第362話
煌々と輝く街のおかげで深海なのに周囲は明るく照らしていた。
入り口の巨大な門の前には槍を持った人魚が二人立っていた。
『何者だ!』
俺たちに気が付いた人魚が【念話】をしてきて泳いで向かってくる。
『人間だと……? こんな深海に……?』
『おい、後ろのモンスターを見てみろ……!』
『なんて巨大な……! でも、どこか神秘的な……』
人魚の一人が俺たちに視線を戻す。
『色々聞きたいが、お前たちは敵か?』
俺たちは両手を挙げて首を横に振った。
『……そう言えば人間は水中では喋れないんだったな』
目の前の人魚は俺の頭に手を置くと優しい光が体を包み込んだ。
『水中でも話せるようにした。試してみろ』
『あ、本当だ。ありがとうございます』
もう一人の人魚が皆に同じことをしてくれた。
『それで人間の者たちよ。この街に来た目的を話してもらえるかな』
『俺たちはこの子を送り届ける為に来たんです』
ルラーシャを見た途端、人魚の二人が目を見開いた。
『偶然、この子が捕まっている所を助けたんです。それで、色々あってこの場所を教えてもらえて、ようやくここに来れたんです』
『そうか。我らの同胞を送ってくださり感謝する。お礼がしたい。街に招待しよう』
『ルラーシャ、よかったな。これで――』
『違う!』
突然、ルラーシャが声を荒げた。
『ここは私が居た村じゃない! コルニア村じゃない!』
ルラーシャは洞窟の方に泳いで行ってしまった。
『海都、ウィルを連れてルラーシャを追い駆けてくれ』
『任せな。ウィル、行くぞ』
リュウオウの背に跨った海都はウィルを連れてルラーシャの後を追った。
『コルニア村……聞き覚えがあるな』
『本当ですか? どんなことでも良いんで教えてください』
『……わかった。ハンス。この者達を神殿に案内する。その間に、王に伝令を頼む』
『了解した』
『では、案内をしよう。私は騎士団所属、エスカルスだ』
『俺はハルナ、こいつがハヤトで、女性の三人が左からモレルさんとルーシャさん、そしてシオンです。で、さっき追い駆けていったのがカイトと獣人のウィルです』
『獣人とはまた珍しい組合せだな』
大きな門がゆっくりと開いてエスカルスが門を潜ると尾ひれが人間の足に変わった。
俺たちも続いて街に入った。ちなみに、アオガネは小さくなって俺のフードに隠れた。
『すっご……!』
整備された明るい青色で統一された道には光る石が埋められて明るく、色とりどりの石造りの高さがまばらな建物の景色が広がっていた。
『春名、すっげぇ視線を感じるんだけど』
後ろから颯音が小声で話しかけてくる。
『ここには人魚族しかいないんだから、人間が居たら気になって見ちゃうのは普通だろう。俺たちも街に人魚族が来たらまじまじ見ちゃうだろう? それと同じだよ』
『あー確かにそうか』
『ハルナ君! この店を見てみて!』
モレルさんが目をキラキラさせて指差したのは食べ物のお店のようだ。
モレルさんは店内に入って並んでいる料理を見渡していると、恰幅の良い女性の店員さんがモレルさんに話しかけてくる。
『おや、人間さんかい?』
『はい、さっき来たところなんです。どれも美味しそう……お勧めってありますか?』
『それなら出来立ての深海魚の餡かけはお勧めだよ』
『それじゃそれ……あ、お金……あの、お金ってこれで大丈夫ですか?』
モレルさんは金貨を見せた。
『ああ、問題ないよ』
『やった! それじゃ人数分お願いしまーす』
『あいよ』
鼻歌しながらモレルさんはお店を出てきた。モレルさんも揃ってエスカルスさんの後をついて行くと、少し古い建物に到着した。
『ここは我ら人魚族の歴史が刻まれている神殿だ。資料を持ってくるからくつろいでいてくれ』
そう言ってエスカルスさんは何処かに行ってしまった。
神殿の中を見て回って時間を潰していると、エスカルスさんが戻ってきた。
『待たせたな。この石板にコルニア村の事が刻まれている』
エスカルスさんは石板を見せてくれたが全く読めなった。皆の顔を見ると、首を横に振った。
『すいません、全然読めないので読んでもらえると助かります』
『了解した……読み上げるぞ。かつて、この国グランドリユニオンは小さな集落が集まって出来た村だったそうだ。ある日、モンスターの群れが街を襲い、壊滅の危機を迎える。だけど、一人の若者が立ち上がりモンスターを次々と薙ぎ倒していく。若者の戦う姿に奮い立たせ、仲間たちも武器を持ちモンスターと戦い始めてどうにか退けた。その若者を指導者として、名の無い村にその者の名、コルニアと村に名を付けた。と刻まれている』
エスカルスさんが読み終わってから俺は質問した。
『それって何年前の話なんですか?』
『五百年前の話だ』
『五百年!?』
エスカルスさんからの衝撃的な事実を聞いて、驚きの声を上げてしまい神殿内に響き渡ってしまった。




