第364話
『ハルナ君! ハヤト君! カイト君!』
モレルさんたちの所に戻るとモレルさんとルーシャさん、雫恩の三人が手を振って待ってくれていた。
『おかえり。ウィルとルラーシャ、無事?』
ルーシャさんが二人の様子を確認した。
『怪我がなさそうでよか――』
『ルーシャ……!』
ルラーシャはルーシャさんの顔を見るなり抱きつき泣き出した。
『よしよし、怖かったね』
ルーシャさんは優しく頭を撫でてた。
『エスカルスさん、どこか休める場所を貸してもらってもいいですか?』
『ああ、構わないさ。家に案内しよう』
再び街に戻った俺たちはエスカルスさんの家に向かい、ベッドに寝かせると疲れていたのか直ぐに眠ってしまった。
『ハルナ殿。すまないが此度の件を陛下に報告しないといけなくて、一緒に王城に来て欲しいんだが、可能か?』
『王城? これから?』
メニュー画面の時間を見るともうすぐで夜の十時になるところだった。
そろそろ落ちないといけないけど、ルラーシャのこともあるし、もう少しだけやろう。
『わかった。俺一人だけ?』
『可能であれば、彼にも来て欲しい』
そう言ったエスカルスさんは海都を指差す。
『俺も? 別にいいけど……』
『俺は俺は?』
『すまない。今回はこの二人のみにさせてくれ。後日、改めて皆を王城に案内しよう』
『……まぁそれならいいけど。じゃあ俺たちはここで待ってるよ』
『おう』
エスカルスさんの家を出た俺たちはしばらく歩き街のど真ん中にある巨大な建物に辿り着いた。
門が開き、エスカルスさんの後に続いて門を潜り、一室に案内されしばらくすると、エスカルスさんと一緒に王冠を被った厳つい男性が部屋にやってきて、慌てて立ち上がろうとしたら制された。
『そのままで良い』
そう言って俺たちの向かい側の席に座った。
『妾はこの国を治めるメイフォード・フォン・リユニオンだ』
『えっと、ハルナです。隣に居るのが仲間のカイトです』
海都は軽く会釈をした。
『貴殿らがことはエスカルスから聞いておる』
陛下はエスカルスさん以外の兵を下げらせた。
『先ずは、深淵の者を退けてくれたことを感謝する。貴殿らのおかげでこちらの死者は出ずに済んだ』
『それは良かったです』
『報酬としてこのペンダントを受け取ってくれ』
渡されたのは人数分の真珠の装飾が施されたペンダントだ。
『このペンダントを使えば、どのエリアからでも一瞬でこの国に転移が出来るアイテムだ』
『どのエリアからも……? そんなレアなアイテムを貰ってもいいんですか?』
『勿論だ。貴殿らの貢献は十分過ぎる故に、このアイテムが妥当と判断した。それにこのペンダントがあれば同胞の少女もいつでも帰国が出来る』
『ご配慮くださりありがとうございます。大事に使わせて頂きます』
俺はペンダントの一個を海都に渡して、残りはインベントリにしまった。
『陛下、大穴の件も』
大穴と言葉が聞こえて体がビクッとなった。
『おお、そうだったな。洞窟を無くす計画があったのだが、貴殿らのおかげでその作業が大幅に短縮がされた。これで人族の街まで直通で行ける道が整備され、道の整備が出来次第、人族と貿易を始める予定だ。誠に感謝するぞ』
『そ、そうですか……よかった……』
何もお咎めが無くて俺は胸を撫で下ろした。
陛下との話が終わり、王城を出る時にメッセージが来た。内容はルラーシャに事実を伝えたそうだ。家に戻ると目を冷やしているルラーシャの姿があった。
『おかえり二人共。 王様と話をしたんだろう?』
『ああ。ペンダントを貰ったから皆に渡すよ』
インベントリからペンダントを取り出して順番に全員に渡した。
『ハルナ君、このペンダントは何か効果があるの?』
『このペンダントにはこの国に一瞬で転移が出来るペンダントです』
モレルさんの質問に俺は答えた。
『どのエリアからでも転移が出来るかなりレアなアイテムだから大事に使ってくれ』
『ハルナ、私はいらない……』
そう言ってルラーシャはペンダントを返してくるが俺は受け取らなかった。
『このペンダントはルラーシャが持ってくれ』
『知っている人が居ないこの街に居たくない……ハルナたちと一緒にいる……ダメ?』
『ダメじゃないさ。ルラーシャが帰りたいと思うまではずっと一緒にいるさ』
『……うん』
ルラーシャは首に腕を回して小さく頷いた。
『春名、そろそろ時間ヤバくね?』
颯音に言われて時計を見ると夜の十一時を過ぎていた。
『俺たちだけで帰るなら大丈夫だけど、二人を連れて行くと考えると零時過ぎるな……それに、道中遭遇した悪魔の島もあるし……うーん、困ったな』
悪魔の島の事をトオルさんに連絡してみると、まだ攻略中のようだ。
『モレルさんとルーシャさんはまだ続けます?』
『私たちもそろそろ限界かな』
『了解です。エスカルスさん、今晩だけ二人を泊めることは出来ます?』
『二人を? 部屋は空いているから平気だが』
俺は二人に体を向ける。
『ウィル、ルラーシャ。本当に悪いんだけど、明日迎えに来るから今日だけこの街に泊まってほしい』
『僕は大丈夫ですけど……』
『ウィルが居るなら平気。早く迎えに来てね……』
『本当にごめんな! なるべく早く来るよ』
二人の頭を撫でてからログアウトして直ぐに眠りに就いた。




