第361話
海面まで下降してからインベントリにしまった船を海面に浮かべた。船内に入って皆でソファに体を沈めた。
顔を埋めながら颯音が呟く。
「めっちゃ疲れた……倒しても倒しても直ぐ次の来るし、ぬめぬめだしで戦い辛かった……春名、あの島はどうすんの?」
「うーん、放置はしないけど、俺たちで攻略はしないかな」
そう言いながらログインをしているトオルさんに悪魔の島の座標付きのメッセージを飛ばした。
「なにしてんの?」
「トオルさんに悪魔の島の座標を伝えたところ……うげっ……攻略してくれる代わりに終わったら俺と対戦したいって。マジか……」
「あ! ズルい! 俺もトオルさんと戦いたい!」
トオルさんに颯音が代わりに戦いたいと伝えると、「しゃーない。今回はハヤトとやるけど、今度はお前だからな」と返事が来た。
「トオルさんから戦おうって」
「マジで! やった! 今度は勝つ!」
トオルさんとの再戦が決まって燃えている颯音を無視して四人に視線を向けた。
「皆、怪我とかないか? あったら言ってくれ。直ぐに治すよ」
「俺たちは平気だ」
「ええ、あれぐらい問題ないわ」
「僕も……痛っ」
手を上げようとして苦痛の表情をするウィルに駆け寄って【治癒蜂兵】を召喚して怪我を治した。
「すみません……」
「気にすんな。……よし、怪我も治ったな。颯音、運転を頼む」
「おう、任せろ!」
鼻歌しながら颯音は操縦室に向かった。少しすると、船はゆっくり動き出した。
「やっほー」
「お待たせ皆って、なんか疲れてる?」
「色々あったんです……」
遅れて来た二人に悪魔の島の事を伝えた。
「悪魔の島か……全然情報を追っていないんだけど、今いくつまで攻略されているの?」
モレルさんの質問に答えようとしたけど、知らないことを思い出して海都を見る。
「俺も知らないからこっちを見るな。颯音なら知ってるんじゃないか? 俺たちよりかはやっているし」
「あー確かに。ちょっと聞いてみる」
メッセージを飛ばすと直ぐに返事が来てモレルさんに伝えた。
「六個までは知っているけどそれ以降は知らないそうです」
「六個目以降っってことは残り二つ……ボスイベントの時のように樹海エリアみたいにならないといいんだけど」
「だと良いんですけど」
悪魔の島が遭遇以降、特に問題なく船は進んで行く。
『皆、目的地に着いたよ』
スピーカーから颯音が目的地に到着した知らせを聞いてデッキに移動した。
「ルラーシャ、見覚えあるか?」
「地上はあまり来ないからわかんない」
「そうか。よし、じゃあ潜りますか。アオガネ」
巨大なアオガネを呼び出すと、海面から頭だけ出して近づけてくる。アオガネの下顎を撫でると嬉しいそうな表情をした。
「アオガネ、潜るの手伝ってくれ」
『う、うん……ま、任せて……飛ばす……?』
「そうだな。時間も無いし飛ばしてくれ」
『わ、わかった……』
先に俺がアオガネの背に移動してから、モレルさんとルーシャさん、颯音とウィルの順に移動する。ルラーシャは海に飛び込み、人魚の姿に戻る。
海都はリュウオウを呼び出して、背中に雫恩と一緒に乗った。
「ルラーシャ、アオガネからあまり離れないように」
「うん」
「行くぞ、アオガネ」
アオガネはゆっくりと海に沈んでいく。それと同時に、アオガネの周囲に水中でも呼吸が出来るエリアが展開された。
『飛ばすぜ! 付いてきな、リュウオウ!』
「グルル!」
アオガネとリュウオウは猛スピード深海に向かっていく。競争している二体を見ていると、後ろからルーシャさんに指で突かれた。
「ハルナ、大分深いところまで来てるけど、水圧平気?」
「アオガネの近くにいれば影響はないです。なんで、気軽に風景を楽しんでください。って言っても周りが暗くてなんも見えないですけど」
「そうね」
光が届かない深さまで来て、アオガネにスピードを緩めるように指示をする。
「アオガネ、スピードを緩めてくれ」
『まだリュウオウと競争がしたい!』
「ダメだ。緩めてくれ」
海都にリュウオウのスピードを緩めてくれと送ると、リュウオウがスピードを落としてくれた。
『……わかったよ』
渋々と言った感じだけどアオガネもスピードを落としてくれた。
目を凝らしてみると、不気味な光を放つモンスターたちが泳いでいた。
モンスターが攻撃してこない。中立モンスターではないはずなんだけど、アオガネとリュウオウの存在のおかげかな。
『ハルナ、こっち』
頭に直接、ルラーシャが語り掛けてくる。ルラーシャは【念話】のスキルを持っていたんだ。
「アオガネ、ルラーシャの後を追ってくれ」
先に行くルラーシャの後を追っていくと、船の残骸が沢山放置されている場所に着く。
『ここ、見覚えがある! こっちに私の村があるの!』
更に進むと巨大な洞窟が見えてきて、迷いなくルラーシャをが洞窟の中に入っていく。フュンのスキルを使い、暗い洞窟を照らして俺たちも続いた
『もうすぐだよ! もうすぐで私の村が――』
洞窟を抜けると深海なのに煌々と輝く街が目の前に広がっていた。




