゃんが部屋に入っていくのを見届けてから、ラップされている料理を温めて遅めの夕飯にし、食器を洗ってから部屋に戻りログインをした。

 エスカルスさん家の前には颯音とウィル、ルラーシャとエスカルスさんの四人が揃っていた。因みにモレルさんとルーシャさん、海都と雫恩は用事で来れない。


『エスカルスさん、色々とお世話になりました』


『これぐらいお安い御用だ。またこの国に訪れた際は尋ねてくれ。今度はゆっくりとこの国を案内しよう』


『その時はお願いします』


 エスカルスさんと一緒に門の外まで向かった。


『それじゃ俺たちはこれで』


『母なる海の加護が有らん事を』


 俺はアオガネを呼び出して三人を背に乗せてから最後に乗った。


『アオガネ、行ってくれ』


『飛ばすか?』


『飛ばしてもいいけど、一旦海面付近まで行ってくれ』


『任せろ!』


 モレルさんが開けた大穴を通り、アオガネは猛スピードで海面に向かって進んで行く。

 アオガネは海面から頭を出して安全を確認してから浮上してくれた。


「夜の海怖っ。春名、早く船を出して」


「わかってる」


 インベントリから船を取り出してから皆で乗り込んだ。

 颯音が操縦室に向かい、船はゆっくりと動き出す。その間に、トオルさんに連絡しようと思ったけど不在だった。【黒百】のクランリーダーであるディオガさんに渋々連絡をすると、もうすぐで攻略完了とのことだった。近くを通っても問題ないと言われ、颯音に伝えた。


「颯音、もうすぐで悪魔の島が攻略が完了するから通って良いって」


『了解。じゃあ飛ばすぜ』


 スピーカーから颯音の声が途切れると船のスピードが更に上がった。

 しばらくすると、大量の船が停泊している場所を横切った。すると、スピーカーから颯音の声が聞こえてくる。


『春名、船が沢山ある所が悪魔の島が出現したところなんだけど、島が無くなっている完了したみたいだね』


「これで何個の島が攻略されたんだ?」


『攻略サイトで確認したら残り一個だって。もうすぐでこのエリアのボスモンスターが現れるな』


「まぁまだ先でしょ。知らないけど」


 雲一つない満点の星空の下、船は順調に進み、トラブルも何も起きなく無事に夜の十二時前に拠点に到着した。

 ウィルとルラーシャが家に入っていく中、俺は外で夜空を眺めていると颯音が隣にくる。


「ルラーシャの件もこれで終わりだし、明日から何しようかな……春名はなんか予定決まってる?」


「雪原のボスモンスターが残した言葉を手掛かりに神の名を冠するイベントを探す予定」


「あー去り際になんか言ってたな。春名がどんどんチートスキルを覚えていくな。俺も探してみようかな」


「そう言えばトオルさんとの約束は?」


「今日連絡しようとしたけどいないかったからさ。まだいつの日にするか決めてない」


「そうか。颯音なら勝てるっしょ。じゃあ俺は寝るよ」


「おう。おやすみ」


 ログアウトしてからトイレに行こうと廊下に出ると、風呂上りの兄ちゃんと目が合った。


「まだ寝ていなかったのか」


「これから寝るところ。兄ちゃん、明日は仕事?」


「仕事だけど、夕方ぐらいには帰る」


「夕方ぐらい。じゃあ夕飯の時にルラーシャの事を話すよ。色々あったんだ」


「そうか。楽しみにしてる」


 トイレを済ましてから部屋に戻り、ベッドで横になっていると瞼が重くなり夢の世界に旅だった。



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