第359話
学校が終わり、颯音と一緒に帰っていると隣で大欠伸をする颯音。
「はぁ~……眠っ……なんで久しぶりの授業は眠いんだろうなぁ~」
「お前がただ単に勉強が嫌いなだけだろ。先生に怒られてたのは面白かったけど」
「後ろの席なんだから起こしてくれても良かったのに……」
「一応起こしたけど、起きなかったお前が悪い」
「それ言われたら何も言い返せない。はぁ……次から気を付けよ。夜は昼休みに話してたルラーシャを送るんだろ? 俺と春名に海都……雫恩は確定として、ルーシャさんとモレルさんはこれそう?」
「さっき返事が来て、少し遅れるから先に行っててだって。じゃあ俺はこっちだから」
「おう。後でな」
颯音と別れて、少しだけ自転車の速度を上げて家にいつもよりも早めに帰宅した。
「ただいまー」
部屋に入り部屋着に着替えてからリビングに行くと兄ちゃんが夕飯の準備をしていた。
「お帰り。もう直ぐで終わるから座って待ってろ」
「運ぶの手伝うよ」
出来上がった料理をテーブルに並べていく。兄ちゃんも席に座り夕飯を食べ始めた。
「兄ちゃん、この後なんだけどさ。時間ある?」
「この後? うーん、無くはないけど、どうした?」
「この後、クランのメンバーでルラーシャを送り届ける予定なんだ。時間あったら兄ちゃんを誘おうと思って」
「結構時間が掛かる感じか?」
「うーん、かなり遠いから掛かるかも」
「明日の仕事のこともあるし、今回は遠慮するよ。気を付けて行くんだぞ」
「うん、わかった」
「それとわかっていると思うが遅くまでやるなよ?」
「は、はーい……気を付けまーす」
兄ちゃんとの夕飯を終わらせてゲームにログインをした。
拠点にはすでに颯音と海都、雫恩の三人の姿があった。
「ハルナ、いつでも行けるよ!」
「お、やる気満々だな。ウィルも行くんだろ?」
ルラーシャの隣にいるウィルに尋ねた。
「え、僕も付いて行ってもいいの?」
「ん? 当たり前だろ。準備してないなら早くしてきな」
「はい!」
ウィルは拠点に戻り、数分で支度を済ました。
「よっし、じゃあ行きますか」
「船で行きますの?」
「かなり遠いから」
浜辺に移動してから船に乗り込んで、颯音が操縦することになって船は動き出した。
船のデッキで風に当たっていると、近くのスピーカーから颯音の声が聞こえてきた。
『春名、目的地までリアル時間で三時間ぐらいだって』
「三時間……」
今は夜の六時ぐらいだ。目的地に着くのは九時ぐらいになるのか。
スピーカーの近くにあるボタンを押して返事をした。
「了解した。他のメンバーにも伝えておくよ」
『わかった』
デッキを離れて船内に行くと四人はくつろいでいて、俺は空いている場所に座った。
「目的地まで三時間ぐらい掛かるらしい。時間大丈夫そ?」
「三時間なら平気だ」
「私も大丈夫よ」
「了解。外にいるからなんかあったら呼んでくれ」
「私も行く!」
先に行くルラーシャの後を追ってデッキに戻る。後ろウィルも付いてくる。
「良い風……ウィルもこっちに来て」
「落ちないでよ」
「落ちても平気ですぅ。私人魚なの忘れてる?」
「そうだったね、忘れてた。あはは……」
「……二人ってやっぱり付き合ってるの? あ」
微笑ましい二人の会話を聞いていてつい口が滑ってしまった。
二人はお互いに顔を見合わせてから頬を赤らめる。
「……はい。ルラーシャと付き合ってます」
「うん」
俺は二人の首に腕を回した。
「そっか。そうとなればウィルをいつでもルラーシャの所に行けるようにしないとだな」
「そんなこと出来るの?」
「分からないけど色々と調べてみるよ。もし方法が無かったとしてもウィルを連れていくだけだしな。まぁ毎日は勘弁してほしいけど」
「ううん。ありがとうハルナ。私も一緒に探すよ!」
「僕も手伝います!」
「お二人さんは頼もしいな」
そんな他愛もない話をしながらも船はどんどん進んで行く。しばらくすると前方に霧が発生して、船は減速し始め、手前で停止をした。




